AI をチームスポーツとして捉えるべき理由

データサイエンティストに過大な負担をかけるのではなく、各分野の専門知識を活かすことで AI を活用したソリューションをビジネス全体に拡張する方法について学びましょう。

編集者注: この記事は、以前 Forbes (英語) で公開された記事の再掲載です。

AI をチームスポーツとして捉えるとはどういうことでしょうか? AI プロジェクトは、大々的な宣伝の段階を過ぎて、実際に効果を発揮する段階に移っています。その主な理由としては、これまで欠けていたビジネスコンテキストを提供するために、適切な役割を担う人々が参加していることが挙げられます。ここで鍵となるのは、各分野の専門知識です。機械は人間のように深く文脈を理解することができないため、提示されたインサイトや推奨事項に基づいてどのような行動を取るべきかを判断するために、人間はビジネスとデータについて十分に理解している必要があります。

AI の拡張に関しては多くの場合、人材面の問題、特にデータサイエンティストの不足という問題があると考えられています。しかし、ビジネス上の問題がどれもデータサイエンスに関する問題であるとは限りません。少なくとも、あらゆるビジネス上の課題の解決をデータサイエンスチームに丸投げすべきではありません。適切なアプローチをとることで、従来のデータサイエンスサイクルにつきものの課題を生じさせることなく、AI のメリットが得られるようになります。

AI ソリューションを導入して拡張するためには、組織の考え方を変えて、AI をチームスポーツとして捉える必要があります。AI プロジェクトの中には、成功に必要な人材、ツール、要件が異なるものがあります。こうした案件を認識する方法を知ることは、AI プロジェクトの成功に向けてより適切なアプローチをとり、AI ユーザーの層を厚くし、従業員全体の意思決定にスピードとパワーを与えるのに役立ちます。その理由と方法について探っていきましょう。

AI による高度な分析を誰もが利用できるようにしている組織

AI を利用してビジネス上の問題を解決することは、これまでは主にデータサイエンティストの権限に委ねられてきました。多くの場合、データサイエンスチームは、組織の最大の案件や最も複雑な課題にのみ投入されます。多くの組織は、不正行為の検出やなりすましなど、特定の使用事例にデータサイエンスを適用し、深い技術的専門知識と細かく調整されたモデルによって、大きな成果を上げることに成功しています。

しかし、データサイエンスチームを通じて AI ソリューションを拡張することは、多くの理由から組織にとって困難な課題となっています。人材の募集と維持は非常にコストがかかり、競争の激しい市場ではままならない場合があるからです。従来のデータサイエンスプロジェクトでは、ビジネスが価値を見出すまでに、開発と導入に長い時間がかかることが多くなっています。非常に経験豊富で安定したデータサイエンスチームでも、解決を依頼された問題の細かい点を把握するのに必要なデータやコンテキストが不足していれば、結果を出せない可能性があります。

ガートナーによるレポート『データサイエンスと機械学習 (DSML) の状況』(英語) の 2021 年版には、「顧客の要求は変化しつつあり、技術的な習熟度の低いオーディエンスが DSML をより簡単に利用したいと望む一方で、エキスパートは生産性の向上を求め、企業は投資に対する価値実現までの時間の短縮を求めるようになっています」と記載されています。AI による分析のスピードや緻密さからメリットを得られるビジネス上の問題は多いかもしれませんが、従来のデータサイエンスのアプローチは、必ずしもすばやく価値を見出すのに最適な対応策ではありません。実際、ガートナーの同レポートでは、「2025 年までに、データサイエンティストの不足によって組織におけるデータサイエンスと機械学習の導入が妨げられることはなくなるでしょう」と予測されています。

AI をビジネス全体に拡大するには各分野の専門知識が不可欠

AI はすでに、データサイエンスのバックグラウンドを持たないユーザーが高度な分析機能を使用するのに役立っています。機械は最適な予測モデルやアルゴリズムを選択でき、基盤となるモデルは公開可能です。それらのモデルを調整し、あらゆることをユーザーのニーズに一致させることが可能です。

