2024/07/09

Tableau Pulse がすべての人を支援するための、質問機能における NLP に対する取り組み

Tableau Pulse の質問機能を使えば、AI を活用して、質問をするまでもなくビジネスインサイトを積極的に明らかにできます。

人工知能 (AI) は私たちの人生で最も革新的なテクノロジーですが、個人や企業にとって、AI やデータから価値を引き出す方法を学ぶのは必ずしも容易ではありません。データから最大の価値を引き出すには、明らかにされたインサイトが必要です。より具体的には、適切なビジネスコンテキストに基づいた適切なインサイトを、適切なビジネス上の意思決定を行うためにそれを必要とする人々に届けることが重要です。これをお客様が実現できるようにすることが、Tableau Pulse を開発した最大の理由です。

Tableau Pulse は、Tableau AI の最新イノベーションとして、AI を活用したインサイトを提供することで、データドリブンな意思決定を拡大し、人々がデータと関わる方法を変革します。最新の機能強化は、Pulse の質問機能でご利用いただけるようになりました。Pulse の質問機能が強化され、誘導形式の質問と自由に入力できる質問によりインサイト探索の手段が広がりました。これまでのガイド付きの質問の横に [質問する] ボタンが追加され、調べている指標に関して質問できるようになっています。

このブログ記事では、Pulse の質問機能の強化と Tableau Pulse の独自性を生み出すアプローチについて説明します。

Tableau Pulse が優れている理由

Tableau Pulse は、ビジネスユーザーの日常的なビジネス分析業務を刷新し、彼らにとって重要な指標に関する、インテリジェントでパーソナライズされた、コンテキストに基づいたインサイトを提供します。Tableau Pulse は、分析スキルのレベルに関係なく、よくある質問への回答となるインサイトを生成してパッケージ化してくれるため、自分で質問する必要がありません。「何がわからないのかがわからない」という問題を解決し、AI を活用した自然言語で分析結果を処理し、Tableau Pulse でユーザーに提供します。これらのインサイトは、ガイド付きの会話、ワークフロー中のダイジェスト、テキストサマリーの形で提供され、より深く掘り下げる前に注目すべき変化をすばやく教えてくれます。実際、Pulse は、ビジネスユーザーが自分が何を調査したいのか、あるいはどのような質問をすべきかを考える前に、ビジネス上の疑問に答えます。

エクスペリエンスの観点から見ると、このアプローチは質問に先回りして答えるだけでなく、時間や注意をあまり割くことができないビジネスユーザーにも、必要最低限の文脈と意図をうまく伝えることで、意欲を持って自発的に分析探索に取り組めるようにします。自分が選択した指標について、自分の方法と自分のペースでインサイトを明らかにすることで、ビジネスユーザーは探索中も興味や関心を維持しやすくなります。ビジネスユーザーは、関心のある特定の指標の調査を終えた時点で、現在の指標に適用されている時間フィルターまたはディメンションフィルターを調整することで、いつでも新しい探索ビュー (同じ指標定義) にアクセスできます。また、オートコンプリート機能や既存の指標へのグローバル検索解決機能を備えた指標検索を使用して、他の指標コンテキスト (同じ定義でも異なる定義でも) に移動できるため、ユーザーの探索プロセスが行き詰まることはありません。

売上と収益データの折れ線グラフに関するテキストインサイトが表示されている、ノートパソコンとスマートフォンの画面

今日、平均的な組織では、マーケティング、セールス、サービスに携わる人々の 70% が、まだ十分なデータサービスを受けていません。これらの人々は本来、適切な質問をすることでデータに基づいた意思決定を迅速に行うことを望み、必要としています。さらに重要なのは、誰であってもどこにいても、業務に必要なビジネスインサイトを得られることを必要としています。個別のデータに関する質問に受動的に答えるのではなく、能動的にインサイトを検出して提供できたらどうなるでしょうか? 具体的には、ビジネスユーザーがよく疑問に感じる、より複雑なビジネス上の質問に回答するために使用できるインサイトを、統合され、直感的で信頼できるエクスペリエンスを通じて提供するということです。

