データ抽出・加工・資料作成の時間を大幅削減
Tableau導入が成長戦略のゴールに向けた第一歩
導入の背景
データ抽出・加工のコスト増、データの標準化・共通化の遅れなど課題が山積
三菱食品株式会社は、三菱商事グループの一員として、仕入先の食品メーカー約6,500社の商品を販売先の約3,000社16万店舗に届ける、食品卸業界大手です。2011年、三菱商事系の食品流通卸4社の経営統合によって誕生した同社は、2025年、母体となった株式会社菱食の前身である株式会社北洋商会の設立から100周年を迎えました。そして同社は、2030年度を最終年度とする経営計画「MS Vision 2030~つぎの100年へ、食が創造する未来へ、たすきをつなぐ~」を策定し、第一の成長戦略としてデータ活用基盤の強化とAl技術の活用を挙げています。
200近い企業・事業の統合を経て現在に至る同社は、システムについても必然的に統合・刷新を繰り返し、その中で各時代に合うデータ活用の方法を模索してきました。1990年代に始まった同社におけるデータ活用は、2010年代、社員があらかじめ用意された定型分析メニューに沿って担当者がデータ抽出を行い、ExcelやAccessで個別に分析する、という形で社内に定着。さらに2016年、現行の基幹システム「MILAI」への移行により、DWHから誰でもデータを抽出・加工できる環境が整いました。
とはいえ、その時点で同社のデータ活用は、まだ一部の部署や社員による取り組みにとどまっていました。執行役員 CIO 兼 デジタルソリューション本部長の石﨑智晴氏は、当時の状況についてこう話します。
「実情としては、いわゆるExcelやAccessの達人が、限られた範囲内で属人的にデータを活用しているという状況でした。また、社員各自でできることが増えた分、業務が煩雑化してデータの抽出・加工の作業時間が増加する、社内各所で同じような作業が行われて無駄が多い、データが標準化・共通化されず統一的な指標で見られない、などの問題が浮き彫りになっていました」(石﨑氏)
そうした中、業務を通じて蓄積されるデータ量は日を追うごとに増加し、それにともなってデータ活用に対する社内のニーズと業務効率化を求める声は高まっていきました。
Tableau 選定の理由
直感的な操作性、各種データソースとの連携性、導入の速さを評価
Tableau導入のきっかけは、2021年、DX施策の一環として営業部署へのSFAの導入を検討したことでした。結果として、煩雑な営業業務の標準化は難しいとの判断からSFA導入は見送られたものの、検討の過程でBIツールの有用性について議論がなされました。そして、BIツールを活用すれば、現場の大きな負担となっていたデータ抽出・加工の業務を効率化し、意思決定の迅速化などの成果につなげられる、という結論に達したのです。
それを踏まえて同社は、複数のBIツールを比較検討し、最終的にTableauの採用を決定しました。選定の決め手となったポイントについて、デジタルソリューション本部 データマネジメントグループ Aユニット ユニットリーダーの山島義和氏はこう話します。
「まずは使い方やビジュアルのわかりやすさ。複雑なデータ分析でも直感的な操作性で実行でき、かつ視覚的に情報を把握してすばやく意思決定できる点が魅力的でした。2つ目は多様なデータソースとの連携性の高さ。Snowflakeを中心とするデータクラウド基盤を介して、さまざまなデータソースと簡単に連携できる柔軟性を評価しました。もう1つは導入の速さ。短期間で導入してすぐに効果を実感できる点も選定の大きな要因になりました」(山島氏)
Tableau 導入・運用環境
スモールスタート・トップダウン&ボトムアップの両輪で利用が定着、ユーザーが急増
同社におけるTableau導入は、2023年1月、デジタル戦略本部(現デジタルソリューション本部)の開発者5名でPoCを行うところからスタートしました。メンバーは、約30時間のTableauブートキャンプを受講した上で、外部から招いたTableauエキスパートや解説動画から学ぶことでスキルアップしていきました。ブートキャンプの受講メンバーが中心となってダッシュボード開発に携わり、各部署の相談窓口や技術支援を行うなど、導入プロジェクトを推進するコア人材となったのです。
次に同社は2023年7月、関西支社の1営業グループを対象にTableauをテスト導入。同年11月からは関西支社の営業部署全体に拡大し、営業向けダッシュボードの利用定着と改善を図りました。さらに、その取り組みの成果を踏まえ、2024年2月から全営業部署に、2024年11月からは全部署にTableauを展開しました。
各部署への導入にあたっては、最初にプロジェクトの統括者である石﨑氏自らが講師となり、データ活用の重要性を説明しました。デジタルソリューション本部 データマネジメントグループ マネージャー 須山大樹氏は、そうした経営側からのメッセージ発信が、Tableauの定着化を促す大きな要因になった、と分析します。
「経営トップからも営業組織の責任者に対して、『ダッシュボードを有効活用して業務の見える化・共通化・標準化を進め、業務の効率化を図り、働き方の変革』を推進するという発信がありました。このトップダウンのアプローチと、現場を訪問しユーザーとの意見交換にて汲み上げた要望を実装し、継続的な説明会といったボトムアップのアプローチが奏功し、利用が定着しました。」(須山氏)
