ロイヤリティマーケティング、共通ポイント「Ponta」の1億IDのデータ活用実績を基にTableauで分析サービスを提供。企業の意思決定を支援
都度SQLで行っていたデータ分析を、クライアントがセルフサービスで行える分析サービス「COMBI.d」として事業化
価値観データを組み合わせた「ペルソナマーケティング」により、購買接点の少ない不動産・金融・保険業界にも有効な顧客理解を提供
Tableauで培った分析・発信力を起点に、総務省「統計Viz」の制作を受託。新たなデータ活用フェーズへ
1億人規模のファーストパーティデータを保有する株式会社ロイヤリティマーケティング(以下、ロイヤリティマーケティング)は、共通ポイントサービス「Ponta」の運営で知られています。同社はTableauを活用し、これまで依頼のたびにSQLでデータを抽出し、手作業で資料化していたデータ分析を、Ponta提携企業をはじめとするクライアントへ繰り返し提供できる分析サービスへと進化させました。店舗・カテゴリ・併買・来店者分析などのBIを提供する「COMBI.d」、1億人を価値観で捉える「ペルソナマーケティング」、さらに総務省「統計Viz」の制作受託まで──Tableauを起点に、データ活用を新たなフェーズへと発展させています。
ロイヤリティマーケティングについて
株式会社ロイヤリティマーケティングは、共通ポイントサービス「Ponta(ポンタ)」を運営する企業です。2008年に設立され、2010年に「Ponta」のサービスを開始しました。現在は、1億人を超える会員基盤を活用し、ロイヤリティ事業とマーケティング事業を展開しています。
「Ponta」は、コンビニエンスストアや外食、小売、金融、通信など幅広い業種の提携企業とともに成長し、1億人を超える会員基盤を構築しています。日々蓄積される購買・行動データは、マーケティングや顧客理解を支える基盤となっています。
同社は、1億人規模のファーストパーティデータを保有しています。属性情報に加え、購買履歴やリサーチによる興味・嗜好、価値観データなどを組み合わせることで、生活者を多面的に分析できるデータ基盤を構築しています。
同社は、このデータ基盤を基に、データを活用したマーケティング支援を行うテクノロジーカンパニーです。ポイントサービスの運営にとどまらず、データとテクノロジーを組み合わせたソリューションを通じて、提携企業やクライアント企業のマーケティングや事業課題の解決を支援しています。
ロイヤリティマーケティングの挑戦
ロイヤリティマーケティングが向き合ってきた課題は、単なる分析業務の効率化ではありません。生活者の価値観が多様化するなかで、膨大なデータを多面的に分析し、クライアントの事業の意思決定へ迅速につなげることが求められていました。
ロイヤリティマーケティング ビジネスソリューション第一グループ グループ長 執行役員の森角敦氏は、生成AIが急速に普及する時代だからこそ、BIの役割はさらに重要になると考えています。AIが正しく判断するためには、その前提として「誰もが同じデータを、同じ意味で理解できる状態」を整えることが不可欠です。BIとAIは対立するものではなく、相互に補完し合う存在であり、両輪で進めるべきだと語ります。
LLMが登場してから、チームにはずっと『これからはAIとBIなので、両方とにかく進めてください』と言い続けてきました。大量のデータをクイックに読める時代になるほど、読み間違えると大きなミスリードを起こします。だからこそ、BIで全員が同じデータで意識を合わせるということが、より大事になってくると思っています。
一方、現場のオペレーションには属人化という課題がありました。Tableau導入以前、Ponta会員の購買データやリサーチデータはAmazon Redshiftに蓄積されていましたが、営業担当者やクライアントから依頼があるたびに、担当者がSQLでデータを抽出し、表計算ソフトやプレゼンテーション資料へ手作業で加工していました。
分析の切り口は、性年代や地域、商品カテゴリ、期間など多岐にわたります。静的な資料では、条件を変えながらデータを読み解くことが難しく、データを組み合わせることで見えてくる新たな示唆や価値を十分に伝えられないという課題がありました。
この変革を推進したのが、森角氏が統括するグロースインキュベーション本部です。BIとAIを含めたサービスの企画・開発からクライアント支援までを担う少数精鋭の組織として、Tableauを中核に据えたデータ活用を推進しています。新卒で加わるアナリストにはTableau研修を実施し、自らダッシュボードを設計・構築した成果物を先輩社員や森角氏がレビューする育成体制も整えています。
Tableauがロイヤリティマーケティングをどのようにサポートしているか
店舗・カテゴリ・併買・来店者を一つのダッシュボードで深掘り。提携企業の売場改善を支える「COMBI.d」
Tableau活用の中で、最も進んでいるのが、提携企業・クライアント向けのデータ分析サービス「COMBI.d」です。
以前は、クライアントから依頼を受けるたびに、担当者がSQLでデータを抽出し、レポートを作成していました。分析の知見は蓄積されていたものの、案件ごとに個別対応する形が中心で、繰り返し提供できるサービスとして体系化されていませんでした。
同社は、これまで数多くの分析案件で培ってきたノウハウを整理し、店舗分析、カテゴリ分析、商品分析、併買分析、来店者分析、商圏分析といった分析メニューをTableauのダッシュボードとして標準化しました。提携企業から受領したPOS・ID-POSデータをAmazon Redshift上のデータマートへ集約し、提携企業の担当者が同じ分析基盤の上で、専門的な分析スキルを必要とせずにデータを深掘りできるよう「COMBI.d」の一機能として、購買データ分析サービスを提供しています。
店舗分析では、延べ来店客数や売上金額、売上数量、延べ客単価などの主要指標を前月比とともに一覧表示し、気になる店舗をクリックすると、月次・日次・時間帯・曜日別の推移を全店舗平均と比較しながら確認できます。全体の傾向を把握し、気になる店舗を見つけ、さらに詳細へ掘り下げるという分析の流れが、そのまま画面上で実現されています。

