バニティメトリックスは変更されることが多く、誤解を招きやすいものですが、同時に間違った理由で人の関心を惹きつけるものでもあります。恐らくバニティメトリックスという言葉を耳にしたことがあり、なぜ多くのデータアナリストが声を潜めながらこの言葉を呪っているのか疑問に思っていた方も少なくないでしょう。バニティメトリックスが何かということだけではなく、なぜこのようなデータが効果的に利用できないのかを理解することが重要です。この記事では、コンセプトとしてのバニティメトリックスを定義し、ビジネスにおけるバニティメトリックスの見極め方、およびいくつかの例と代わりとなる手段をご紹介します。

バニティメトリックスとは

バニティメトリックスとは、見栄えが良いものの、今後の戦略の参考となる形で自己のパフォーマンスを理解する上で役に立たないメトリックスのことを指します。これらのメトリックスは自己のパフォーマンスが向上しているように見せたい場合に強調したくなるものですが、アクショナブルではないものがほとんどで、意味のある形でコントロールしたり再現したりできる要素に欠けています。バニティメトリックスはアクショナブルなメトリックスと最も頻繁に比べられますが、アクショナブルなメトリックスとは意思決定に役立ち、ビジネスが目標を達成したり成長したりするのに役立つデータを指します。

ここで、メトリックスはどれでも、バニティメトリックスである可能性があるということを理解しておくことが重要です。単にそれを暗示するいくつかの兆候がたまたま見られるというだけのことです。バニティメトリックスは、表面的には見栄えが良いもののほとんど実質性がなく、うわべだけのメトリックスです。例えば、登録アカウントの合計数が 10,000 件というのは素晴らしい数字に見えますが、月々のアクティブユーザーが 100 人しかいなければ、10,000 件というデータに価値はありません。しかし、月々のアクティブユーザー数も、ユーザーが適切に分析されていなければバニティメトリックスになり得ます。

獲得した数字に誇りを持ったり、ビジネスや部署の見た目を気にしたりすること自体は間違ったことではありません。しかし、大きな数字を大幅な成長の証としても、やや興味深い見出しやプレスリリースにはなりますが、ビジネスやプロジェクトにおける重要な参考数値にはなりません。

バニティメトリックスがこれほど非難されている理由は、単純すぎて参考にならず、ニュアンスやコンテキストが考慮されておらず、誤解を招きやすく、有意義な形での改善につながらないためです。新しく作成したての Twitter アカウントに何百万人ものフォロワーがいて製品に興味を示しているようであれば、自尊心は高まりますが、フォローから製品の販売へとつながらなければフォロワーの数自体にはあまり意味がありません。

バニティメトリックスとは、基本的に見栄えはいいものの実際に何の効果もないメトリックスのことです。つまり、実質性に欠けたメトリックスです。

バニティメトリックスの見極め方: 3 つの考慮事項

一般的な考慮事項や質問に移る前に、具体的 (specific)、測定可能 (measurable)、割り当て可能 (assignable)、現実的 (realistic)、時間に関連した (time-related) KPI、略して SMART KPI について学ぶことをお勧めします。SMART の基準に従うことで、ほとんどの一般的なメトリックスの落とし穴を確実に避けることができます。

1.このメトリックスからどのようなビジネス上の意思決定ができるか ?

様々なデータから何が実際に役立ち何が単に見栄えが良いだけのデータなのか判断するのは、非常に困難なことがあります。KPI がバニティメトリックスかどうかわからない場合は、次のことを考えてみましょう。「このメトリックスはアクションに導いたり、意思決定の参考になるか?」

答えが「いいえ」や「わからない」の場合、恐らく考え直す必要があります。

スマートでアクショナブルなメトリックスは、意思決定の参考になります。そのようなメトリックスは、ビジネスの取り組みやその成果などのフィードバックを提供したりその状況を伝えたりします。特定の業界でセールスを始める際の、顧客を引き寄せるためのマーケティング戦略やセールスピッチの調整に役立ちます。トラッキングし使用するのはビジネスの改善に役立つデータのみにすることです。

例: 電子書籍のダウンロードのマーケティングランディングページについて考えてみましょう。ページビュー数はビジネス上の意思決定に役立ちませんが、ダウンロード率はページ上の表現や CTA ボタン、フォームの提出スタイルを変えてみようといったアイデアにつながるかもしれません。

2.意図的に同じ結果を再現するにはどうしたら良いか?

