NTT Docomo

必要なのは思考を止めないデータ活用。全社規模のデータドリブン経営を目指す


データをしっかり見て判断するという文化が定着

サービス拡大や働き方改革に大きな貢献

携帯電話サービスを提供するだけにとどまらず、dポイントクラブを中心に多様なサービスも展開している株式会社NTTドコモ。ここでは顧客をより深く理解するため、2017年3月に新たなデータ活用基盤が整備された。そのフロントエンドとして重要な役割を果たしているのが Tableauである。それではなぜTableauでデータ活用基盤を刷新したのか。そしてこれによってどのような効果が得られているのか。同社 執行役員でデータ活用推進のキーパーソンでもある長谷川卓氏に話を伺った。

たとえ膨大なデータを高速処理できたとしても、レポート作成者が介在するような従来型のBIのままでは、ユーザーはデータを使いたいと思いません。またユーザー自らがデータベースにアクセスできる環境を提供しても、煩雑で難しい操作が必要であれば、限られたユーザーしか利用できないことになります。ユーザー自身で完結したデータ活用を社内全体に広げていくには、ユーザーが使いたくなるツールを、使いたくなるレスポンスで提供する必要がある。これを可能にしたのがTableauなのです

ユーザーが使いたくなるツールを使いたくなるレスポンスで提供したい

顧客をより深く理解するために、データを積極的に活用する。このような「データドリブン」経営の実現に向けた取り組みを推進している企業が、最近では急増しつつある。これをすでに大規模な形で実現しているのが、株式会社NTTドコモ(以下NTTドコモ)だ。
 
「当社は代理店であるドコモショップ経由で販売を行っているため、お客様と直接コンタクトする機会が非常に限られています」。このように語るのは、NTT ドコモ 執行役員で情報システム部長を務める長谷川 卓氏。そのため、顧客を理解するにはデータ活用が不可欠だという想いを、長年にわたって抱いていたと言う。「すでに社内には25年にわたり、お客様に関する膨大なデータが蓄積されていました。お客様一人ひとりが『いつ』『どのチャネルで』『何を注文したのか』という『つぶつぶのデータ』が、すでに手元に存在していたのです。これらをすべて集約し可視化できれば、どの商品やチャネルにどのような問題があるのか、お客様はどのようなサービスを求めているのかがわかるはず。これこそがデータドリブン経営の基本なのだと考えてきました」。

このようなデータドリブン経営に向けた取り組みを、NTTドコモは20年以上前から進めてきたと長谷川氏。しかし当時は様々な壁があり、思うような形で実現することは困難だったと振り返る。この状況を打破する転機になったのが、2017年3月に行われたインメモリデータベースSAP HANAの導入だった。これによって膨大なデータを集約し、圧倒的なスピードで検索できるようになったのである。 しかし高速検索だけではデータドリブン経営は実現できない。検索したデータ群を可視化し、そこからインサイト(洞察)を抽出する仕組みも不可欠だ。そのためにSAP HANAと一緒に導入されたのがTableauだったのである。

 「たとえ膨大なデータを高速処理できたとしても、レポート作成者が介在するような従来型のBIのままでは、ユーザーはデータを使いたいと思いません。またユーザー自らがデータベースにアクセスできる環境を提供しても、煩雑で難しい操作が必要であれば、限られたユーザーしか利用できないことになります。ユーザー自身で完結したデータ活用を社内全体に広げていくには、ユーザーが使いたくなるツールを、使いたくなるレスポンスで提供する必要がある。これを可能にしたのがTableauなのです」。

Tableauの素晴らしさはその表現力。社員の探究心やモチベーションも向上

NTT ドコモが保有するサーバー数は約6,000台。これらの上で動くシステムには、約62ペタバイトという膨大なトランザクションデータが存在する。これらをSAP HANAに集約し、リアルタイムデータ分析が可能な基盤を確立。さらにTableauを社内展開し、まずはセールスチーム約1,800名が活用できる環境を整備した。その後、ユーザー層を経営企画部門や財務部門、サービス開発部門にも拡大。現在(2019年10月)の月間ユニークユーザー数は、11,000名を超えていると言う。

ユーザー教育の推進では、Tableau社と連携した「Ambassador Academy」を設置。ここでBIツールを用いたデータ分析と人材育成が可能な中核人材「アンバサダー」を養成し、各支社における推進役とすることで、エンドユーザーの裾野を拡大していった。その背景には「会社全体がデータドリブンにならなければ意味がない」という考え方がある。この規模でAmbassador Academyを運営しているのは、国内では例がない。

