既存のレポートが古くて使いものにならない、Excel での資料作成にうんざりしている、やっと資料ができてもすでに古い内容になっていてビジネスに役立たない、といったことを経験したことはありますか?

このような問題に直面した場合、企業として取れる 1 つの解決策はレポーティングのための BI (ビジネスインテリジェンス) システムを更改することです。さて、BI 製品はどのように評価したら良いのか? 価格が安いこと、セルフサービスであること、深い分析ができること、使いやすさなど様々な評価ポイントがありますが、その中で見落としてはいけないのが「定型レポートとアドホック分析*1 (非定形分析) 間のフローがサイクルとしてスムーズに回ること」です。

「定型レポートとアドホック分析間のフローがサイクルとして回ること」と言葉だけ聞いても、きっとイメージがわかないことでしょう。まずは、定型レポートとアドホック分析間のフローが回っていない状態について解説します。

トラディショナル BI における定型レポートとアドホック分析間のフロー

定型レポートとアドホック分析のフローは、トラディショナル BI*2 では回すことが難しいと言われています。これはどうしてでしょうか。トラディショナル BI では、定型レポートを通したデータ利用が、次のようなフローで行われます。
トラディショナルBIにおける定型レポートとアドホック分析間のフロー

  1. 質問発生~データ取得まで
    定型レポートで答えきれない質問が発生。ここからデータの出力依頼、依頼の優先順位付け、データの抽出処理、更に前処理、整形などを経て、やっと分析するデータが取得できる。
  2. アドホック分析
    データ出力の依頼をしてデータを取得した実務担当者は、ここでやっとアドホック分析に着手する。表計算ソフトを使うが、1 つの質問の答えを見つけるのに数十分から数時間がかかる。
  3. 分析結果の社内共有~再度のデータ出力依頼まで
    一連の作業が終わると、発表用に分析結果の体裁を整えて、社内会議などで共有する。ただし、事前に準備していた分析軸以外での質問があると、再度データ出力依頼をするところからやり直しとなる。
  4. 作業が定型化してきたとしても自動化ができない
    とても良いインサイトが分析から得られることがあると、定期的に同じ分析をしようとする。同じ作業が何度も繰り返すことになるので、この作業の自動化と定型レポートへの反映が必要になるが、レポートシステムに柔軟性がなくできないことが多い。

定型レポートとアドホック分析間のサイクルが回らない事による 3 つの問題

トラディショナル BI における定型レポートとアドホック分析間のフローにはいくつもの問題がありますが、筆者は下記の 3 つに集約されるものと考えています。

  • コスト
    分析のサイクルを回すのに、毎回莫大な人的、時間的コストがかかること。
  • インサイトの使い捨て
    アドホック分析で得たインサイトの再利用ができず使い捨てになること。定型レポートの変更が難しく、いつまでも古いままであること。
  • 資料作成が目的になってしまう
    Excel の作業の目的が分析ではなく資料作成になってしまうこと。つまり肝心のインサイトが得られなくなってしまうこと。

次に、Tableau Server や Tableau Online などのモダン BI*2 における定型ダッシュボードとアドホック分析の関係を見てみましょう。

Tableau における定型ダッシュボードとアドホック分析間のフロー

Tableauにおける定型ダッシュボードとアドホック分析間のフロー

  1. 質問発生からそのままアドホック分析へ
    Tableau Server/Online 上の定型ダッシュボードで答えられない質問や仮説があった場合は、そのまま Web ブラウザ上でダッシュボードを編集し分析を実行。この変更には複雑で時間のかかるプロセスが必要ない。場合によっては Tableau Desktop で更に高度な分析をすることもできる。
  2. 得られたインサイトはそのまま共有
    分析によってインサイトが得られたら、そのまま Tableau Server/Online にワークブックをパブリッシュすることができる。パブリッシュしたワークブックは場所と時間を選ばず参照可能。もし、そのワークブックが有用で、多くの人から何度も参照されている場合、そのまま定型ダッシュボードとして利用することも可能。

定型レポートとアドホック分析間のサイクルがスムーズに回る事による 3 つのメリット

Tableau では、定型部分とアドホック部分の境目が限りなく近づいています。このプロセスについてまとめると、下記のようなメリットがあります。

  • 資料作成ではなく、分析本来の作業に集中できる
    アドホック分析の中で定型化してきた部分は人的、時間的コストなしに定型ダッシュボードに反映ができ、アドホック部分では肝心の分析に集中し続けることができること。
  • 分析効率は 10 ~ 100 倍
    質問や仮説への答えを得るスピードがトラディショナル BI のプロセスに比べて 10 ~ 100 倍になる。
  • アドホック分析の効果で、ダッシュボードの新陳代謝が続く
    よくできた定型ダッシュボードは、わかりやすいだけでなくより深い質問を引き出し、より深い質問から得られたインサイトは更に定型ダッシュボードの質を高める。

まとめ

今回は「定型レポートとアドホック分析間のフローがサイクルとして回ること」がどういうことなのか、そのメリットと併せてご紹介しました。多くの企業は BI を導入して完璧なレポートを開発することでデータ活用を進めようとしていますが、すべての疑問、仮説、ビジネス課題に必要なタイミングで答えられる完璧なレポートはこの世に存在しません。定型レポートとアドホック分析間のサイクルが大きな負担なしにクイックに回る状態こそが、データ活用の目指すべき姿なのです。

その他、どのような基準でモダン BI を選択するべきかについての考察を与えてくれる下記のリソースも併せて御覧ください。

脚注

*1「アドホック分析」とは、定型レポートには含まれないような情報を得るために、その情報を必要とする人が必要となったときに自分たちで行うデータ分析のこと。「必要性が生じたときに特別に行う、場合に応じて行う」といった意味を持つ英単語「ad-hoc」に由来。

*2「トラディショナル BI」とは従来型のビジネスインテリジェンスのこと。最近、多くの企業に導入されるようになったモダン BI に対応して、こう呼ばれるようになった。

*3「モダン BI」とは、ビジュアライゼーションやセルフサービス分析を多用したビジネスインテリジェンスのこと。データ分析を行うのが一部の人に限られていた従来型の BI と異なり、細かなデータガバナンスを可能にするプラットフォーム上でデータ分析環境を提供するモダン BI は、企業全体でのデータ利用が可能になる。

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