Pulse の質問機能とは

多くの AI ソリューションでは、データに関する質問を行う必要がありますが、これは、どのような質問をすればよいかわからない人にとっては非常に難しいことです。Pulse の質問機能は、指標とインサイトを活用し、ユーザーが必要な時に答えに近づくための、能動的なビジネス質問機能エンジンです。能動的な回答は、ユーザーが質問する前から開始され、必要に応じてビジネスインサイトを浮き彫りにします。この機能は、既存のガイド付き質問機能の上に構築されており、ビジネスユーザーがインサイトを探索するためのより多くの方法を可能にし、その利用を推進します。

Pulse の質問機能に新たに追加された [質問する] ボタンを使うと、ビジネスユーザーがインサイトを得るまでの時間をさらに短縮できます。この [質問する] 機能を使うと、調べているインサイトに合わせた質問が提案されます。

ビジネスユーザーは、多くの場合、指標という形で提供される答えをすばやく得たいと考えています。単純な例としては「収益」があります。これは、特定のデータソースに対して「注文日における売上合計」などの構造化クエリでモデル化できますが、クエリの精度を高めるには通常、同義語の整備など、手作業による多くのステップが必要になります。より複雑な例としては「コンバージョン率」が挙げられます。これは直近の列を集計するだけでは得られず、中間的な計算が必要となることがあり、解釈にばらつきが生じる可能性があります。さらに、ダッシュボードが一般的に回答しようとする質問、たとえば値のディメンション別の内訳やデルタでさえも、特定の期間または全期間にわたってある指標を拡張的に分析したものに過ぎません。

Pulse の質問機能の仕組み

Pulse の質問機能が実際にどのように機能するかを理解するには、まず基本的なことから始める必要があります。従来の BI ツールにおける質問回答システムでは、ビジネスユーザーが、業務用に整備されていない可能性のある表形式のデータセットに対してクエリを実行する必要があり、アナリスト以外のビジネスユーザーであっても、馴染みのないデータや操作、プロセスに直接アクセスし、自分自身で試行錯誤しながら、項目の指定や計算といった宣言型ステップを使って探索することが求められています。これには通常、ヒューリスティックなパーサー、実行前のインデックス作成、あいまい一致、概念表現、隠しコマンドなどに加えて、多くの調整を必要とするセマンティックオントロジーや構成/分解ロジックなどを活用し、たまにうまく動作するブラックボックス的な機能を実現しようとすることが含まれます。

答えは明白でした。ユーザーが毎回、クエリに使う正しいデータセットを選び、システムや背後のメタデータの使い方を学習し、少しずつ表現を変えた精巧なクエリを考えて入力する、といった手間をかける代わりに、Pulse は、指標を第一級の要素として位置付けることでこうした問題を解決します。指標は、アナリストがどのデータソースからでも一度定義すれば、さまざまな使用コンテキストに合わせてフィルタリング可能となり、ビジネスユーザーが自分のワークフローに合わせて利用できるようになります。

これらの指標は、組織のビジネスロジックやコンテキストを信頼できる単一の情報源に適用するだけでなく、ビジネスユーザーによる検索、好みに合わせたフィルタリング、フォローや共有などを、すべて一元的に実行することを可能にします。Tableau Pulse は、指標の定義と適用可能な時間フィルターまたはディメンションフィルターを基盤として、指標のコンテキストに関する最もよくあるビジネス上の質問 (推進要因、貢献要因、傾向、変化など) を自動化します。これらの分析は決定論的な計算を用いて行われ、その結果は自然言語で記述された非常に理解しやすいインサイトとして提供されます。これらのインサイトは、ポイントアンドクリック (ガイド付きの質問) または質問の入力 ([質問する]) を通じて、ガイド付きの会話で明らかにされます。それでは、これらの機能をそれぞれ詳しく見ていきましょう。

