2025/09/23

エージェンティックな未来が求めるオープンなセマンティックレイヤー

Salesforce は業界リーダーのアライアンスと協力して、まったく新しい取り組みを開始しました。その目的は、エージェンティック AI の加速に必要なオープンで相互運用可能な未来を目指すことにあります。

エンタープライズテクノロジーの世界は、大きな変化の時を迎えています。分析は数十年にわたり、インサイト提示の主な手段としてダッシュボードやレポートなどの出力に焦点を絞ってきました。しかし、AI エージェントが自律的に分析、推論してアクションを実行できるエージェンティック AI の台頭に伴い、はるかに根本的なもの、すなわちセマンティックデータモデルへと焦点を合わせ直す必要があります。

そのため Salesforce は、業界リーダーのアライアンスと協力してまったく新しい取り組みを開始し、この AI 時代に求められるオープンで相互運用可能な未来を目指しています。セマンティック定義を形あるビジネス成果に直接結びつけるための、緊密に統合されたテクノロジーを所有する Salesforce は、この取り組みの主導を支援できる独自の立場にあります。

AI 普及の致命的な阻害要因となる「データの意味の乖離」

アクセンチュア社の予測によると、2030 年までに AI エージェントはエンタープライズソフトウェアの主要な「ユーザー」となりますが、この新しいインテリジェントワーカーの有効性は、アクセスと理解が可能なデータによって決まります。AI エージェントは、意図を解釈して正確で的を射た出力を生成するために、明確で信頼できるセマンティック定義を必要とします。出力がデータビジュアライゼーションでも、推奨する次のステップでも、あるいは自律的なアクションであってもそれは変わりません。セマンティック定義は、データの的確かつ一貫した意味に基づいた分析にするための確固とした核であり、これがなければ AI への投資が信頼できるインサイトではなくノイズを生み出すことになりかねません。

企業が競って AI 導入を進めるなか、その多くは「データの意味の乖離」とも呼ぶべき壁にぶつかっています。データが一元化されていても、データの意味はそうではありません。「カスタマーチャーン」や「アクティブリード」といった個々のビジネス用語が、それぞれのシステムやチームで複数の相異なる定義を持っていることはよくあります。たとえば顧客満足度 (CSAT) は、何を「良好」と呼ぶかが違う、大きく異なった複数の基準で定義することができます。この問題を悪化させるのが、同一指標のロジックがダッシュボードによってわずかに異なる、「セマンティックの無秩序な拡大」です。週の始まりが月曜か日曜かがレポートによって異なる場合がこれに当たります。

ささいな不整合に思えるかもしれませんが、影響は決して小さくありません。データに基づいたあらゆる組織にとって最も重要なアセットである、信頼性が損なわれるのです。相反する数字をリーダーが見たとしたら、自信を失って意思決定をためらうでしょう。データチームも数百時間をかけて、サイロ化したプラットフォーム間でビジネスロジックを手作業で照合せざるを得なくなり、業務上の大きなネックになるうえ非常に複雑な状況も招きます。こうした無駄な労力はイノベーションを減速させ、ビジネス成果を加速するはずの AI モデルそのものの信頼性を揺るがします。

エージェンティック AI 時代では、セマンティックモデルが AI と分析の真の中核を担い、基盤的な「ビジネス理解のためのソースコード」となります。しかし、この基盤は単一ベンダーのテクノロジーにロックインされることが珍しくありません。その結果、データの新たなサイロ状態が生み出され、お客様は新しい環境でビジネスロジックを絶えず再構築せざるを得なくなるとともに、AI も企業が求めるトップクラスのツールに拡張できなくなります。

オープン セマンティック インターチェンジ共同構想 (OSI) のご紹介

この根本的な課題を解決するために、Salesforce は Snowflake 社や dbt Labs 社などの業界リーダーと連携して、オープン セマンティック インターチェンジ共同構想 (OSI) を共同で主導することになりました。この取り組みが目指すのは、コンテキストや意味、そしてデータから得られた結果が、お客様の利用するあらゆるプラットフォームで保持されるようにするための、ベンダーニュートラルな共通仕様の確立です。ビジネス上の意味を一度定義すればどこでも理解されるようになるべきだ、というシンプルな目標を掲げています。

