学校法人 玉川学園

中学 3 年生の特別授業で Tableau によるデータ可視化を体験|学校法人 玉川学園


「数字に騙されない」統計的思考力を K-12の課程で培う

導入の背景

統計的思考力を高めるツールとして Tableau を選択

「全人教育」を教育理念の中心に据え、そのための 12 の教育信条の 1 つに「自学自律」を掲げている玉川学園。2008 年には授業『学びの技』を開始し、生徒たちのラーニングスキルを高める取り組みを、積極的に推進しています。

「玉川学園では中学高校で、探究型学習である授業『自由研究』を行っていますが、『学びの技』は高校の『自由研究』の準備として、9 年生(中学 3 年生)が探究の手段をより深く学ぶために行っています」。このように『学びの技』について説明するのは、玉川学園 アカデミックサポートセンターでセンター長を務める伊部 敏之氏。生徒自らが興味のあるテーマを決め、それに関する情報収集、正しい情報の選別、分析、考察を行い、ポスターセッションによる中間発表や論文作成まで実施しているのだと言います。「これによって 9 年生は、10 年生から始まる『自由研究』に必要な様々な技(スキル)を身につけていくのです」。

その『学びの技』のまとめの段階で行われているのが、統計とデータサイエンスの基礎を学ぶ授業です。データ分析・可視化ツールとして Tableau を活用し、データのグラフ化などを行うことで、統計リテラシーを高めているのです。

「海外と比較すると、日本は統計的思考力を育む授業の機会が不足しており、グラフとして表現されたデータを正しく読み取れない社会人も、決して少なくありません」と伊部氏。数字に騙されない社会人を増やしていくには、批判的・論理的な思考力はもちろんのこと、統計的思考力の育成も K-12 で実施すべきだと語ります。「そのためには小中学校の段階から様々なグラフに触れさせ、グラフを正しく読み取る学習を行う必要があると考えています」。そのためのツールとして Tableau を選んだ理由については、次のように説明します。

「Tableau はプレゼンにも十分に使える美しく見やすいグラフを、簡単な操作ですぐに作ることができるからです。もちろん Excel でも、データの範囲指定をすればグラフは作成できるのですが、プレゼンに耐えるものを作成するには様々な操作を行う必要があり、時間もかかってしまいます。生徒にグラフの読み取り方を学んでもらうには、このような操作を最小限にすべきだと考えました。これに加え、様々なデータソースからデータを取り込めることや、アカデミック版が無償提供されていることも、採用を後押ししました」。

Tableau の導入・運用環境について

実際にグラフを作成した上でデータの読み方を深掘り

Tableau を活用した学習が始まったのは 2021 年度。『学びの技』では 1 月下旬に論文を提出しますが、その後に 2 コマの特別授業として、「探究と“統計・データサイエンス”」という授業を実施しています。その具体的な内容は、以下の 5 つのステップで構成されています。

  1. グラフの活用
  2. BI ツールについて
  3. Tableau 実習
  4. データの不思議な関係
  5. 10 年生から始まる『自由研究』について

まず『グラフの活用』では、グラフ化の 2 つの目的を理解してもらった上で、グラフ作成の方法を手書きも含め、幅広く説明。次にデータをグラフ化する手段として BI ツールについて学習し、実際に Excel と Tableau でのグラフ作成の方法を比較した上で、生徒自身にどちらのツールを使いたいのかを尋ねます。ここで生徒全員が Tableau を使う意義を理解した後、Tableau によるグラフ作成の実習へ。2021 年度はオンラインでしたが、2022 年度は教室での対面で Tableau を操作しながらグラフを作成、生徒たちは歓声を上げながら実習に取り組んでいたと言います。

ここで興味深いのは、Excel と Tableau を実際に比較した結果、生徒全員が Tableau を選択した、という事実。その理由について伊部氏は「Excel ではグラフ作成のために複数の工程が必要ですが、Tableau はわずか 2~3 秒できれいなグラフが作成されます。最近の若者はタイパ(タイムパフォーマンス)重視なので、データのグラフ化でも早く結論が知りたいのではないでしょうか」と説明します。

