2025/06/30

Tableau Pulse を活用して、Tableau Cloud で AI による複数指標の探索を実現

Tableau Pulse の強化された質問機能により、ビジネスリーダーは Tableau+ バンドルで提供されるプレミアム AI 機能を活用して、複数の指標にまたがる複雑な質問を行い、それに対する文脈に則した AI 生成のインサイトを取得することができるようになりました。

今日のめまぐるしく変化するビジネス環境においては、ビジネスリーダーはデータから即座に実用的なインサイトを得る必要があります。リーダーは複数のレポートやダッシュボードを切り替えて見ていますが、重要な傾向や異常をすばやく特定するのに苦労することがよくあります。課題は明らかです。組織は、どうすればデータの可能性を最大限に引き出し、情報に基づいた意思決定を迅速に行うことができるのでしょうか?

Tableau なら、AI を活用した指標インサイトは直感的で信頼性が高く、実用的であるため、リーダーは単に数字を追うだけでなく、その意味を深く理解することができます。そして、Tableau のお客様は知性に優れ、AI に精通しており、インサイトの透明性と信頼性を維持しながら、常に一歩先を行きたいと考えています。だからこそ、私たちは Tableau Pulse に、説明可能性を中心に据えた強化された質問機能を搭載しました。すべての回答を検証するための明確な引用、裏付けとなるインサイト、そしてビジュアライゼーション機能を備えています。同時に、ユーザーが概念を言い換えたり、明確にしたり、自然な形で探求したりできるように、柔軟性の高い LLM による対話機能も構築しました。

これらの強化された質問機能により、組織がデータから意味を見出し価値を引き出す方法が再定義され、ビジネスリーダーはより明確で確信に満ちた行動を取ることが可能になります。


Tableau Pulse の強化された質問機能とは

Tableau Pulse の強化された質問機能は、Tableau+ バンドルを通じて利用できるプレミアム AI 機能の 1 つです。このバンドルは、AI を搭載したセルフサービス型の分析を全社的に導入できるようデザインされた包括的なパッケージで、エージェンティック分析の導入を簡素化します。

重要な数値を追跡し、隠れたパターンを発見する必要があるビジネスリーダー向けにデザインされた、強化された質問機能は、単一の指標分析にとどまらず、最先端の大規模言語モデル (LLM) を活用し、複数の指標にわたるより深いインサイトと関連性を提供します。AI を活用した指標インサイトを、直感的で信頼性が高く、実用的なものにすることで、リーダーがデータに対する理解を深められるようにデザインされています。説明可能性を重視して構築されているため、すべての回答は結果を検証するための明確な引用、裏付けとなるインサイト、そしてビジュアライゼーションとともに提供されます。対話機能は柔軟性が高く、ユーザーは概念を言い換えたり、明確にしたり、自然な形で探求したりすることができます。

強化された質問機能の仕組み

強化された質問機能の仕組みを理解するには、以下の主要なコンポーネントから考えてみてください。

  • 指標のグループ化: フォローしている指標を、データソース、定義、または期間ごとにグループ化して、ホームページ上で整理して表示します。強化された質問機能は、これらのグループ化された指標にまたがるインサイトを分析します。
  • フック: 各指標グループには「フック」があります。これは、強化された質問機能によって生成される、探索を促すためのテンプレート化された質問です。これらのフックは、ユーザーを興味深いインサイトや変化の検出へと導きます。
  • インサイトブリーフィング: クエリが実行されると、強化された質問機能は指標を分析し、統計的なインサイトを抽出します。これらはインサイトブリーフィングとして、経営陣向けの要約スタイルでまとめられ、引用として元の指標への参照も付けられます。
  • 自然言語による質問機能: ユーザーは、「西部地域の売上アップの原動力は何か?」のように、自然言語で質問できます。強化された質問機能はクエリを解釈し、実用的なインサイトを返します。
  • フォローアップ質問: LLM は、クエリのコンテキストに基づいてフォローアップ質問を生成し、探索を継続できるようにします。
  • ディメンションと期間の絞り込み: ユーザーは、ディメンション、時間の粒度、そして「先週」や「前四半期」といった自然言語によるフィルターに基づいてクエリを絞り込むことができます。