ガイド付きの質問

指標のインサイト探索ページでは、ユーザーが質問を思いつく前に、すでに自分に推奨された最大 3 つの主要なガイド付きの質問が表示されます。インサイトは、ユーザーが探索したいと考えている指標と関連しており、その指標は他の利用状況シグナルとともに独自のインパクトスコアに基づいてランク付けされ、時間の経過とともに改善されるため、これらの代表的な質問も、ユーザーが見たい内容と極めて関連性の高い順序で並べられています。ガイド付きの質問は、ビジネスコンテキストを考慮した口語的な表現で作成されており、基礎となる指標とデータに基づいて、一般的なユーザーが質問したいと想定される内容を的確に予測し、それに対応するように作成されています。これらすべてが、ビジネスユーザーから重荷を取り除いてくれます。何を質問すべきか考え、どのように質問するか頭を廻らせ、質問を入力し、試行錯誤しながらシステムを操作し、さらに自分のデータ選択方法、フィルタリング方法、解釈方法の影響でその回答が信頼できるのか不安に思う、といった負担から解放されます。質問からインサイトへの 1 対 1 の関連付けにより、ユーザーはこれらのインサイトを自分のペースで徐々に明らかにすることができます。そして、情報量が豊富でありながらも簡潔なテキストによる説明に加え、取り上げられている事実の理解を深めるのに役立つベストプラクティスに基づいたビジュアライゼーションが提供されます。さらに重要なのは、ページの読み込み中も会話のコンテキストが維持されるため、ビジネスユーザーはすでに見た内容を再確認するためにブラウザーで戻る操作をする必要がなくなるということです。

販売されたユニット数を示す棒グラフと、この販売データに関するインサイトを得るために推奨される質問が表示された白い画面

 

[質問する]

上位に推奨されたガイド付き質問から選択して探索する機能に加え、画面に [質問する] ボタンが表示されるようになりました。このボタンをクリックすると、質問機能のポップオーバーが起動し、自然言語で質問を入力することで、現在調査中のものと同じ指標で検出されたインサイトのセマンティックマッチがランク付きで表示されます。ここで、Pulse の質問機能は、応答の遅延やハルシネーションのリスクを高める大規模言語モデル (LLM) を呼び出す代わりに、高速推論が可能な埋め込みモデルを活用します。これは最新の LLM を構成する要素の 1 つであり、一般的な人間の言語を理解できるように学習が行われたものです。このモデルを使って、ガイド付き質問とその根底にあるインサイトのベクトルを計算し、試行済みの最善のアルゴリズムを用いてユーザーが入力したクエリと比較します。

クエリ結果は常に複数提示され、セマンティックな類似性に基づいてランク順にユーザーに表示されます。これにより、ユーザーの意図に最も合致する質問/インサイトの候補が提示されるとともに、さらなる発見の余地も残されます。このようにして表示されたガイド付きの質問を選択すると、ポップオーバーの外でその質問をクリックした場合と同じインサイト回答が得られます。また、ユーザーはいつでも戻って、現在探索している指標に関連する質問をさらに続けることができます。この新しい探索方法により、ユーザーが指標を理解し、インサイトから必要な回答を得る際に、得られる体験がよりいっそう深みを増したものになります。近日中に、このエントリーポイントを強化する追加機能をサポートし、ユーザーがより正確な指標ビューにナビゲートできるようにする予定です。

 

