Mizuho Bank

従来のデータ分析の限界を突破するため Tableau 活用へ


内製化によるコスト削減効果とアジャイル開発の実現

DX がもたらした迅速な意思決定

グローバルトランザクション営業部の推進メンバー(左から前田氏・コ氏・村松氏・出馬氏・中野氏)

導入の背景

個人、中堅中小企業、大企業、金融・公共法人ならびに海外の日系・非日系企業を主要なお客さまとし、銀行業務、その他の金融サービスに係る事業を行っている株式会社みずほ銀行。そのうち、海外トランザクションバンキングに関わる企画業務を担当しているのが、グローバルトランザクション営業部業務管理チームです。

「グローバルトランザクションバンキング営業においては、みずほ銀行全体でどれだけの資金をグローバルで動かしているのかに加え、個々のお客様におけるみずほ銀行の取引データを可視化し、お客様のキャッシュフロー状況をしっかり把握した上で、ご提案をしていかなければなりません。」と語るのは、前田宜亮氏。そのために分析すべきデータ量は膨大であり、1 か月あたり数百万件に上ることが珍しくないのだと述べます。

「以前は各種サーバーからデータを CSV でダウンロードし、データベース製品に取り込んで分析していました。」と言うのは、業務管理チーム 調査役 村松詩織 氏。相当な時間がかかる集計作業が毎月、数十回発生していたと振り返ります。「しかも一度に扱えるデータ量に上限があり、その上限を超えないためにレポートの目的に応じて事前集計を行う必要もありました」。このままでは限界があると感じた村松氏が、解決策として選んだのが Tableau でした。まず 2018 年 4 月に Tableau Desktop の利用を開始。その効果を組織全体に広げるため、プロジェクト化の提案書を作成し、前田氏にプレゼンテーションを行います。

当時のことを前田氏は「プレゼンテーションの内容ももちろんですが、その想いの強さに圧倒されました。」と振り返ります。「実はこの頃、アジア地域における競争力強化の方策が検討されていました。村松さんの提案はこれに大きな貢献を果たすと判断し、プロジェクト開始にゴーサインを出すことにしました」。

Tableau の導入・運用環境について

プロジェクト化が決定したのは 2019 年 10 月。村松氏と同じく業務管理チーム 調査役 出馬展子氏と共に、プロジェクトを進めていきました。さらに 2020 年 7 月には、業務管理チームのコアラ氏が主要メンバーとして参加。2020 年 8 月には、主に東京の本部部署向けに企画分析機能を提供する、第一次本番リリースを行っています。

システム構成について、出馬氏は次のように説明します。

「当社 IT 部門が包括契約を結んで管理している AWS を利用し、Tableau Desktop や Prep、Tableau Server を稼働できる環境を構築しています。ETL(Extract/Transform/Load)は、重要であったり、複雑な処理が必要なデータは外部委託、それ以外のデータは Tableau Prep を使ってユーザー自身で処理を行っています。」

このような環境を構築する一方で、行内ユーザー拡大に向けた啓蒙活動も積極的に展開しています。「ユーザー教育だけではなく、組織全体をデータドリブンにしていくことを目指し、Tableau のカスタマーサクセスチームからご紹介いただいた Tableau Blueprint に独自の要素を加えロードマップを策定しました。」と村松氏。「ロードマップに基づき、国内外で先行して Tableau を活用できる人材を発掘し、Tableau が主催する公式トレーニングプログラムを受講してもらう、といった取り組みも進めています。」

同じ部だけではなく関係部等幅広い業務分野の担当者への啓蒙・周知に取り組んだ結果、Tableau のユーザー数は約 300 名にまで増加。また人材発掘のためのトレーニングにも、すでに 15 名が参加しています。

Tableau の良さは、1 つ目は、データ抽出・加工が簡単かつ迅速に行えること。2 つ目は、Web プログラムを書いて実現していた機能をダッシュボード内で簡単に具現化できること。3 つ目は、ダッシュボードを簡単かつきめ細かな条件で配信できることです。

Tableau 選定の理由について

それではなぜ村松氏は、データ分析基盤として Tableau を選択したのでしょうか。大きく 3 つの理由があると説明します。

第 1 は、1 レコード当たりの情報量が多く、取り扱いが難しいキャッシュフローデータを可視化するための高度なビジュアル表現が可能なことです。「キャッシュフローの状況を把握するには、集計データからドリルダウンして詳細状況を確認し、再び集計データに戻るといった動的なビジュアル化が必要です。Tableau ならこれをマウスクリック 1 つで行うことができ、例えば地域別の資金の動きを地図上に表示することなども可能です」。

第 2 はデータ更新アラート機能が用意されていることです。データが更新されたタイミングでユーザーに通知メールを送ることで、「取引先のデータが営業担当のユーザー自身の手元に直接届く」というイメージでのデータ活用を実現しやすくなるのだと村松氏は言います。

そして第 3 が、継続的に変化するユーザーニーズに対し、アジャイルな開発が可能なことです。コアラ氏は「ユーザーの要望に応じたダッシュボードの開発や改善などを担当していますが、作ったものをすぐにユーザーに見てもらい、その場で自由自在に変えられますので、ユーザーのフィードバックにスピーディーに応えられます」と言います。すでに業務管理チーム全体で 100 以上のダッシュボードが作られていますが、その中には毎日のように改善されているものもあるとのことです。

Tableau の導入効果について

グローバルトランザクション営業部では自社プラットフォームに BI ツールとして Tableau を導入したことで、次のような効果が得られています。

1.内製化によるコスト削減効果とアジャイル開発の実現

ダッシュボード作成の多くを内製化に伴い、これまで外部に委託していたコスト等の削減が図れました。また開発スピードも格段に高速化しています。トレーニング後実務でハンズオンを積めば、非 IT 人材でもダッシュボード開発は可能だと考えています。

2.DX がもたらした迅速な意思決定

導入後 1 年で 100 を超えるダッシュボードが作成されていますが、そのうち 8 割は、以前は可視化できなかった内容です。マクロ視点とミクロ視点を行き来した分析も可能で、企画担当者・営業担当者それぞれが、迅速な意思決定に役立てています。

3.データドリブンの進化による働き方や顧客提案のレベルアップ

以前は数か月かかっていたデータ分析が、数日から数週間単位と極めてスピーディーかつ高いクオリティで行えるようになりました。またアラート機能により営業担当者のアクションを促し、顧客訪問前に Tableau で顧客情報を確認しセールスの糸口を見つける、といったことも容易になっています。

Tableau で今後はグローバルに海外営業担当者の支援だけでなく、経営層の戦略立案にも繋がるダッシュボードを作っていきたいです。

今後の展開について

このような一連の取り組みは、みずほグループ全体でも高く評価されています。株式会社みずほフィナンシャルグループセキュリティ&データマネジメント部 調査役 平野雄一氏は、次のように述べます。

「グローバルトランザクション営業部における Tableau 活用は、銀行のビジネス部門のニーズとツールの利点がフィットした好事例と捉えています。当部ではデータに係る課題解決をサポートし、傘下子会社のビジネス施策推進を支援する態勢整備を進めていますが、このような取り組みを通じて、ビジネス部門が様々なツールから目的にフィットしたものを活用出来るようサポートをしていきたいと考えています」。

2021 年度以降、利用できる海外拠点の拡大や営業サポート機能の追加が計画されています。「目指しているのは、グローバルな連携を促進することです。最終的には世界中で同じデータを見ることができる共通プラットフォームにしていきたいと考えています」(村松氏)。