2025/08/21

インサイトからアクションへのギャップを埋めるエージェンティック AI

エージェンティック分析は、インサイトからアクションへのギャップという BI の「ラストマイル」を解決し、コンテキストの切り替えを不要にするとともにタイムリーな意思決定を実現します。

長年にわたり、従来モデルのビジネス分析は直線的に行われるものでした。データを収集し、クリーニングと準備、探索とモデリングを行った後、ダッシュボードやレポートの形にまとめるという手順です。どのステップでも、スキルを持つ人材と専用ツールという大きな投資が欠かせません。しかし、そのパイプラインがどれほど優れていても、得られたインサイトが実際のアクションや測定可能なビジネス成果につながらなければ、結局は不十分です。

皮肉にも、多くの場合はその部分こそが最大の課題として立ちはだかる最後のステップ、俗に言う分析の「ラストマイル」です。ダッシュボードは視覚的に洗練されていますが、日常業務のフローに組み込まれていないことがよくあります。ダッシュボードが提示するインサイトはサイロ化しており、意思決定やアクションを行う業務システムから分断されています。カスタマーサービスや営業、現場作業などのチームにとって、ダッシュボードツールはペースの速い日常業務に組み込みにくいのです。この問題の原因は何でしょうか。それは、今日の BI プラットフォームが、アクションに移すことを中心に据えた設計になっていないところにあります。

最近の私のブログで、エージェンティック分析はビジネスデータに会話型 UI を重ねただけのものだと誤解されることが多いと述べました。しかし、実際ははるかに画期的です。エージェンティック分析は、適切なインサイトを適切なユーザーに適切なタイミングで提示し、統合されたアクションレイヤーを通じて自動化されたタイムリーなビジネスアクションを実現します。

このブログでは、分析の重要な「ラストマイル」、つまりアクションレイヤーについて掘り下げていきましょう。従来の BI プラットフォームがインサイトと実行の間にあるギャップを埋めるのに苦慮している理由や、エージェンティック AI の進歩が状況をどのように変えつつあるかを見るとともに、Agentforce を活用した Tableau Next で、分析環境が「報告」に留まらずアクションの原動力となることを解説します。

BI がアクションの推進には不十分であることが多い理由

分析の「ラストマイル」問題とは、インサイトとアクションの間にある慢性的なギャップ、つまり組織がダッシュボードやレポートのデータから価値あるタイムリーな成果を引き出すうえで直面する難しさを指します。高度な BI プラットフォームに多大な投資を行っても、分析結果でビジネスアクションを推進するのを妨げる、次のようなシステム上の課題は依然として残ります。

  • コンテキストの切り替えと分断されたワークフロー: 従来の BI ツールは、ユーザーが利用するシステムの外にあります。CRM (顧客関係管理) や ERP (エンタープライズリソースプランニング)、サプライチェーンのシステムからダッシュボードに切り替えると、ワークフローの混乱、推進力の喪失、意思決定の遅れを招きます。
  • 利用しにくさ: 多くの場合、BI プラットフォームはデータエキスパート向けに設計されており、業務上の意思決定に最も近い最前線のスタッフがインサイトを直接利用することはできません。そのため、アクションをとれるユーザーやそのタイミングが限定されます。
  • リアルタイム対応の欠如: インサイトが的確であっても、遅れたり静的であったり、あるいは業務システムから切り離されていたりすることは少なくありません。こうした分断により、ユーザーはアクションが最も重要なタイミングで対応することができなくなります。
  • 質の低いユーザーエクスペリエンス: ダッシュボードの多くは、複雑、非直感的、過剰な情報などという問題を抱えています。インサイトの解釈や利用がしにくいと導入は進まず、意思決定とアクション実行も推進されません。
  • アクション推進におけるユーザーへの過度の依存: ほとんどの BI ツールは、インサイトに基づくアクションをユーザーがとるべきものとしています。アナリストとデータチームは、解釈と発信、成果につなげることが求められる一方、アクションの推進に必要なビジネスコンテキストや権限を持たないことも珍しくありません。

インサイトからアクションへのギャップを埋めるエージェンティック AI

長年にわたり、BI ソリューションは主に埋め込み分析を通じて、分析のラストマイルをつなぐことを目指してきました。CRM や ERP のシステムなどのツールにダッシュボードを組み込む埋め込み分析で、インサイトは利用しやすくなっています。しかし、利用しやすさだけでは不十分です。未だにそうしたシステムは、データの解釈や手作業によるアクション実行をユーザーに任せており、リアルタイムのビジネスオートメーションの実現には至っていません。

