ツムラ、製造・営業・基幹データを可視化し、意思決定を支える活用基盤へ
品質管理部門:調査にかかる時間を3分の1に短縮し生産性向上
営業部門:漢方の標準治療拡大を目指し、基本処方の増加状況を可視化
製造・基幹部門:出荷・在庫・製造を横断分析、需給管理の改善に生かす
ツムラは、Tableauを活用し、製造・営業・基幹の各部門でデータドリブンな意思決定の推進に取り組んでいます。漢方薬の原材料である生薬は、産地や等級といった属性により成分値に差があり、製造されたエキスも予測値に対して実績値が乖離する場合があります。製造領域においては、そのような差異の発生時、要因調査に多くの人的リソースと時間を要していたことが課題でした。 同社は、生薬品質に関するデータをTableauで一元可視化することで、調査時間を従来比3分の1に短縮し、生産性向上を実現しました。
営業領域では、長期経営ビジョンにもとづくKPIと進捗を可視化し、営業戦略の立案やMR活動の重点設定に活かしています。
さらに、出荷・在庫・製造データをTableauで横断的に参照できるようにし、需給管理の高度化に生かせるデータ基盤の整備も進行中です。部門ごとに分断されていた情報がつながることで、社員が自らデータを見て判断できる環境が広がりつつあります。
ツムラは、経験に基づく“ものづくりの知”をデータで継承し、データ活用文化の醸成を目指しています。
ツムラについて
株式会社ツムラは、「自然と健康を科学する」を経営理念に掲げる日本を代表する漢方薬メーカーです。100年以上にわたり受け継がれてきた生薬の知見と最新の科学的アプローチを融合し、医療用漢方製剤のリーディングカンパニーとして、日本の医療の発展に貢献しています。近年では、サプライチェーン全体のDXやデータ基盤整備を通じて、品質の安定化と供給最適化を実現する「漢方バリューチェーンのDX」に取り組んでいます。また、医療従事者への情報提供や研究開発の領域でもデータ活用を進め、「世界に類のない最高の医療提供に貢献する」漢方ビジネスモデルの構築を推進しています。
ツムラの挑戦
ツムラは、漢方製剤の安定供給と品質を中心とした製品価値の向上を両立させるため、長期経営ビジョンの中で「漢方バリューチェーンのDX」を掲げ、製造・営業・基幹など全社でデータ活用の推進に取り組んでいます。同社は、生薬の調達から製造・品質管理・出荷・販売までを一貫して担っていますが、部門ごとに使用するシステムが異なり、データの共有やそれに基づく議論がしにくいという課題を抱えていました。また分析に適したデータベースが整備できていない領域もあり、環境面での課題もありました。
こうした状況を踏まえ、データドリブンな経営・意思決定を推進すべく、ツムラはTableauを全社共通のアナリティクス基盤として採用。製造の品質データから営業活動、在庫・出荷の基幹データまで、Tableau上では社員が同じデータを見て判断できる環境づくりを進めています。現場では、以前よりもデータを根拠にした議論や知見共有をしやすくなり、データ活用文化の醸成も進みつつあります。
デジタルソリューション部の村井 友香氏は、導入の背景と狙いを次のように語ります。
「各部門のデータを1ヶ所に”集める”ことを先行しては失敗すると思いました。まずは手元にあるデータで可視化や分析を試し、意味があるとわかった段階で基盤を整える。Tableauはそうしたアジャイルな進め方に非常に向いていると感じています。」
このアジャイルなアプローチにより、導入からわずか3〜6か月で、業務部門が必要とする品質データのリアルタイム可視化・調査の省力化が実現し、改善の成果が見え始めています。
各部門のデータを1ヶ所に”集める”ことを先行しては失敗すると思いました。まずは手元にあるデータで可視化や分析を試し、意味があるとわかった段階で基盤を整える。Tableauはそうしたアジャイルな進め方に非常に向いていると感じています。
Tableauがツムラをどのようにサポートしているか
調査にかかる時間を3分の1に短縮
安定した品質の維持は、ツムラのものづくりの根幹です。同社では、生薬の産地・等級・収穫年度・加工方法などの属性情報に加え、各製造工程での品質試験結果や環境条件などをTableauで一元的に可視化。これまで別々に確認していた製造データと品質試験データをロット単位で結び付けることで、規格値内での上振れ・下振れの要因を迅速に掘り下げられるようになりました。
成分値のトレンドと工程条件を重ね合わせることで、以下の点を一目で把握できます。
- 成分値の上昇/下降傾向
- 予測値と実測値の乖離が大きいロット
- 産地・等級の組み合わせによる偏り
- 原料段階で成分にばらつきのある、要確認ロット
こうした可視化ダッシュボードを既存のOracle DBのデータのみで約3か月で構築し、10本ほどを運用開始。導入から3〜6か月で品質調査にかかる工数を最大3分の1に削減しました。トレンド変化が見られた際も、ロットや工程をまたいだ要因分析が迅速に行えるようになり、ロスや手戻りの抑制に貢献しています。

