freee 会計

誰でも探索的な分析ができるようにTableau を導入


データ抽出・仮説検証の時間が大幅に短縮

改善施策サイクルの高速化

導入の背景

自らクエリを書いていた以前の分析環境

「スモールビジネスを、世界の主役に。」をミッションに掲げ、だれもが自由に自然体で経営できる環境を実現するため、「freee 会計」などのSaaS 型サービスを提供しているfreee 株式会社。スモールビジネスが大企業を刺激し、社会をさらにオモシロク、世の中全体をより良くする流れを、積極的に後押ししています。そのために世界レベルのクオリティのサービスを目指し、プロダクトそのものや顧客問い合わせ対応の改善も継続的に推進。これを支える分析プラットフォームとして活用されているのがTableau です。

「当社は創業当初からデータドリブンを意識しており、アナリティクスにも早い段階から取り組んできました」と語るのは、freee でCIO を務める土佐 鉄平 氏。実際にSQL 文を書ける人材も、数多く在籍していると言います。「しかし組織が急成長し続けることで、誰もがSQL 文を書けるとは言えない状況になってきました。データドリブンな企業文化を継続していくには、SQL 文を書ける人と書けない人が同じ土俵で議論できる環境が必要になっていました」。

Tableau 導入前の状況について「Amazon Redshift でDWH を構築し、Redash を通じてデータを抽出していました」と振り返るのは、アナリティクスでマネージャーを務める関川 陽祐 氏。データを出したい人が自らクエリを書き、Redash やスプレッドシートで可視化していたと説明します。「しかしこの方法には限界もありました。可視化のための工数がかかる上、ワンパターンの可視化しかできないため、探索的な分析が難しかったのです」。

 

Tableau の導入・運用環境について

投資効果の可視化を前提にTableauの導入へ

この問題を解決するため、新たな分析基盤の確立に向けた検討に着手。Google BigQuery にデータを抽出することを前提に、そこで使える分析ツールの選定が進められていきます。

「Google の活用が前提となったため、まずはGoogle が買収したBI 製品が候補に挙がりました」と関川氏。しかし最終的にはTableau を選択し、その採用提案をCIO である土佐氏に上程することになります。これを受けた土佐氏はすぐに導入を承認。その理由について「Tableau は以前から知っており、現場で使いやすいものを導入するのはいいことであり、セキュリティ面も十分に担保できると評価したからです」と語ります。

ここで承認の条件になったのが、投資対効果の可視化です。約半年間利用した結果、どのような成果が得られたのかをレポートすることになったのです。

Tableau の活用は、まずサポートチームからスタート。このチームは当初から、Tableau 活用に前のめりだったと関川氏は言います。その後、プロダクト改善に向けた分析にも着手。プロダクトの利用率やチャーン率(解約率)などの可視化が進められていきます。また目標管理手法としてはOKR(Objectives and Key Results)を導入。効果の定量化も進められていくのです。

freee はいままでの会計システムとは異なる設計思想を持っていますが、Tableau にもその考え方に近いものがあると感じています。これからもTableau を積極的に活用し、データドリブン型の意思決定で成長を続けたいと考えています

Tableau 選定の理由について

スモールスタートと人材確保が容易

ここで他社BI 製品ではなくTableau が選択された理由は、大きく3つあります。

第1 は前述のように、現場のユーザーが使いやすいことです。SQL 文が書けないユーザーでも探索的な分析が行えるため、データ分析における技術力の格差が解消できます。成長企業であるfreee 社は、今後益々分析内容が増えていくことが予想されますが、それを担保できる分析プラットフォームを提供する必要です。Tableau であればユーザーが使いやすいため、分析ダッシュボードの品質の標準化が可能で、分析の精度を高めていけます。

第2 はスモールスタートが容易なことです。「全社展開の前に投資効果を測定する必要があったため、まずは小さく始められることが必要でした」と関川氏。しかし他社BI 製品はスモールスタートが意外にも難しかったと語ります。「これに対してTableau は、スモールスタートが容易な料金体系になっていました」。

そして第3 が、使いこなせる人材が多いことです。「この頃にはアナリティクス以外でもTableau 経験者が何人も入ってきて、チームに閉じずに活用を推進していけそうだなという期待と、また世の中全体を見渡してもTableau を使える人は多く、将来的にもデータ分析の属人化を回避できると評価しました」。

エンドユーザーの分析作業に、全部付き合う必要がなくなりました。以前はアナリティクスがアウトプットを出すまでサポートする必要がありましたが、今ではViz さえ用意しておけば、あとはユーザー自身が自走してくれます

Tableau の導入効果について

探索的な分析を効率的に実施可能

「Tableau を導入したことで、サポートチームでは大きく2 つの効果が得られています」と語るのは、アナリティクスのデータサイエンティストとしてサポートチームを支援する鈴木 啓章氏です。

データ抽出・仮説検証の時間が大幅に短縮

第1 はデータ抽出の作業が大幅に簡素化されたことです。「以前はKPI を可視化するために、毎回Redash 経由で10~20 ものスプレッドシートを作成していました。これに対してTableau は1 つのViz で多面的な分析が可能です」。

探索的な分析が容易

第2 は探索的な分析が容易になったことです。「SQL を使うことなく分析軸を変更できるので、データから仮説を見つけやすくなりました。その結果、以前はデータ抽出から仮説立案まで32 時間程度かかっていたチームの作業が2 時間にまで短縮されています。また問い合わせファネル全体の可視化やドリルダウンも容易になり、どこを補強すべきかも把握しやすくなりました」。

改善施策サイクルの高速化

このような効率化に伴い、改善施策のサイクルも高速化しています。「以前の改善施策サイクルは、四半期毎に各プロジェクトでせいぜい2 サイクル程度でした。それがTableau を導入してからは、3 サイクル回せるようになっています」(関川氏)。

これらの効果に対し土佐氏は「今見えているものだけでも投資を1 年で回収できると試算しています」と語っています。

業務プラットフォームがSalesforce なので、今後はSalesforce の中にTableau のViz を埋め込んでいきたいと考えています。これによってSalesforce の中で、契約状況やプロダクト利用状況などを可視化し、データ観点から業務を進めやすくなるはずです

今後の展開について

Salesforce との連携で日常業務でのデータ活用を促進

「今後進めていきたいことは、当社の業務基盤となっているSalesforce との連携です」と関川氏。最終的にはSalesforce の中に、Tableau のViz を埋め込みたいと語ります。これが可能になれば、カスタマーサクセスチームなどが日常業務の中でデータ観点での意思決定を行いやすくなり、更には全社の実績管理をSalesforce 上で可視化することで、経理部門と事業部門の実績照合作業も軽減できるはずだと言います。

「freee はいままでの会計システムとは異なる設計思想を持っていますが、Tableau にもその考え方に近いものがあると感じています」と土佐氏。それまで専門家にしかできなかったことを、一般の人々に解放していく上で、大きな威力を発揮していると指摘します。「これからもTableau を積極的に活用し、データドリブン型の意思決定で成長を続けたいと考えています」。

freee graphic2