強化された質問機能が優れている理由

2024 年にリリースされた Tableau Pulse の質問機能は、指標インサイトのための最初の AI 機能です。これは、ガイド付きの質問とアドホックな自然言語クエリを組み合わせることで、ユーザーが 1 つの指標ごとにインサイトを探索できるように設計されました。これは、特定の指標で利用可能な統計的インサイトに沿った、インテリジェントに整備され事前定義された質問またはガイド付きの質問を提供することで機能します。

ユーザーが自由形式のアドホックな質問をした場合でも、Tableau Pulse の質問機能はそれを関連性が最も高いガイド付きの質問にマッピングし、AI が生成した制約のない解釈ではなく、既存の検証済みのインサイトに基づいた回答を提供するようになっていました。

強化された質問機能は、LLM を統合することでこのアプローチを大幅に拡張し、真に動的な対話機能を実現しました。もはや、単一の指標に関する固定されたガイド付き質問のセットにアドホックなクエリを一致させるのではありません。強化された質問機能では、ユーザーが複数の指標にまたがる複雑な質問をすることが可能になり、複数の指標のパターンを結び付ける、コンテキストに則した AI 生成のインサイトが得られるようになりました。

前四半期の在庫に通常とは異なる変化があったかどうかを知りたいといったことはよくあります。LLM は、指標に関する雑多な統計情報をただ引き出してくるだけではありません。人間が理解しやすい明確な説明を統合し、すぐには気づかない傾向や異常を浮き彫りにします。単に質問に答えるだけでなく、見つけにくいインサイトを発見することにも重点が置かれています。マーケティング費用の急激な減少や季節的な落ち込みなど、根底にあるパターンを特定し、それらの変化がなぜ起こったのかを解明するのに役立つコンテキストを提供します。その結果、リーダーは技術的な専門知識がなくても根本原因分析を容易に実行し、実用的なインサイトを評価できるようになります。

では、これはどのような意味を持つのでしょうか? Tableau Pulse には、シームレスなデータ探索を可能にする 2 つの強力な AI 主導型テクノロジーが搭載されています。Tableau Pulse の質問機能は、1 つの指標に対するガイド付きの統計的インサイトとアドホックな質問を照合することで、正確で構造化されたインサイトを提供します。強化された質問機能は視野を拡張し、最先端の LLM を使用して複数の指標を対話形式で探索し、主要な数値間の傾向や関連性を明らかにします。

強化された質問機能を最大限に活用する

Tableau Pulse は、有用で実用的なインサイトの発見方法を変革しますが、その可能性を最大限に引き出すには、ベストプラクティスに従うことが重要です。Tableau Pulse を最大限に活用する方法は次のとおりです。

データレディネス

すでに分析をが行われている環境では、データは AI に対応できる状態にある可能性が高いと考えられます。しかし、Tableau Pulse の強化された質問機能で AI 主導のインサイトを最大限に引き出すには、時系列指標、集計されたビジネス数値、製品カテゴリーや顧客セグメントなどの明確に定義されたディメンションなど、適切に構造化されたデータを使用してください。極めて詳細なログ、単発の静的なデータセット、構造化されていないデータは Pulse に適していないため、使用を避けてください。クリーンで構造化され、検証済みのデータ形式を維持することで、データの一貫性と正確性が確保されます。さらに、Einstein Trust Layer Masking (後述) を有効にすると、名前やメールアドレスなどの機密情報を自動的に保護しながら、明確なエンティティ識別子と一貫したフィールドラベルを使用することで、正確な結果を得ることができます。