もう 1 つのヒントは、データ内の原因と結果を管理できるかということです。偶発的な出来事を観察しても役には立たないし、雷が 2 度同じ場所に落ちることはめったにありません。コンテンツが人気を集め高いページビュー数を獲得することは素晴らしいことですが、それを再現し成功を踏み台に成長できなければ役には立ちません。

元々そのような人気が出ることを予想していなかった場合も同じです (詳細は SMART メトリックスをご覧ください)。同じ結果を再現することができますか? 変数をコントロールできず統計的に似たメトリックスを出すプロセスを再現できなければ、そのプロセスを改善することはできません。プロセスを改善できなければそのメトリックスを改善することはできず、何の役にも立ちません。

例: ニューヨークタイムズ誌のような大手購読雑誌について考えてみましょう。時々アメリカ大統領がこの雑誌についてツイートし、その際、総購読数が急上昇します。しかし、この結果は突飛な外部要因によるもので、このような結果を確実に再現することはできません。

3.データは真実を正確に映し出しているか?

特に一部のオンライン業界では、データが操作されたりお金を払って割り増しされたりすることがよくあります。たとえば、ソーシャルメディアメトリックスは見て楽しめますが、文字通りお金を払って数字を上げることができるため、全く信頼できるデータとは言えません。実際に、$50 で 90,000 人のフォロワーを買って、2 時間ほどでインターネット有名人を作り出すことができます。つまり、このブランドのフォロワーの数はバニティメトリックスです。ただし、目的が $50 でできるだけ多くのフォロワーを買うことなら、有効なメトリックスになります。

さらに、データソースが一貫していて信頼できるものか、Google のアルゴリズムのようなサードパーティーアルゴリズムが使用されているか、コントロールできない時期的な数値の変化が起きていないかを考慮しましょう。月々のビュー数は、冬休みの間や四半期の終わりに急上昇し素晴らしく見えるものです。これらの要因は直ちにデータの有効性を否定するものではありませんが、メトリックスを使用する上で注意すべきことです。

例: ソーシャルメディアの例について考えてみましょう。2018 年 1 月、Facebook のニュースフィードアルゴリズムが根本的に変更され、ニュースフィードはローカルニュースを優先するようになりました。これにより、ローカルニュースのパブリッシャーが国際ニュースのパブリッシャーよりも重要視され、突然他のソーシャルメディアや配信チャンネルとは相反する結果となりました。

バニティメトリックスは見極めにくく、業界や個々のビジネスニーズによって異なる場合があります。メトリックスを評価する際に最も重要な質問は、ビジネスの目標達成に役立つかどうかということです。

バニティメトリックスの例

今一度、分析の内容によってどのようなメトリックスでもバニティメトリックスになり得ることを念頭に置いておいてください。その上で、以下はバニティメトリックスになりやすい最も一般的な例です。

ページビュー数

これは最も一般的な例の 1 つです。ページビュー数は表面上、「大勢の人々がサイトにアクセスしている! サイトを気に入ってくれている!」といった好印象を与えます。ページビュー数はアクショナブルなものにできたり、ビジネスの目標にどのような関連性があるかを示せれば有効なメトリックスになります。しかしページビュー数自体にはコンテキストがなく、人気であるという感覚が得られるに過ぎません。それより重要なのは、誰がアクセスしているのか、販売につながっているのかを知ることです。

代わりのメトリックス: ページビュー数の代わりに、これらのビューのクオリティと動作に注目しましょう。直帰率、ページ滞在時間、セッション数およびセッション 1 回あたりのページ数、CTA のクリックスルー率 (CTR) のような要素について考えてみましょう。ブランドの Web サイトに多くの有料トラフィックを送り込んでいる場合は、広告コスト 1 ドルあたりどれだけのトラフィックが得られているのか考えてみたり、ダイレクトトラフィックとブランドのオーガニックトラフィックに注目して、有料トラフィックを利用した結果、ブランド名で意図的に自社のページを検索する人々が増えたかを確認したりすると良いかもしれません。次のメトリックスを考慮しましょう:

  • 直帰率
  • ページ滞在時間
  • セッション数
  • ユニークユーザー数
  • セッションごとのページ数
  • 1 ユーザーの 1 カ月あたりのページ数
  • オーガニックブランド検索の増加
  • ダイレクトトラフィックの増加
  • リードあたりのコスト 対 マーケティン正規リードあたりのコスト 対 営業正規リードあたりのコスト

累計顧客数

これもまた、コンテキストのない見栄えが良いだけの数字である可能性があります。この数字は文字通り下がることがなく、ビジネスの成果に関する情報があまり得られません。このページの下に、このメトリックスの誤用の実例が記されています。

代わりのメトリックス: 顧客データのより有効な使い道は、注文 1 件につきどれだけの金額を購入しているか、そして 1 度きりの購入に対してどれだけの顧客が繰り返し注文するリピート客になっているかを分析することです。たとえば SaaS 業界では、カスタマーサブスクリプション、更新、アップグレード、トレーニングの追加購入、アカウントの拡張などが価値のあるアクショナブルなメトリックスです。次のメトリックスを考慮しましょう:

  • 注文 1 件あたりの金額
  • 注文 1 件あたりの商品数
  • 新規・リピート客の割合
  • アクティブなサブスクリプション数
  • 更新率
  • アップグレード率
  • アカウント 1 件あたりのトレーニングの売上
  • 既存のアカウントで生じた商談機会

