日本の観光統計データをTableau で可視化して発信


ユーザーによる直感的な分析が容易に

メディアや地域からも高い評価

表計算ソフトやPDF では難しかったデータニーズへの対応

主要な市場に海外事務所等を設置し、外国人旅行者の誘致活動を行う政府機関である、日本政府観光局(JNTO)。1964 年に産声をあげ、その後50 年以上にわたって日本へのインバウンドツーリズム(外国人の訪日旅行)のプロモーションやマーケティングを推進しています。

「その一環としてJNTO が取り組んでいるのがデジタルマーケティングの強化であり、日本の観光統計データを通じた情報提供もその活動の一つとして位置付けることができます」と語るのは、JNTO 企画総室デジタルマーケティングセンターでセンター長を務める吉田 憲司 氏。その他にも様々なウェブサイトやSNS による情報発信、スマホアプリを活用した訪日中の外国人旅行者への支援などを積極的に展開していると説明します。

しかし、以前は表形式やPDF 形式でデータをウェブサイトにアップロードしており、データニーズへの対応に限界を感じていたと言うのは、JNTO 企画総室調査・マーケティング統括G でアシスタント・マネージャーを務める小松原 早貴 氏です。

「既存の表計算ソフトでは訪日外国人の全ての国を網羅したシートを作成することが難しいため、主要国を抜粋する形でアップロードしていました。しかし『載っていない国のデータが欲しい』『もっと細かいデータが見たい』という要望が、数多く寄せられていました」。

2016 年度にはこの課題の解決に向けた検討に着手。新たに「日本の観光統計データ」サイトを立ち上げるための取り組みがスタートしました。

「このサイトの立ち上げで目指したのは、誰でも使えるようにデータをビジュアル化した状態で掲載することと、そのデータをインタラクティブに操作できるようにすることです」と小松原氏。そのために活用されているのが、Tableau Public なのです。

 

Tableau の導入・運用環境について
多様な観光統計データをTableau でダッシュボード化

「日本の観光統計データ」サイトが立ち上がったのは2018年3月。JNTO が算出している観光データに加え、観光庁や国連世界観光機関が発表する統計データも掲載しています。これらのデータをTableau Public でダッシュボード化し、ビジュアル化されたデータを閲覧者が自由に操作しながら見られるようにしています。

2021年3月には、JNTO が 運営する「Japan Official Travel App」で取得したユーザーの位置情報に基づくデータも、「日本の観光統計データ」サイトで公開。「訪日旅行の動態を調べる」というダッシュボードの中で、地図などを活用した可視化が行われています。

「これは2020 年度に約半年かけて開発しました」と語るのは、JNTO 企画総室デジタルマーケティングセンターでシニア・アシスタント・マネージャーを務める福井 千尋 氏です。「Tableau には地図上にデータをマッピングする機能もあるため、市区町村別の滞在ヒートマップや1 km メッシュごとの滞在ヒートマップ、旅行ルートなどの可視化も容易です」。

「データの掲載にあたっては、シンプルかつ過不足のないビジュアライズを行うことに留意しました」と語るのは、取材当時JNTO 企画総室デジタルマーケティングセンターでシニア・アシスタント・マネージャーを務めていた中村 大介 氏。Tableau には多様かつきめ細かい表現が可能なビジュアライズ機能が装備されているため、他のツールでは難しい表現も、比較的簡単に実現できると言います。

「私が特に気に入っているのはサンキーダイアグラムです。これを利用して、日本に来た外国人が国内のどこからどこへ移動しているのかを、市区町村別に可視化したダッシュボードも作成しています。市区町村をピンポイントで指定し、流入元と流出先を割合も含めて可視化できるので、地域で観光振興を担当されている方にとって、利便性の高いものになっていると思います」。

これまでも電話で『こんなデータがないか』といった問い合わせを数多く受けていましたが、このサイトを紹介すると感動されることが多くなっています。またメディアの皆さまからの問い合わせも多いのですが、最近ではメディアの皆さま自らこのサイトで調べていただけるようになっています

Tableau 選定の理由について
グラフの表現力とカスタマイズ性を高く評価

「日本の観光統計データ」サイトの構築は入札案件だったため、複数の事業者からの提案を総合評価で判断した上で、選定が行われています。採用された提案の中に含まれていたのがTableau Public でした。導入後、JNTO ではTableau の優位性について、以下のように評価しています。

「ユーザーが知りたい市場や地域を選択し、グラフをカスタマイズして表示できる点が優れています。またデザイン性も高いため、表示したグラフをそのまま資料の中で使うことも可能です」(小松原氏)。

「位置情報との相性もよく、地図上へのデータマッピングも容易です。サイトユーザーにとっての使い勝手もいいと感じています」(中村氏)。

 

Tableau の導入効果について
直感的な操作でわかりやすい分析が可能に

「Tableau で統計データをビジュアライズしたことで、訪日外国人数の季節による変動や、訪問先の分布、国内での観光経路、さらには消費動向も、わかりやすく分析できるようになりました」と小松原氏。ダッシュボードを作成するときも、直感的な操作で多様なビジュアル表現ができると言います。

また、デフォルトで用意されている表現だけではなく、独自の表現を作り込みやすいことも、大きなメリットだと指摘するのは中村氏です。市区町村間の流入・流出を可視化したサンキーダイアグラムでは、このような特徴が活かされていると述べています。

さらに、わかりやすい情報発信を行うことで、メディアや地域からの評価も高まっています。

「サイト開設後すぐにウェブメディアに『すごいサイト』として取り上げられ、ビジュアライズが高く評価されました。また全国紙のウェブメディアにも、このサイトを使った分析方法の記事が掲載されています。地域の方々からも、位置情報がオープンデータとして公開されることで、議論が行いやすくなっていると言われています」(小松原氏)。

単純なグラフにとどまらず、インフォグラフィックも作成することで、インバウンドに役立つデータを直感的にわかりやすい形で提供していきたいと考えています

今後の展開について
データの力で困難に直面する人々を勇気づけたい

「我々が提供するサービスがどの程度役に立っているかの定量的な評価は難しいのですが、Tableau による可視化を行ったことで、観光統計データの活用はこれまで以上に拡大していると感じています」と吉田氏。「今回の取り組みを通じて一定の手応えを感じることができたので、引き続きこの活動を進めていきたい」。

今後はデータのグラフ化にとどまらず、インフォグラフィクスの作成にも積極的に取り組み、インバウンドに役立つデータをより直感的な形で提供していくことを考えています。これと並行してデータの活用事例も増やしていきたいと語ります。

「今はコロナ禍でインバウンドは大変な状況です。『今、何をすべきか?』と悩んでいる方が多いので、わかりやすい形でデータを出し続けることで、業界全体の下支えに少しでも貢献していきたい」(吉田氏)。