「Tableauを導入してまだ2年程度ですが、データをしっかり見て判断するという文化が定着しつつあると感じています。データ活用のハードルが下がり、そのスピードも飛躍的に向上したからです。これに伴い業務プロセスも早く回るようになりました。もう Tableauのある日常が当たり前になっており、それ以前にどのようなやり方で仕事をしていたのか、すぐには思い出せないくらいです」。

以前は幹部会議を開催する前に、スタッフが朝6時に出社してデータ抽出後、EXCELでグラフを作成して資料を作成する必要があったが、この作業も不要になった。会議で使えるデータの鮮度も高くなっている。手元の端末でTableauのダッシュボードを表示すれば、その日の朝のデータを見ることができるからだ。

「実際にTableauを使って素晴らしいと感じているのは、その表現力です。直感的な操作を行うだけで、見たいデータを見たい形で表示してくれます。また表示スピードも速いので、思考を止めることなく次々にデータを見ることも可能。データを自由自在に使えることの凄さを、日々実感しています」。

鮮度の高いデータをすぐに活用できるようになれば、仮説検証のサイクルも高速化する。データを見て仮説を立て、その仮説に基づく施策を立案し、それを実行した結果をデータで確認し次の仮説を立てる、といったことがスピーディに行えるのだ。このようなことを思考を止めずに行えることで、社員の探究心やモチベーションも高まっていると長谷川氏は言う。

「Tableauの導入によって、以前は困難だった『セルフBI』が実現可能になりました。ユーザー自らが自分のダッシュボードを作れる環境も提供しています。これによってこれまで必要だった資料作成業務が不要になり、年間数十億円に上るコスト削減につながっています。当初はTableau活用をトップダウンで進めていましたが、このような効果を知った社員が自ら『使いたい』というようになりました。成功事例がユーザーを増やし、新しいユーザーがさらに成功事例を生み出すという、好循環が生まれています」。

サービス拡大や働き方改革に大きな貢献。最終的には全社員による活用を目指す

それではTableauを活用したセルフBIによって、ビジネス面ではどのような成果が期待されているのか。その1つとして長谷川氏が挙げるのが、dポイントを核とした顧客との関係性の強化である。

「携帯電話事業はすでに飽和状態になっており、今後人口減少と共に市場も先細りしてきます。そこで重要になるのが、携帯電話以外のサービスを提供することで、お客様とのつながりを広げていくことです。dポイントクラブの会員になっていただければ、たとえNTTドコモの携帯電話サービスを使わなくなっても、dマガジンやdショッピング、dトラベルなどのサービスを使っていただける可能性があります。これらのサービスでお客様との接点をデジタル化することで、さらにお客様を理解するためのデータが収集できます。これを Tableauで可視化し、お客様をより深く理解したサービスを提供することで、これからも成長し続けることが可能になるでしょう。5Gの時代が到来しデジタルツインのビジネス展開が本格化していけば、このようなデータ活用基盤の重要性はさらに高まるはずです」。

またデータ活用の拡大は、働き方改革にも大きな貢献を果たすとも指摘する。

「すでに人事部門では、労務管理ダッシュボードを作成し、これまで手作業で集計・表作成していた労務管理業務を自動化し始めています。これによって人事総括業務を効率化しながら、過重労働や負荷のばらつきを早期に発見できるようになりました」。

今後は RPAやAIとの連携も進めていく方針だ。これによって限られた人のパワーを、より本質的な仕事に集中できるようになるからである。例えばAIによってダッシュボードをユーザー毎に自動カスタマイズし、その見方をアドバイスする、といった使い方などが想定されていると言う。

その一方でユーザー数も、前述のように全社規模でのデータドリブン経営の実現が目指されているのだ。これに対応するため、データ活用基盤の増強も進めているという。

「企業全体がデータドリブン型になるためには、まず活用可能な形でデータを整備することが必要です」と長谷川氏。現在も多くの企業がこの段階で苦労しているが、本当に重要なのはその次の段階、つまりデータをどのように見せるかなのだと語る。

「Tableauのようなツールでこの仕組みを作り上げると共に、強力なリーダーシップで企業文化を変えていこうという熱意も必要です。企業文化が自然に変わるということはありえません。しかしいったん動きが始まり成果を共有できるようになれば、その後はポジティブフィードバックが働き、加速しながら全社へと広がっていくでしょう。当社にもまだ数多くの課題はありますが、データドリブン経営の実現に向け、今後も積極的な取り組みを進めていきたいと考えています」。