Tableau を使った実習の後は、グラフの正しい読み取り方について深掘りし、複数のデータ間の相関関係の見つけ方や、相関関係と因果関係の違いなどを理解していきます。そして最後に、10 年生(高校 1 年生)から始まる『自由研究』について簡単に紹介。「今後の『自由研究』でも Tableau  をどんどん使ってほしい」と伝え、生徒を高等部に送り出しているのです。

「ここで特に意識しているのは、数値や文字が羅列されているだけのデータから、データの特徴を発見することの面白さを感じてもらうことです。この面白さをストレートに伝えていくには、思考を止めずグラフ化に手間がかからない Tableau の活用が有効だと考えています」。

 

玉川学園 Tableau活用イメージ1

 

Tableau の導入効果について

探究に必要な分析や意思決定において、グラフ利活用の重要性を理解した上で高校に進学

Tableau 採用時の狙い通り、グラフ化の時間を大幅に短縮したことで、分析や考察に使える時間をしっかり確保できるようになりました。前述のように、データのグラフ化に必要な操作時間はわずか 2~3 秒程度。グラフの再作成も容易なので、同じデータを異なる観点でグラフ化する、複数のグラフを作成して比較する、といったことも迅速に行えます。

またこのような Tableau の特徴は、生徒の興味を惹きつける上でも重要な役割を果たしていると言います。

「Tableau に初めて触れた生徒たちはまず、大量データを簡単にグラフ化できることに驚きます。またグラフを作成した後に簡単に修正や変更ができることや、操作が直感的で軽快なことも喜んでいます。そのため、データ可視化や分析の本質に意識を集中しながら、楽しく学習を進められます」。

このように 9 年生で Tableau に触れておくことで、探究に必要な分析や意思決定において、グラフ利活用の重要性を理解した上で高等部に進めるようになったと伊部氏。まだ Tableau を使った学習は始まったばかりですが、今後は 10 年生以上の『自由研究』の探究内容が、徐々に変化していくことに期待したいと言います。

「現在はまだ種を蒔いている段階です。しかしこのような学習を継続的に行い、データの可視化・分析を学ぶ機会を増やしていくことで、『数字を正しく理解する』『数字に語らせる』といったスキルを、着実に身に着けられるはずだと考えています」。

生徒のデータの可視化への関心が増大

このデータをグラフで表現するとどうなるか、といったことへの関心が高まりました。Tableau のグラフ作成機能は、使えば使うほどその奥深さが感じられます。

今後の展開について

データを利活用した学びのスタイルをさらに拡大

今後は Tableau の活用領域を広げながら、データを利活用した学びのスタイルをさらに拡大していく計画です。その 1 つとして挙げられているのが、「正しいグラフ」と「誤解を与えるグラフ」の違いなどについて、小学校の段階から学ぶことです。統計の授業は、2000 年代初頭から始まったゆとり教育の中で消えてしまったものの、その後に中学高校数学のカリキュラムの中で復活、授業内容もかなり確立されてきました。このような取り組みを、小学校にも広げていくことが考えられているのです。

また将来的には、『自由研究』以外の教科にもデータ活用を取り込んでいく、といったことも考えられると指摘します。実際に最近では小中高の教員からアカデミックサポートセンターに対して、統計学習に関する問い合わせが増えているとのこと。また玉川学園は文部科学省スー パーサイエンスハイスクール( SSH )の指定 を 2008 年から 4 期連続受けており、これと絡めた取り組みも検討したいと述べています。

その一方で、学内の IR 活用に Tableau を活用することも視野に入っています。データ利活用は本学園で学ぶ児童・生徒たちだけではなく、本学園を運営する教職員にとっても、緊急かつ重要な課題なのだと伊部氏は指摘します。

「実社会では今後、意思決定のあらゆる場面において、ますますデータの重要性が高まっていくはずです。子どもたちが十分なデータリテラシーを身に付けるために、K-12 の段階で何を学び、どのように学ぶのかを考えながら、これからも統計・データサイエンス教育への取り組みを、着実に前進させていきたいです」。

 

玉川学園 Tableau活用イメージ2

※ 本事例は2023年7月時点の情報です

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