期間と質問のタイプに注意

Pulse の強化された質問機能は、質問が、指標でサポートされている時間構造や統計的インサイトのタイプと一致している場合に、最大の効果を発揮します。たとえば、「先週」についての質問は、指標が週ごとの比較に対応していればうまく機能しますが、「11 日前」についての質問はうまく機能しない可能性があります。最良の結果を得るには、指標の時間粒度とデフォルトの比較期間に合わせてください。強化された質問機能とは何かを理解し、また何ができないのかを理解することも重要です。強化された質問機能は自由形式のチャットボットではありません。データソースに対して直接クエリを実行したり、カスタム指標をその場で計算したりすることはありません。代わりに、フルスコープの絞り込みを使用して質問を解釈し、最も関連性の高いスコープ指標を特定して分析し、サポートされている統計タイプから得られた以下のようなインサイトを返します。

  • 通常と異なる変化 (急増や急減など)
  • 前期比 (PopC)
  • 上位/下位の貢献要因
  • 上位の推進要因/阻害要因
  • 現在の傾向と新しい傾向の検出
  • 記録上の外れ値
  • リスクのある独占

このスコープ内に収まるのが適切な質問です。次のような質問をしてみましょう。

  • 「先月、再入院率が最も上昇した病院内の部門は?」
  • 「前四半期の北米と EMEA の営業利益率を比較したい」
  • 「第 1 四半期の売上減少の主な原因となった製品カテゴリーはどれか?」
  • 「4 月に高リスク患者の請求件数に通常と異なる変化はあったか?」
  • 「顧客層全体で、チャーンレートとクレジット利用率に相関関係はあるか?」
  • 「小児科にドリルダウンしたとき、先週の、全クリニックでの患者の来院数の変化は?」

質問に割合の計算、複数の未設定ディメンションによるフィルタリング、あるいは「11 日前」のような任意の日付の参照が必要な場合、強化された質問機能では回答に必要な根拠を十分に確保できない可能性があります。つまり、指標の構造に沿って、Pulse が対応しているインサイトタイプに結び付いた質問をすることで、強化された質問機能が最も関連性の高い限定的な回答を自動的に表示できるようにしてください。

グループコンテキストが重要

Pulse の強化された質問機能のインサイト生成は、現在のグループコンテキスト内の指標に基づいています。フックグループコンテキストとは、選択したフック (定義済みクエリ) に基づいて、Pulse の強化された質問機能が特定の質問に回答するために使用する動的な指標セットを指します。これは、質問をするとアクティブになる、より限定されたコンテキスト固有のグループです。このコンテキストは、UI に表示される指標や最初の指標のグループと必ずしも一致するとは限りません。基本的に、UI グループにはビジネス機能または期間に関連するすべての指標が表示されますが、フックグループコンテキストは、Pulse の強化された質問機能が特定のクエリに対するインサイトを生成するために使用する指標のサブセットを定義します。フックグループコンテキスト外で質問をすると、Pulse の強化された質問機能は回答を提供できないか、得られる結果が限定的になります。Tableau は、この区別を明確にし、強化された質問機能におけるこれらのコンテキストの処理方法を簡素化することに取り組んでいます。

インサイトの言い換えと説明

Pulse の強化された質問機能の LLM は、前期比の変化などの概念を言い換えたり簡潔にしたりできる柔軟性を備えており、これらをよりわかりやすく表示できます。たとえば、「売上高は前月比で 10% 増加しました」というインサイトを単に表示するだけでなく、「今月の売上高は 10% 増加しました。これは主に中西部地域の需要増加によるものです」と言い換えることができます。インサイトを言い換えたり明確化したりするこの機能は、新しいリーダーが業務に慣れていくのにも、経験豊富なリーダーが最も重要な傾向を迅速に理解し、重要なインサイトに集中するのにも非常に役立ちます。

指標作成のための引用

引用は事実確認だけでなく、インタラクティブなビジュアライゼーション (棒グラフと折れ線グラフ) も含まれています。引用には、たとえばシアトルと大阪への製品配送量を比較した棒グラフなどが表示されることがあります。シアトルのバーをクリックすると、シアトルでフィルタリングされた指標が自動的に作成されるので、それを Tableau Pulse でフォローして更新情報などをタイムリーに取得できます。