結果、2025年1月時点で、1,300名強(利用率93.6%)の営業部署のユーザーがダッシュボードを活用しております。
スマートフォンからでもタイムリーにデータを確認できるようになり、移動中の空き時間や得意先へ行く直前に見て商談に活かすなど、営業の働き方自体が大きく変わりました。
Tableau 活用
営業と経営、2つのダッシュボードで業務の改善、意思決定の迅速化を実現
営業担当者が日常的に営業ダッシュボードで確認しているのは、日次売上利益進捗、月次売上利益進捗、滞留在庫、商談という4つの領域です。営業担当者は従来、それらを分析するため、データ抽出・加工に膨大な時間を費やしていましたが、営業ダッシュボードによって大幅に時間が削減されました。しかも、以前と異なり、全社共通の指標で統一された情報を、ものの数秒で把握できるようなったのです。
「今まで1,400名の営業部署がバラバラに行っていたデータ抽出・加工・分析の作業が不要になり、時間を大幅に削減できました。また、パソコンからだけでなくスマートフォンからでもタイムリーに情報を確認できるようになり、移動中の空き時間や得意先へ行く直前に見て商談に活かすなど、営業の働き方自体が大きく変わりました」(山島氏)
そうした業務変革は、Tableauの各種機能によってももたらされています。たとえば、Tableauのサブスクリプション機能では、確認項目数値が一定の基準を超えたらメールで通知するなどのアラート設定が可能です。それを利用すれば、従来、得意先の売上状況などを都度自分で確認していた、いわゆるプル型の確認が、プッシュ型の通知に変わり、より迅速に次のアクションにつなげられるようになるのです。
一方、経営層は、経営ダッシュボードを用いて各種KPIを適宜確認し、意思決定や経営課題の解決に活かすようになりました。
「今では社長以下、全幹部社員が経営ダッシュボードを利用しています。経営のKPIを可視化する取り組みは、実はTableau導入前から、経営企画本部を主体として進められていました。その仕組みのスクラッチ開発に頭を悩ませていたのですが、Tableauの導入により、経営ダッシュボードという形で即座に解決できたのです」(石﨑氏)

経営トップからも各部署営業組織の役員責任者に対して、『ダッシュボードを有効活用して業務の見える化・共通化・標準化を進め、・業務の効率化を図り、進め、働き方の変革を進めなさい』を推進するという発信がありました。このトップダウンのアプローチと、現場を訪問しユーザーとの意見交換にて汲み上げた要望を実装し、継続的な説明会といったボトムアップのアプローチが奏功し、利用が定着しました。
Tableauの導入の効果と今後の展望
営業ダッシュボードの活用により、月間約1,600時間の削減効果
加えて各部署では、パワーユーザーによるTableauの活用事例が次々に創出されています。たとえば商品統括では、約6,500社の仕入先ごとに出荷実績や売上、損益などの指標を可視化し、ビジネス状況のタイムリーな把握や過去実績との比較を簡単に行えるダッシュボードを作成しました。
「パワーユーザーをさらに増やすため、データ活用への関心を高めるようなダッシュボードの提供や説明会の実施、動画コンテンツの制作などへの対応を増やすことを検討しています」(石﨑氏)
そうしたTableau活用の全社的な広がりは、定量的にも効果を生み始めています。たとえば、営業担当者が標準化された営業ダッシュボードを活用するようになったことでデータ抽出・加工に要する時間は営業業務でみると日次業務で570時間、月次業務で500時間の削減効果が見られました。また、会議などで使用する資料作成の時間についても、従事者約800名の内、60名は会議資料の作成から解放されることで、月間約530時間も削減され、営業業務全体では月間約1,600時間の効果が既に表れております。
さらに、ユーザーを対象とする社内アンケートでは、Tableauの導入による定性的な好影響を示す回答が多く寄せられました。
「たとえば、『データの見える化・共通化・標準化は実現されたか?』との問いに対し、約9割が『はい』と回答しています。また、『上司・部下間のコミュニケーションの量は増えたか?』との問いには6割強が『はい』と答え、その内容として『指示・確認・フォローの機会が増えた』『進捗確認や業務報告をする機会が増えた』などが挙げられています」(須山氏)
Tableauの導入から約2年間で大きな成果を上げた同社。それでも石﨑氏は、これまでに出ている定量・定性両面の効果にはさほど重きを置いていないとし、その理由についてこう説明しました。
「当社の成長戦略のゴールは、AI活用による業務改善を実現することであって、BIツールの導入と成果はあくまでそのための一歩に過ぎないからです。たとえば、生成AIを活用した業務支援や自動化、さらにそのノウハウを外部提供する新規事業の創出。そういうAI活用を推進するためにはデータ戦略が必要で、データ戦略のためにはデータ基盤が必要、だからまずBIツールを入れたというのが、今回のTableau導入の位置づけです。今後データの活用をさらに拡大し、2030年にはゴールへ到達したいと考えています」(石﨑氏)
パワーユーザーをさらに増やすため、データ活用への関心を高めるようなダッシュボードの提供や説明会の実施、動画コンテンツの制作などへの対応を増やすことを検討しています。

※ 本事例は 2025 年 3 月時点の情報です
