データ可視化・分析作業の効率化で年間2,000時間削減|株式会社クレディセゾン


ダッシュボードを10部門以上で展開、年間約2,000時間の業務削減効果

導入の背景

データ活用の効率化と全社への拡大を目指し専門チームを新設

株式会社クレディセゾンは、1982 年にクレジットカードの発行を開始して以来、セゾンカウンターでの即与信・即発行や永久不滅ポイントなど、従来の常識を打ち破るサービスを次々に生み出し、カード業界を牽引してきました。さらに近年は、業態そのものについても、既成のファイナンスカンパニーの枠にとらわれず、総合生活サービスグループへの転換を図っており、リアルとデジタルの融合によってカスタマーサクセスを実現することを行動指針としています。

そうした取り組みの一環として、社長を筆頭とする同社の経営層は、データ活用の推進をトップダウンで指示。データドリブン経営を実現するためのチームとして、2021 年に DX データ分析チームを立ち上げました。テクノロジーセンター 係長の原田祐里氏は、それ以前の同社におけるデータの活用状況についてこう振り返ります。

「社内にデータを専門に扱うチームはなく、各部署の担当者が独学で Excelや Access を使ってデータの可視化や簡単な分析を行っており、データ活用のナレッジが社内で共有されることはありませんでした。他社の BI ツールを一部導入した部署もありましたが、全社として推進していたわけではなく、各部署での個別利用に留まっていました」(原田氏)

社内にはデータ抽出システムは導入されていたものの、抽出後のデータの加工や可視化は手作業で行われていました。そうした状況下でのデータ活用には多大な手間と時間がかかった、と同部テクノロジーセンターの関谷朋美氏は話します。

「データが各部署に点在し、その定義も部署ごとにバラバラでした。そのため、たとえば全社的な経営数値のレポートを作ろうとすると、必要なデータをどの部署の誰から得られるかがすぐにはわからず、また定義を統一するのも大変で、ビジネスのスピードに合わせるのは困難でした」(関谷氏)

そうした中で新設された同部テクノロジーセンターは、DX 開発チーム・データ可視化チーム・データ分析チームに分かれて活動を開始しました。そして、全社で利用してデータ活用を推進するための BI ツールとして、Tableau の導入を決定したのです。

Tableau の導入・運用環境について

影響力のあるダッシュボードと手厚い教育体制で Tableau の利用を促進

導入当初、同社には Tableau のスキルを保有するメンバーがいませんでした。そこで、原田氏や関谷氏らデータ可視化チームの 6 名のメンバーは、書籍やオンライン学習動画、チーム内での勉強会などを通じ、ほぼ独学で Tableau のスキルを身につけていきました。

そのような約 2 か月の学習期間を経て、データ可視化チームは実際にダッシュボードの作成を開始。半年後に社内への共有を始めたところ、大きな反響があったといいます。

「最初にリリースしたのは、全社的によく使われる、ペイメント事業に関する主要な営業数値と提携先商業施設のダッシュボードです。社内への影響の大きいダッシュボードを構築するのは大変でしたが、結果的に Tableauの 認知度が一気に高まり、『 Tableau を使いたい』という声がたくさん寄せられるようになりました」(原田氏)

ちょうどその頃、DATA Saber の資格を持つ稲垣千江子氏が中途入社し、データ可視化チームに加入。Tableau の利用に対する社内の機運が高まり、また推進側にスキルを有するメンバーが揃ってきたことを踏まえ、同部は社内の人材の育成とさらなる普及という次のステップへと進みます。

同部はまず、社内の誰でも Tableau について学べる学習ツール「 Tableau skillbelt 」を作成。その上で、「事業部専任デジタル人材」という独自の教育制度を開始しました。各部署から集められた人材が週2回、データ可視化チームのメンバーを講師として、実際の業務課題に応じたダッシュボードを構築するなど、1日かけて Tableau の学習に専念するという取り組みです。

並行して同部は、「デジタル認定制度」を制定しました。Tableau のスキルを身につけたい社員を募集し、半年間、教育コンテンツや相談会、Viz コンテストなどの学習環境を提供します。そして、最終的にはマネージャーへのプレゼンテーションを通じてデジタル人材として認定される制度です。さらに、ここから選出された社員は、社内 Viz コンテストで経営層に向けて自部署の課題をプレゼンテーションするイベントを行う予定もあり、こうして業務に即した作成スキルが評価される機会が設けられています。