製造条件と品質試験結果を時系列で可視化

生薬の産地・等級構成と品質結果の関係を可視化
漢方の標準治療拡大を目指し、基本処方の増加状況を可視化
ツムラでは、診療領域ごとの基本処方すべてを処方する医師を50%に拡大するという長期経営ビジョンを掲げています。ビジョン実現のため、営業部門ではKPIと現場活動の進捗をTableauで可視化し、地域や施設ごとの傾向を把握できるようにしています。各領域で重視される処方が医療現場でどの程度使われているかを捉えることで、MRが重点的に取り組むべき領域や情報提供の方向性を検討する際に活用されています。
あわせて、医療従事者向け情報提供サイトにおける全体的な閲覧傾向も参考情報として可視化しており、疾患領域ごとの関心の高まりなどを広い視点で把握しています。これらのデータは、講演会のテーマ検討や資料準備を行う際にも活かされています。
村井氏は、この取り組みの狙いを次のように語ります。
「本社が分析するのではなく、現場のMRが自分たちのデータを見て次の行動を決められるようにしたかった。Tableauはその仕組みを現場に根づかせるきっかけになりました。」
この取り組みにより、MRが活動を振り返る際の材料が増え、医療従事者のニーズをより丁寧に考えるための環境づくりが進んでいます。
さらに、CRMに記録された活動履歴や計画と実売の進捗率を確認できるワークブックも運用しており、MRの日々の振り返りを支える仕組みとして活用されています。

KPI達成状況
SAP S/4HANAの出荷・在庫・製造データを横断的に可視化
ツムラでは、出荷・在庫・原価などの基幹データをTableauで可視化し、日々の需給状況を把握できる仕組みを整えています。出荷データはSAP BW/4HANAから随時更新され、製品別の出荷量や金額をリアルタイムに確認できるため、製造・営業・管理部門が同じ情報をもとに現状を共有できるようになりました。
在庫データは、減少傾向の製品や供給リスクの高い品目を把握する際に活用され、生産製造計画の見直しや出荷調整の判断を支えています。さらに、工程別の原価差異分析にも取り組んでおり、目標原価との差が生じている工程を可視化することで、ボトルネックやコスト要因の特定と改善の優先度づけに活用しています。
このように、基幹データを日次で可視化し、現場が自ら数値を確認して判断できる環境を整えることで、ツムラは需給管理の高度化と安定した製品供給につながる“データ活用基盤”の構築を進めています。

目標原価と実績原価の差異分析
他社にはないTableauの価値
複数システムをつなぐ柔軟な接続性と運用基盤
ツムラがTableauを本格的に検討し始めたのは、基幹システム刷新に伴い、既存システムと並行してデータを扱う必要が生じたタイミングでした。SAPや複数バージョンのOracleが混在する複雑なオンプレミス環境に安定して接続できるBIツールは限られており、候補はごく少数に絞られました。
検討では他社のクラウドBIも比較しましたが、ユーザー管理や権限設定の運用負荷が高く、全社展開には不向きと判断。接続性・運用性・拡張性のバランスに優れたTableauが最終的に選定されました。
村井氏は当時の選定を次のように振り返ります。
「SAPのDB層と複数バージョンのOracleの両方に接続できるBIツールは限られていました。Tableauはその中で最も柔軟にデータソースを扱え、さらに運用のしやすさもあったんです。」
Tableauはtabcmdによるユーザー一括登録やMicrosoft 365(Entra ID)とのSSO連携にも対応し、IT部門の負荷を抑えながら約1,000名規模での利用を実現。グループ単位のアクセス管理により、セキュリティと利便性を両立しています。
SAPのデータベース層と複数バージョンのOracleの双方に接続できるBIツールは限られていました。その中でTableauは最も柔軟にデータソースを扱うことができ、運用面でも優れていました。
現場が“自分で使いこなせる”直感的な操作性とサポート品質
ツムラがTableauを採用したもう一つの決め手は、専門知識がなくても使いこなせる操作性と、導入後の安心できるサポート体制でした。
製造・営業・管理など多様な部門でデータを扱う同社では、IT部門がすべてを担う中央集権的な運用ではなく、現場が自らデータを見て考え、行動できる仕組みが求められていました。
村井氏はユーザー教育のしやすさについて次のように語ります。
「Tableauは1〜2時間レクチャーすれば、みんな“もう使えそうです”と言ってくれます。Web画面も直感的に操作できます。」
また、定着を支えたのは導入後のサポート体制です。
「導入後に問い合わせができる仕組みがあるのは安心でした。技術的な質問にも対応してもらえるので、社内に知見が少ない段階でも安心して使い始められました。」
データを“経営の意思決定”へつなぐために
ツムラは今後、部門ごとのデータ活用からさらに進め、経営層を含む全社レベルでの意思決定支援へ発展させることを目指しています。
SAP S/4HANAへの刷新により、各部門ではTableauを用いた現場主導のデータ活用が広がりつつありますが、経営指標をリアルタイムで確認できる経営ダッシュボードの整備はまだ途上です。現在はPDF等の資料配布・報告が中心で、経営企画部門を中心に「リアルタイムで見られる経営情報」の構築が検討されています。
村井氏はERPデータ活用の展望を次のように語ります。
「経営判断をスムーズにする仕組みが、本来のERP導入の目的。必要なデータを都度集計し配るのではなく、最新情報がいつでも見られるダッシュボード化が必要だと思っています。」
一方、製造領域ではデータの可視化や分析への意欲は高いですが、分析に適した構造のデータ整備が行えていない現状があります。
「業務施策につながる分析を見極め、分析〜活用のサイクルを日常的に回せるよう環境を整備していくことが次のステップだと思っています。」
さらに同社では、作成したTableauワークブックがどれだけ参照されているかを把握するための社内用ダッシュボードも構築し、どの部門でどのデータが活用されているかを見える化する取り組みも始まりつつあります。参照数を確認することで、活用が進んでいない領域の把握や、現場がどの情報を重視しているかを理解するきっかけとする狙いがあります。
ツムラは、人の知恵・経験とデータを融合させながら、さまざまな領域でのデータドリブンな意思決定を目指しています。

ツムラ社員によるTableauワークブック活用状況の可視化