Tableau Pulse の質問機能における NLP の活用方法

対話型分析、データストーリーテリング、セマンティック検索。これらはすべて、分析における自然言語処理 (NLP) テクノロジーの応用例の一部であり、長年にわたり、私たちのデータや情報との関わり方を大きく変革してきました。NLP の初期の頃から、このテクノロジーは自然と 2 つの大きな応用分野に分かれて発展してきました。それは、自然言語生成 (NLG) と自然言語クエリ (NLQ) です。従来の質問機能システムでは、NLQ 自体が主力製品となっていましたが、Pulse はこれとは異なり、さまざま AI やアルゴリズムを搭載したさまざまな NLG および NLQ テクノロジーを、エンドユーザーに関連ビジネスインサイトを思考のスピードで届けるための手段として活用しています。結局のところ、自然言語生成 (NLG) と自然言語クエリ (NLQ) は、同じコインの裏と表に過ぎないのです。

NLG と NLQ は、それぞれに魅力があります。自然言語でデータの答えを得たり、自然言語を使って答えを引き出したりするその魔法のようなテクノロジーは、アナリストと分析の利用者を常に魅了してきました。Tableau は、両方のタイプのソリューションを構築してきた実績があります。たとえば、データソースから Tableau のビジュアライゼーションを生成するための「データに聞く」機能を、データ整備重視の NLQ ソリューションとして構築したほか、事前に構築済みのダッシュボード上のデータインサイトを説明するための「データストーリー」と「データの説明を見る」機能を、スタンドアロンの NLG ソリューションとしてリリースしてきました。これらのイノベーションを通して、AI を分析に統合するうえで貴重な教訓を得ました。最も重要なのは、適切な人々のために、適切なツールの組み合わせで適切な問題を解決する必要があるということです。こうした考えが Tableau Pulse の開発につながりました。

ユーザーからのクエリに対して、回答の精度についての保証もないまま受動的に応答するのではなく、Tableau Pulse は、分析ニーズを予測し、システムが検出した情報とビジネスユーザーが必要とする情報を、必要なときに必要な場所でつなぐことで、インサイトの検出と提供のプロセスを自動化することができます。指標はすでにアナリストによって定義されているため、ビジネスユーザーは、新たにデータ整備を行ったり、指標の背景について考えたりしなくても、Pulse にアクセスして利用を開始するだけでこの機能を利用できます。

さらに、Pulse での探索中に、指標やインサイトが常にリアルタイムで計算され、最新の情報が提供されるため、「どの商品がよく売れたか?」「どのカテゴリーが上昇したか?」「利益の傾向はどうなっているか?」といったビジネス上の質問にも、こうした直感的なインサイト探索モードの質問機能を通じて回答できます。これにより、シンプルで魅力的、かつ有益な自然言語のやり取りを通じて、リアルタイムのインテリジェンスがリアルタイムのアクションの推進につながります。

質問機能の今後の展望

インサイトプラットフォームへの投資を継続するなかで、Tableau Pulse は、「何が起こったのか」という記述的な質問に答えるだけでなく、将来的には「なぜそれが起こったのか」という診断的な質問や、「次に何が起こるのか」という予測的な質問にも対応できるようになるでしょう。最終的には、Pulse は自然言語による探索において「何をすべきか」という質問を提示できるようになり、真にインテリジェントな BI が答えられる、そして答えるべきことの限界を押し広げていきます。何より素晴らしいのは、現在の Pulse の質問機能は、Tableau Pulse を自社サイトで有効化しているすべてのお客様が、モバイルと Web の両方の環境ですぐに利用できることです。これは、Tableau が今後進めていく長期的なイノベーションの始まりに過ぎません。

ビジネスユーザー向けに Pulse の自然言語機能を継続的に改善し、よりシームレスな探索を実現するだけでなく、Einstein Copilot for Tableau などのツールを用いて、アナリストが既存のワークフローでサービスを活用できるように、対話機能を拡張したいと考えています。これまでも、そしてこれからも変わらないのは、分析に携わるすべてのユーザーがより効率的かつ迅速に仕事をこなせるように支援を続けるという Tableau の姿勢です。あらゆる組織内のデータと人々の間にあるギャップを埋め、インサイトからアクションの流れに誰もが参加できる世界を目指します。