「2024 年 3 月に第 1 期生 38 名がデジタル人材として、それぞれの部署でダッシュボードを構築したり、Tableau を普及させたりする人材として活躍し始める予定です。受講生から『見たいデータを簡単にビジュアライズできるようになって楽しい』という声が上がっているのはもちろん、今までデータ活用にあまり興味のなかった上司からも『こんなことができるんだ、もっと活用していこう』という反響がたくさんありました。今は第 2 期の計画を進めています」(稲垣氏)

社内への影響の大きいダッシュボードを構築するのは大変でしたが、結果的に Tableauの認知度が一気に高まり、『 Tableau を使いたい』という声がたくさん寄せられるようになりました。

Tableau の導入効果について

ダッシュボードを 10 部門以上で展開、年間約 2,000 時間の業務削減効果

そうした人材育成・普及活動の結果、同社では現在、10 部門以上、約 870 名に利用される40 以上のダッシュボードが構築されています。たとえば、前出のペイメント事業に関する営業数値のダッシュボードでは、新規の契約数やカード発行数、カード利用の件数・金額などがリアルタイムに可視化されています。

「従来はそうした数値を手作業で集計していたので、経営層や営業部門から最新の数値を出すよう求められても、実績の作成に時間がかかってしまいました。今は、Tableau Prep によるデータの抽出・加工から Tableau Server へのデータ更新までが自動化されたおかげで、日次で提示できるようになりました。それによって、カード発行数や利用件数が落ちるなどの異常を早期に発見することが可能となりました」(関谷氏)

さらに同社では、Tableau と Slack を連携活用し、業務改善につなげています。基本的な使い方は、Tableau Server 上でメンションをつけてコメントすると、相手の Slack に通知される、というもの。加えて、各営業数値が事前の設定範囲を超える変化を示した場合、Slack のアラート機能によって、その情報がデータ分析チームに自動通知されます。どの営業・マーケティング施策が成果を挙げたかなど、変化の原因をいち早く突き止め、次の打ち手につなげるためです。

「ほかにも、たとえば人事部では、3 名のデジタル人材が中心となり、従来 Excel で管理していた勤怠情報を可視化するダッシュボードを構築しています。また、ファイナンス事業部においても、リースや信用保証、家賃保証などに関するダッシュボードを着々と作成し、活用を進めています」(稲垣氏)

そうした数多くのダッシュボードを構築・活用することによって、従来、データの抽出から加工、可視化、レポート作成までに費やされていた業務時間は大幅に削減されました。前出の提携先商業施設のダッシュボード 1 つをとっても、年間約 2,000 時間という莫大な削減効果を生み出しているのです。

カード発行数や利用件数が落ちるなどの異常を早期に発見して迅速に対策を講じたり、商談の場でデータを見てタイムリーに施策を提案したりすることが可能となり、実際に営業成績も上がっています。

今後の展開について

データ活用に対する経営層の理解が短期間での変革実現の原動力に

同社における Tableau の活用は今も進化し続けています。その代表例が、これまで社内でのみ利用してきた提携先商業施設のダッシュボードを、Tableau Embedded による埋め込み分析の可能なものとして再構築し、提携先に提供するという取り組みで、2024 年 4~5 月のリリースを予定しています。

内製によるサーバの構築からデジタル人材の育成、複数部門への Tableau の展開までをわずか 2 年余りで成し遂げた同社。4,000 名近い従業員を擁する大企業でありながら、なぜそのような短期間での変革が可能だったのでしょうか。原田氏は次のように分析します。

「やはり社長をはじめとする経営層が、もともとデータ活用に対して理解を示していたのが大きいと感じています。社長はダッシュボードの閲覧ランキングにいつも入っていますし、初めてダッシュボードをリリースしたときには、自ら全役員に使い方を説明するなど、率先して Tableau の全社展開を推進してくれました。また、それに対する役員の反応も『自分の事業部にも Tableau を導入したい』と非常に前向きでした。経営会議をおこなう役員会議室には従来、各部門の数値をまとめた Excel を大きな紙に印刷して掲示し、月 1 回張り替えていたのですが、今は Tableau のダッシュボードをモニターに映すようになりました」(原田氏)

そのように、全社を挙げてデータ活用を推進していく姿勢が、短期間で大きな成果を生み出す原動力となっているのです。

 

今までデータ活用にあまり興味のなかった上司からも『 Tableau を使うとこんなことができるんだ、もっと活用していこう』という反響がたくさんありました。

※ 本事例は 2024 年 3 月時点の情報です

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