購入またはダウンロードの累計

ソフトウェア、ゲーム、サービストライアル、アプリは特にこのメトリックスに引っかかりがちです。合計売上やダウンロード数は合計顧客数のように、その数は上がるのみです。しかし全体の情報が伝わりません。900,000 回アンインストールされているときに、ダウンロード数 100 万回という数字だけを見ても役に立ちません。

代わりのメトリックス: 完全な累計の代わりに、前年比 (YoY) または前月比 (MoM) の合計を差の割合と一緒に考えてみましょう。または、購入数やダウンロード数を数えるのではなく、消費者のアプリの利用時間とアプリを開く頻度の比較、アプリをキープしているユーザー数とアンインストールしているユーザーの数、トライアルから購入へのコンバージョン率、サブスクリプションの更新数、オーガニックダウンロード数増減率 (前年比) などの増加傾向といった、使用に関する統計に注目すると良いかもしれません。次のメトリックスを考慮しましょう:

  • 合計購入数の YoY と増減率の YoY
  • 1 ユーザーがソフトウェアを 1 回開くごとのソフトウェアの利用時間
  • アンインストール率
  • トライアルからのコンバージョン率
  • 更新率
  • アップグレード率
  • オーガニック成長率 (前年比)
  • 有料トラフィックによるトラフィック増加コスト
  • 紹介プログラムの成長
  • 時期的調整
  • 遠隔測定法と行動データ: アクティブ使用量、特定の機能の使用頻度、キーアクションの頻度など

ソーシャルメディアのフォロワー

これもまた騙されやすい統計で、ソーシャルプレゼンスのクオリティやインパクトがデータに反映されていません。これらの数字はフォロワーや「いいね」をを購入することで簡単に上げられるため、あまり意味がありません。料金を支払って Instagram で 10,000 人に「いいね」を押してもらったり、600 人の Twitter のフォロワーを獲得できるかもしれませんが、これらは滅多に販売、またはエンゲージメントさえにもつながることがありません。まれなケースで、新しいブランドが大勢のフォロワーで人気があるように見せることで本物のフォロワーを引き寄せることもありますが、それには総フォロワー数のメトリックスでフォロワーの増加が示されることが必要です。人々はお金を払わなくても「いいね」を押してくれます。「いいね」に必要なのはボタンのクリック 1 回、指でタップ、またはスクリプト化されたボット 1 つだけです。

代わりのメトリックス: 大勢のフォロワーがいると、大勢の人々が製品やサービスに興味を持っているように思えますが、トラフィックやエンゲージメント、競合他社と比較したシェア・オブ・ボイスに注目したほうが有効なメトリックスと言えます。フォロワーの何割にブランドとのインタラクションがあるでしょうか? 何人がサイトにアクセスして顧客になっているでしょうか? フォロワーをタイトルで分けたり、さらにはそれぞれの影響力が強い少数の非常に忠実なフォロワーに集中すると良いかもしれません。次のメトリックスを考慮しましょう:

  • ソーシャルからのセッション数
  • クリックスルー率
  • 投稿 1 件あたり、またはフォロワー 1 人あたりエンゲージメント
  • 競合他社と比較したシェア・オブ・ボイス
  • センチメント分析
  • VIP フォロワーによる投稿とシェア

バニティメトリックスの実例

エンターテイメントメディアとハードウェアマーケティングは、バニティメトリックによる誇大広告で溢れています。典型的な 2016 年の例では、Microsoft 社が頻繁に利用されているバニティメトリックスであるコンソールハードウェアの売上を公表しないこと発表しました。Xbox の累計売上を報告する代わりに、Microsoft 社は Xbox Live サービスの月々のアクティブユーザー数を公表しました。

Xbox の Phil Spencer 氏はこの変更に関して、次のように語りました。「コンソール販売の良いところは、コンソールのインストール数が常に上がっていくことです。しかし、それはエコシステムの健全さが実際に反映されているわけではありません。弊社では月々のアクティブユーザーベースに注目しています。その理由は、この数値は弊社のコンテンツやゲーム、プラットフォーム、サービスを意図的にお選びいただいたお客様の人数を示しているためです。お客様の満足度やエンゲージメントで成功度を測りたいと考えたのです。」

この場合のバニティメトリックスは、コンソールの売上の累計でした。この数字は下がることがなく成功を正確に示すことができず、また、より利益が高い定期的なサービスサブスクリプションの売上ではなく 1 度きりのハードウェアの売上に関連したものです。この変更の前は、バニティメトリックスにより、熱心な新規ユーザーによる売上が、使われず部屋の隅でほこりをかぶっている Xbox の売上と同じようにカウントされていました。アクティブなサブスクリプション数のような不安定なデータの報告はリスクが高いように思われますが、このメトリックスは遥かに実質的でサービスの人気と継続性をより正確に反映しています。

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