これらの機能によって、アナリストや高いスキルを備えたビジネス分野のエキスパートは、独自の AI アプリケーションを設計して活用することができます。こうしたユーザーは、データにより近い存在であるため、多くのデータサイエンティストよりも優位に立つことができます。各分野の専門知識を持つユーザーがこの力を持つことで、従来のデータサイエンスサイクルに伴う長い開発時間やリソースへの負荷、隠れたコストを取り除けるようになります。また、AI による予測や提案が有用であるかどうかを判断するのは、各分野の専門知識を持つユーザーであるべきです。

モデル構築のプロセスをさらに反復して、修正と再導入を繰り返すことで、ビジネスコンテキストを持つユーザーは AI からさらにすばやく価値を得ることができます。さらに、新しいモデルを何千ものユーザーに展開するための期間を、数週間から数か月の単位から数日から数週間の単位に短縮することも可能です。これは、チームの抱える独自の課題が、データサイエンスチームにとって優先順位が高いものではなくても、AI による分析のスピードと緻密さからメリットを得られる場合は、こうしたソリューションは特に効果的です。

しかし、これらのソリューションはアナリストとデータサイエンティストの間のスキルギャップを解消するのに役立ちますが、後者の代わりにはならないということに注意することが重要です。データサイエンティストは、AI を活用したソリューションで使用するデータを検証するうえで、ビジネスエキスパートにとって今後も重要なパートナーであることに変わりはありません。こうしたコラボレーションに加えて、教育やデータスキルも、このようなツールを大規模かつ効果的に利用できるようにするうえで重要になります。

データリテラシーによってさらに多くの人々が AI を活用

AI を成功させるための準備にあたっては、基盤となるデータ戦略が大きな役割を果たしますが、ビジネス全体で AI ソリューションをより多くの人々に提供するためには、基本的なデータリテラシーが必要となります。ビジネス上の問題に適用するのに適したデータを把握し、データや AI による推奨結果を解釈する方法を理解することで、人々は AI に対する信頼感を高め、意思決定の一部として導入できるようになります。組織内でデータの言語を共有することも、エキスパートとの効果的なコラボレーションを実現できる可能性を広げます。

McKinsey 社の AI に関する最新のグローバル調査 (英語) によると、好業績企業の 34% が「専用のトレーニングセンターで、非技術者の AI スキルを実習形式のハンズオントレーニングを通じて育成している」のに対し、調査対象のそれ以外の組織ではわずか 14% にとどまっています。さらに、好業績企業の 39% が「AI ユーザーと組織のデータサイエンスチームの間に専用のコミュニケーションチャネルとタッチポイントを設けている」のに対し、それ以外の組織ではわずか 20% にとどまっています。

データリテラシーを構築するには、教育やトレーニング、メンタープログラム、コミュニティ形成のためのデータコンテストなど、さまざまなアプローチをとることができます。データへのアクセスや共有の標準化だけでなく、データの活用による成功、学習、意思決定を奨励および促進する方法についても考えてみましょう。

Tableau Research ディレクターの Vidya Setlur は次のように述べています。「データリテラシーや、ビジュアライゼーションとデータサイエンスに関する教育はもっと広く普及させて、早期に指導を始めなければなりません。データの使用への依存には、社会的および組織的な責任のようなものが伴います。AI の洗練は今後も続くため、ユーザーはデータを理解し、解釈し、最大限活用できるように十分に備えるべきです。そして、Tableau はこうした状況の数歩先を行く必要があります」

組織のデータカルチャーを継続的に構築することで、ビジネス全体でスキルを高めて、新たなソリューションを促進するための効果的な機会を創出することができます。デジタルトランスフォーメーションの加速に伴い、近年、多くの組織がすでにデータと分析への投資を増加させています。データをチームスポーツと考えるのは無理なことではなく、そうした考え方を AI に拡張するための手段も整っています。

詳細情報

 

______________________________________________________________________________________________
1 Gartner、「The State of Data Science and Machine Learning」。Pieter den Hamer、Carlie Idoine、Shubhangi Vashisth、Farhan Choudhary、Afraz Jaffri、Peter Krensky。2021 年 12 月 10 日。GARTNER は、Gartner, Inc. および/またはその関連会社の米国および世界各国での登録商標およびサービスマークであり、許可を得て使用されています。All rights reserved (禁無断転載、不許複製)。