言語サポート

強化された質問機能は、Tableau Cloud のすべての言語をサポートしているだけでなく (Tableau Cloud の言語設定を変更すると自動的に適応します)、基盤としている大規模言語モデルの力により、入力する言語に関わらずスムーズに応答できます。

ハルシネーションは現実の問題

はっきり言って、最先端の LLM は、時折判断を誤る天才のようなものです。こうした判断ミスは「ハルシネーション」と呼ばれています。すべての LLM はハルシネーションを起こします。これは、それらのモデルが事実を検索して答えを出すのではなく、学習データに基づいて最も可能性の高い単語の並びを予測することで応答を生成するためです。そのため、自信に満ちていても不正確であったり、あるいは完全に捏造された出力につながる可能性があります。Pulse の強化された質問機能は、もっともらしく聞こえるものの、完全にはデータに基づいていないインサイトを提供する場合があります。でも、心配はありません。透明性と説明可能性を重視した設計となっているからです。引用文献のおかげで、データの出所を常に把握できるため、ユーザーは得られたインサイトを検証できます。さらに、LLM に計算をさせることは一切ありません。統計的インサイトの計算は LLM が行っているわけではありません。

強化された質問機能の今後の展望

Pulse の強化された質問機能は、企業のデータ探索方法を根本から変革します。従来の BI ツールのような複雑さがなく、迅速に実用的なインサイトを提供します。関連性の高い指標と構造化クエリにフォーカスすることで、最も重要な数値との接点を維持することができます。そして、これはまだ始まりにすぎません。Tableau は、LLM の機能をさらに強化し、記憶力の向上、ハルシネーションの軽減、ワークスタイルに合わせたより適応性の高いエクスペリエンスなど、より多くの機能を実現できるよう継続的に取り組んでいます。Tableau として、インサイトの提示方法も改良し、情報デザインを最適化して、認知と意思決定をスピードアップさせています。さらに、Pulse の強化された質問機能へのアクセスを、現在のフックベースのエントリポイントから拡張し、より直感的にデータと関わることができるようにしていきます。

この機能は急速に進化しており、すぐにビジネス指標の探索と理解に欠かせないツールになると確信しています。適切な質問をし、インサイトを検証し、探索を続けましょう。データはあなたのために働くべきであり、その逆ではないからです。

Tableau+ バンドルで強化された質問機能の利用を開始

Tableau Pulse の強化された質問機能を使用するには、Tableau Cloud 環境が Salesforce 組織に接続されている必要があります。Tableau のプレミアム AI 機能 (強化された質問機能や Tableau Agent など) は、Salesforce の Einstein Trust Layer 上で実行されるため、この接続は不可欠です。このレイヤーは、LLM の監査性、安全管理、そして Data Cloud を通じたフィードバックの収集を提供します。Tableau サイトを Einstein と Data Cloud が有効になっている Salesforce 組織に接続することで、以下のメリットが得られます。

  • LLM のプロンプトと応答の完全な監査 (Einstein Gateway 経由)
  • 有害性の安全性チェックと、機密データ識別子が LLM に送信されないようにするマスキング処理
  • AI の使用状況に関するエンタープライズレベルのガバナンス
  • 使用状況、エラー、ユーザー満足度を監視するためのダッシュボード

強化された質問機能はデフォルトで無効になっており、この機能が組織に適しているかどうかを評価するための機会が提供されます。強化された質問機能が事前に有効になっている、無料の Tableau Cloud トライアル版をご利用いただくこともできます。ただし、トライアル版では共有の Salesforce 組織を使用するため、非公開の監査データにアクセスしたり、AI ガバナンスを設定したりすることはできません。

Tableau Cloud サイトで強化された質問機能を有効にする準備ができたら、Salesforce 組織に接続することで、完全な制御、可視性、コンプライアンス監視が可能になります。また、Tableau+ バンドルを通じて利用できるプレミアム AI 機能もご確認ください。