OSI は、すべてのツールが「同じ言葉を話せる」ようにするための共通規格確立を目指して活動していきます。それにより、ツール間の相互運用性を確保し、一貫性を損なわずにトップクラスのテクノロジーを導入できる柔軟性を企業に提供します。この取り組みにおける Tableau の当初の重点項目は、次の重要な機能です。

  • 双方向のメタデータ交換: 指標、ディメンション、階層、関係をプラットフォーム間で交換する方法の標準化。これにより、手作業や無駄な再コーディングを行わずに、ビジネスロジックがシームレスに実行されるようになります。
  • シームレスなガバナンス拡大: 大本のセマンティックレイヤーで定義されたアクセス制御とデータ系列が、すべての参加システムで自動的に適用、遵守されるようにします。あらゆる場所で、信頼性とセキュリティの統一レイヤーが実現されます。
  • ネイティブなクエリロジック: 大本のプラットフォームで結果を生成するネイティブなランタイムを使って、クエリの整合性を維持。この機能は、大本のシステムで意図された通りにビジネスロジックが実行されることを保証して、プラットフォーム間の一貫性を確保します。

Salesforce の強み: 信頼を基盤にしたオープンなエコシステム

データの未来はオープンであることと相互運用性にあり、1 つのベンダーのテクノロジーにロックインされることではない。それが Salesforce の信念です。1 つのエコシステム内でのみ有効なセマンティックレイヤーは、データの新たなサイロ状態を生み出し、この目的全体を失敗に追い込みます。今回の取り組みは、Salesforce が掲げる「オープン」の理念の自然な延長上にあり、お客様があらゆる新しい環境でビジネスロジックを絶えず再構築することを強いられずに、ニーズに最適なツールを利用する自由を得られるようにします。

市場における Salesforce の立ち位置は、この変革の推進を支える独自の強みとなります。

  • 数十年にわたって、営業、サービス、マーケティング、コマースの分野の専門知識を積み上げてきており、強力な出発点となるあらかじめ用意されたセマンティックモデルをお客様に提供して、エージェンティック AI への対応に向けた道のりを加速することができます。
  • Data Cloud や Agentforce、Tableau から、Sales Cloud、Service Cloud、Marketing Cloud などの業務アプリケーションまで、テクノロジー全体の緊密な統合により、セマンティック定義を形あるビジネス成果に結びつけることが可能。AI のトレーニングも、ユーザーのクリックだけに限らず、推奨アクションが販売や契約更新につながったかどうかにも基づいて行うことができ、分析作業の実質的な価値を示す強力なフィードバックループを生み出します。
  • Salesforce は柔軟性の実現に力を注いでいます。Salesforce Data Cloud は、データオーケストレーションレイヤーの役割を担う設計です。Snowflake、Databricks、Google、AWS などのプラットフォームへの投資が成熟したお客様は、ゼロコピー統合を通じて Salesforce のセマンティック機能を活用し続けながら、保存されたデータはそのままの状態にしておくことができます。

未来はコラボレーションにあり — お客様と共に歩む Salesforce

今後の成功を収める企業の原動力は、人間と AI の間に築かれるパートナーシップになるでしょう。このコラボレーションの成功には、現在構築が進められている確固としたオープンなセマンティック基盤が欠かせません。Salesforce は、あらゆるお客様がその基盤を構築し、信頼されるスケーラブルな AI の力を自信を持って活用できるように、パートナーとともに支援することをコミットメントとして掲げており、その表れがオープン セマンティック インターチェンジ共同構想です。

Dreamforce のエージェンティック Tableau キーノートでは、形になりつつあるこのビジョンをご紹介し、実際のインパクトについてお客様から詳しくお話を伺います。ぜひご覧ください。