そこで登場するのがエージェンティック AI です。大規模言語モデル (LLM) をはじめとする従来の AI モデルは、ユーザープロンプトに応答して分析、要約、提案します。一方で、エージェンティック AI はさらに進化を遂げた、独立してタスクを実行できる能動的で目的主導型のインテリジェントなエージェントです。これは組織にとって、ワークフロー自動化とビジネス価値向上の手段におけるパラダイムシフトを意味します。

この動向の最前線にあるのが、Salesforce のエージェンティック AI プラットフォーム、Agentforce です。組織は Agentforce で、人間による入力を最小限に抑えながら、営業やサービス、マーケティング、運営にまたがる複雑なワークフローを実行する自律型 AI エージェントの構築、構成、導入を行えます。Agentforce エージェントは Atlas Reasoning Engine を活用するとともに、Salesforce フローや MuleSoft などのツールと緊密に統合されており、インサイトの解釈、アクションの開始、エンドツーエンドのビジネスプロセス調整が可能です。

Agentforce を基盤に構築された Tableau Next は、こうした機能を分析レイヤーに組み込みました。Tableau Next はエージェンティック分析プラットフォームであり、インサイトの提示に留まらず、引き続き人間による管理を維持しながらも AI エージェントがデータ分析や意思決定、インサイトに基づくアクションを自律的に行えるようにします。つまり、情報に富んでいるうえインテリジェントで迅速、かつアクションにつながる分析が実現し、ラストマイルのギャップをうまく埋めることができます。

アクションにつながる分析を規模に応じて実現

AI エージェントの構築と運用は複雑で、モデルや API、ルール、ガバナンスをまとめ上げる必要があります。この部分をシンプルにするために、Agentforce では AI エージェントの開発と統合、そしてエンタープライズクラスのコンプライアンス、モニタリング、セキュリティのための統合ツールが提供されています。

AI エージェントには変革を起こす可能性が秘められていますが、組織はデータ品質やセキュリティ、倫理的な利用といった課題にも対処しなければなりません。そこで、Tableau Next に不可欠な要素である Salesforce の Agentforce Trust Layer は、セキュアで監査可能、かつコンプライアンスに従ったエージェンティックワークフローを実現して、デジタルワークフォースに対する適切なガードレールを確立します。

Tableau Next はこうしたネイティブな統合を通じて、従来のダッシュボードをインテリジェントなインターフェイスに一新。アクションが直接とれるようになるほか、アクションを AI エージェントに委任して、反復作業の自動化、ユーザーへの警告、変化し続けるデータに基づいたワークフローの開始を、管理された安全な形でバックグラウンド実行させることもできます。

さまざま部門に形あるメリットとビジネス価値をもたらすエージェンティック分析

  • マーケティング: AI エージェントはリアルタイムで、キャンペーンターゲティングの最適化とアウトリーチのパーソナライズを継続的に行います。エンゲージメントが強化され、獲得コストも低減します。
  • 営業: AI エージェントは、パイプラインの指標分析、可能性が高いリードの特定、メールの作成、ミーティングのスケジュール設定を行います。営業担当者の効率と業務スピードの向上につながります。
  • カスタマーサービス: AI エージェントは、解約の予兆検出、定着ワークフローの開始、ライブサポートアクションの提案を行います。顧客満足度の向上につながります。
  • 財務: AI エージェントは、財務 KPI のモニタリング、異常の報告、エスカレーションの自動化を行います。コントロールとコンプライアンスが強化されます。
  • サプライチェーン: AI エージェントは、フルフィルメントに関する問題の特定、ルート変更の提案、在庫補充の自動化を行います。ダウンタイムが削減され、アジリティも強化されます。

あらゆる指標をアクションのチャンスに変えるエージェンティック分析

将来の BI は、インサイトの提示を超えてアクションの能動的な調整へと移行していきます。そのような将来を実現するものこそが、エージェンティック AI。データを実行に結びつけ、ワークフローを自動化し、スケーラブルな意思決定を可能にします。エージェンティック分析なら、「報告」に留まらずあらゆる指標がアクションのチャンスに。Agentforce を活用した Tableau Next で、真にアクションへつながる分析がもたらす可能性をご体験ください。

紹介ビデオをご用意しましたTableau Next のインタラクティブツアーで、アナリストの視点からダッシュボードを埋め込んで Salesforce で直接アクションを実行する様子をご覧いただけます。