近年、膨大なデータを取り扱うようになったビジネスにおいて、効率的に管理し、ひと目で状況を把握できる「ダッシュボード」が注目されています。ダッシュボードは複数のデータソースから情報を集約し、グラフやチャートを用いてわかりやすく表示することで、リアルタイムでの現状把握が可能です。
本記事では、ダッシュボードの基本的な機能や役割、導入のメリットについて詳しく解説します。業種別での活用事例も紹介するので、ぜひダッシュボード導入の参考にしてください。
ダッシュボードとは
ダッシュボードとは、企業が抱えている膨大なデータをひとつの画面に集約し、視覚的にわかりやすく表示するツールのことです。用途によって企業ダッシュボードやマネジメントダッシュボードなど呼び名が変わります。
近年、企業が利用するデータは、SNSやオウンドメディアの多様化によって増加しています。その膨大なデータを把握するためのBIツールも普及しており、情報をひとつにまとめられるダッシュボードが多くの企業で採用されるようになりました。
ダッシュボードを活用することでさまざまな情報を集約し、ひと目で把握できるようにすることが可能です。企業に蓄積されたデータをグラフや表などの形で可視化し、スムーズな意思決定を実現できるでしょう。
ダッシュボードの役割と活用のメリット
ダッシュボードの主な役割は、以下の3つが挙げられます。
- データを可視化できる
- 組織内で共通認識を持てる
- データドリブンな意思決定が可能になる
その役割を理解して、自社でダッシュボードをうまく活用していきましょう。
データを可視化できる
ダッシュボードを取り入れることで、データをグラフや図として確認できるようになります。膨大なデータから関連性のある情報を集約し、ひとつの画面に整理できるため、必要なデータを探す手間が省けるでしょう。
企業によっては会議で共有するデータも、部署や担当者ごとに管理しているケースがあります。その場合、必要なときにすぐ見つけられなかったり、保管場所がわからなかったりすることも少なくありません。ダッシュボードでデータを一元管理すれば、業務効率化に大きく貢献できるでしょう。
組織内で共通認識を持てる
組織内で共通の認識をもつためにも、ダッシュボードは有効です。管理者だけでなく、関係者全員が目標とする指標を共有できるようになります。
ほかにも、進行中の企画のチェックやトラブルが発生したときの対応など、さまざまなシーンで効率化を図れるでしょう。ダッシュボードを通じてチーム全体を把握できるようになれば、メンバー間の情報共有もスムーズになります。
データドリブンな意思決定が可能になる
売上、顧客動向、マーケティングキャンペーンの成果など、組織や部門における重要な指標を一元的に把握することで、データに基づいた迅速かつ適切な意思決定が可能になります。
例えば、営業部門では、売上や商談の進捗を可視化することで、パフォーマンスの低下しているエリアや要因を早期に発見し、適切なサポートを提供できます。マーケティング部門では、キャンペーンの成果やウェブサイトのトラフィックをリアルタイムで把握し、最適なマーケティング施策を素早く判断できます。また、経営層にとっては、売上、利益率、顧客満足度などの重要な指標をダッシュボードで一元的に確認することで、経営の健全性を常に把握し、必要な戦略の修正や意思決定を迅速に行うことができます。
ダッシュボードの基本的な機能
ダッシュボードの基本的な機能には、データを効率的に管理し、わかりやすく視覚化するためのさまざまな機能が含まれています。
使用するダッシュボードの種類や用途によって異なりますが、一般的なダッシュボードの機能とその詳細をご紹介します。
1. データの可視化
ダッシュボードの最も基本的な機能は、データを視覚的に表現することです。グラフ、チャート、散布図、ヒートマップ、ゲージ、ピボットテーブルなどを使用してデータを表示することで、ユーザーが一目で情報を理解できるようにします。視覚化されたデータは複雑な数値やトレンドを直感的に把握するのに役立ち、ビジネス上のパフォーマンスを一目でモニタリングできます。
2. データの集約と統合
ダッシュボードは、複数のデータソースを統合し、一つの画面で表示する機能を持っています。例えば、CRMから販売データ、顧客データ、ERPから在庫データなど異なるシステムから収集したデータを一元化して管理できます。データの集約により、ユーザーは全体的な状況を簡単に把握し、個別の情報源を行き来する必要がなくなります。
3. データフィルタリングとドリルダウン
データのフィルタリングやドリルダウン機能により、ユーザーはダッシュボードから必要な情報に簡単にアクセスすることができます。フィルタリング機能により、特定の期間や条件に基づいてデータを絞り込むことができます。例えば、特定の月の売上データや地域別のパフォーマンスをすばやく確認できます。また、ドリルダウン機能を使うと、データを深掘りして詳細を確認することが可能です。例えば、売上全体のチャートから特定の製品カテゴリーや個々の取引・商談に至るまでの詳細情報を探ることができます。
4. リアルタイム更新
より市場の変化が目まぐるしい昨今では、最新のデータに基づいて迅速な意思決定が求められます。
ダッシュボードのリアルタイム更新機能は、最新のデータに基づいてビジネス状況を常に把握するのに役立ちます。データがリアルタイムで反映されることで、タイムリーな意思決定が可能となり、リアルタイムの視覚化により、リスクの早期発見や迅速な対策の立案が行いやすくなります。
5. カスタマイズ性とユーザーインターフェースの柔軟性
ダッシュボードは、目的やユーザーに応じてカスタマイズが可能です。たとえば、経営層向けには全社的なKPIを表示し、営業担当者には売上実績やリード進捗を示すように設定できます。ウィジェットやグラフ・チャートをドラッグ&ドロップで配置変更できるなど、柔軟なインターフェースを提供することで、ユーザーの視点やニーズに応じた情報提供が可能になります。
6. アラートと通知機能
ダッシュボードには、事前に設定した基準に基づいてアラートや通知を発信する機能も備わっています。たとえば、売上が特定の閾値を下回った場合や、在庫が不足しそうな時に自動的にアラートが表示され、関係者に通知が送られます。これにより、潜在的な問題に対して迅速に対応することができます。
7. インタラクティブ性
ダッシュボードのもう一つの重要な機能は、インタラクティブ性です。ユーザーはグラフやチャートに直接触れることで、データの異なる側面を簡単に調べることができます。例えば、特定のバーや折れ線グラフをクリックして詳細を表示したり、複数のグラフを連動させてデータの相関関係を探ることができます。このインタラクティブな操作により、ユーザーは自ら探索的にデータを分析し、より深いインサイトを得ることができます。
8. コラボレーション機能
ダッシュボードは、チーム間で情報を共有し、コラボレーションを促進するための機能も提供しています。特定のダッシュボードやレポートを共有し、関係者とディスカッションを行うことで、全員が同じ情報に基づいて意思決定を行うことができます。また、コメント機能や注釈機能を活用することで、特定のデータポイントに関する意見交換がスムーズに行えます。
これらの基本機能により、ダッシュボードは企業のデータ管理と意思決定のプロセスを大幅に改善します。データの可視化からリアルタイム更新、インタラクティブ性まで、ダッシュボードは複雑なデータを効果的に扱い、ビジネスの迅速な対応力と生産性向上に貢献します。
ダッシュボードの活用例
ダッシュボードは、データが膨大化している近年のビジネスにおいて欠かせない存在です。ここからは、業種別でダッシュボードの活用例を紹介します。
マーケティング部門|パイオニア株式会社
チームを越えてKGI/KPIを「バトンタッチ形式」で考えることを重視し、その基盤をつくるためにダッシュボードを導入しました。ダッシュボード上部に各チームのKGI/KPIが一覧表示されるようにしており、現在では会議にも活用されています。
また、ダッシュボードによってほかチームとのスムーズな情報共有が可能になった結果、新規顧客受注台数が昨年比8倍以上を達成しました。
パイオニア型のThe Modelでサービスビジネスの大幅成長を実現|データにもとづく販売モデルで「モノ✕コト」の価値を提供
営業部門|キユーピー株式会社
キユーピー株式会社は、営業部門の課題解決にSalesforceを導入しました。ダッシュボードを活用して活動状況の見える化を実現したほか、パッケージを自分たちの業務に合う形に編集できるよう人材の育成にも注力しました。
その結果、フードサービス営業利用定着化で商談化数が前年比126%に向上し、重要商談に対するアクション率が12%アップしています。各支店への配布も進んでおり、現在はSalesforceのグループ全社展開が目標です。
ダッシュボードとフェーズマネジメントで営業を改革|フードサービス営業 利用定着化で商談化数が前年比126%に!
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BIツール「Tableau」のダッシュボードで叶えられること
Tableauとは、データの可視化と分析をかんたんにおこなえるBIツールです。リアルタイムのデータを表示できるので、迅速な意思決定と業務効率の向上を目指せます。
Tableauのダッシュボードは視覚的に優れたデータ分析を可能にし、かんたんな操作で作成できる点が魅力です。ドラッグ&ドロップ操作で作成できるので、専門的なプログラミング知識がなくてもデータ分析が行えます。
さらに、対話型のAI エージェントがデータの準備や可視化も支援します。
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ダッシュボードを活用する際の注意点
ダッシュボードは膨大なデータを一元管理し、可視化できる便利なBIツールですが、気をつけるべき点もいくつかあります。ここでは、活用する際の注意点について詳しく解説していきます。
ダッシュボードで表現するKPIの適切な選定
ダッシュボードで表示するKPIは、組織の目標や戦略に直結している必要があります。KPIの選定が不適切だと、関連性の低いデータに基づいて意思決定を行うことになり、誤った方向に進むリスクがあります。重要なのは、事業戦略に直接関係する指標を絞り込んで表示し、データの過剰な表示を避けることです。少数の重要な指標に焦点を当て、無駄な情報でユーザーが混乱しないようにすることが重要です。
データの正確性と信頼性
ダッシュボードで扱うデータの正確性と信頼性は、意思決定の質に直結します。不正確なデータや古いデータに基づいて判断すると、重大な誤りを引き起こす可能性があります。そのため、ダッシュボードに使用するデータソースが信頼できるかを確認し、データの品質管理を徹底することが不可欠です。また、データの更新頻度を明確にし、必要に応じてリアルタイムでデータを取得できるようなシステムを構築することも大切です。
堅牢なセキュリティと適切なユーザー権限
企業にとって重要なデータが一元的に表現されるダッシュボードは、漏洩のリスクを確実に排除できる堅牢なセキュリティが求められます。また、全員に同じ情報へのアクセスを許可することは望ましくない場合もあります。例えば、財務データや人事データなど、機密性の高い情報には適切なアクセス権限を設定する必要があります。ユーザーごとに適切な権限を設定し、必要なデータのみアクセス可能にすることで、データの漏洩リスクを低減し、情報セキュリティを強化することができます。
導入と運用にはコストと時間が必要
ダッシュボードを導入するときはランニングコストを予測し、費用対効果がどのくらいか検証したうえでツールの選定をおこなうことが重要です。自社が導入できる範囲にも考慮し、無理なく活用できる方法を検討してみてください。
目的に合った機能があるか確認する
ダッシュボードを導入するときは、目的にあった機能が搭載されているかどうかを必ずチェックしておきましょう。事前にダッシュボードによって何を実現したいのか、どのような機能が必要なのかを明確にしておくことが大切です。
たとえば、ドリルダウン機能やフィルタ分析はよく活用されている機能ですが、すべてのダッシュボードに備わっているわけではありません。自社にとって必要な分析が何かを検証しておき、必要な機能があるダッシュボードを導入しましょう。
サポート体制が整っているか把握しておく
ダッシュボードの導入に不安がある場合は、サポート体制が整っているかも重要なポイントです。ツールによっては、導入や運用のサポートを受けられる場合があります。
ダッシュボードを活用して業務効率化を実現しよう
ダッシュボードは、現代のビジネスにおいて必要不可欠なツールです。データを視覚的に表示することでひと目で状況を把握でき、迅速かつ正確な意思決定をサポートします。
営業やマーケティングなど、さまざまな分野での活用が期待されており、業務の効率化やパフォーマンスの向上が可能です。プロジェクト管理においても、進捗状況やリソースの配分をリアルタイムで確認できるため、プロジェクトの成功率が高まります。
今後も進化し続けるダッシュボードを活用して、ビジネスの成功に役立てていきましょう。