図1:「COMBI.d」の店舗分析画面。主要指標と店舗ランキング、各種推移を一画面で把握(画面・数値はダミーデータ)
店舗の状況を把握した後は、カテゴリ分析へ進みます。大カテゴリ・中カテゴリ・小カテゴリのランキングや推移を階層的に確認でき、カテゴリをクリックするだけで商品単位までドリルダウンできます。「どのカテゴリが伸びているのか」「その中でどの商品が売上を牽引しているのか」といった変化を、同じダッシュボード上で連続的に分析できます。

図2:カテゴリ分析画面。大・中・小カテゴリのランキングと推移を階層的に把握し、商品単位まで深掘り(画面・数値はダミーデータ)
COMBI.dの特徴の一つが、併買分析です。画面上部では、ある商品が含まれる買い物かごと、含まれない買い物かごを比較し、購入金額をどれだけ押し上げるかを「併買貢献度」として可視化しています。例えば「きゅうり」は、購入された買い物かごの金額が平均の約1.16倍となり、客単価を押し上げる商品であることが一目で分かります。また、画面下部では、「きゅうり」と同じかごに入った商品が具体的に何かを確認することができ、「サニーレタス」や「トマト」といった商品が一緒に買われやすいということが分かります。単に商品別の売上を確認するだけでなく、「どの商品を強化すれば客単価向上につながるのか」という施策まで、その場で検討できることが特徴です。

図3:併買分析画面。「きゅうり」の併買貢献度が1.16であることを可視化(画面・商品名・数値はダミーデータ)
さらに、ID-POSデータを活用した来店者分析では、来店ユニークユーザー数や客単価、リピート率に加え、性年代構成や来店リピートマップを組み合わせることで、「来店は多いもののリピート率が低い」といった課題を直感的に把握できます。商圏分析では、統計地理情報システムのメッシュデータなどを組み合わせ、来店者の居住エリアを地図上で可視化し、属性・行動・地理情報を横断した分析を可能にしています。

図4:来店者分析画面。性年代構成比・来店リピートマップ・商圏の地図表現を組み合わせて顧客像を深掘り(画面・数値はダミーデータ)
こうしたダッシュボードをクライアントが自ら操作し、ロイヤリティマーケティングが一緒に見ながら「なぜこの結果になったのか」「次にどのような施策を打つべきか」をその場で議論できるようになりました。個別案件ごとに提供してきた分析ノウハウを、誰もが繰り返し活用できる分析サービスへと発展させたことは、ロイヤリティマーケティングにとって大きな変革となっています。COMBI.dは、ダッシュボードそのものではなく、同社が長年培ってきた分析知見をサービスとして提供するための基盤となっています。
価値観データで、購買接点の少ない業界にも顧客理解を届ける「ペルソナ別マーケティング」
購買データ分析と並ぶもう一つの強みが、価値観データ「PERSONA+(ペルソナプラス)」を活用した「ペルソナマーケティング」です。
同社は、約5万人規模のリサーチデータを基に生活者の価値観を分析し、その結果をPonta会員の行動データと組み合わせて拡大推計することで、1億人を超える会員一人ひとりに価値観タイプを付与しています。生活者を15のクラスターに分類し、「こだわり重視のリーダータイプ」や「干渉を嫌う個人主義者タイプ」といった、性別や年代だけでは捉えきれない価値観の違いを可視化できることが特徴です。
Tableauを用いて、この価値観データを可視化しています。クラスターごとの趣味・嗜好やメディア接触状況などをダッシュボード上で比較できるため、「国内・海外旅行を好む」「映画や動画をよく視聴する」「InstagramやFacebookの利用率が高い」といった生活者像を直感的に把握できます。
さらに、商圏データと組み合わせることで、「ある駅周辺にはどのような価値観を持つ人が多いのか」「どの年代・どのクラスターが集まっているのか」といった地域ごとの顧客像まで分析できます。属性・価値観・地理情報を横断して分析できることは、ロイヤリティマーケティングならではの強みです。
15のクラスターでどんな価値観を持つのかを分け、1億人すべての会員に価値観タイプを付与しています。希望する提携企業に対しては、そのデータをさらに購買データとクロスして、Tableau側で表現するということもしています。
この取り組みは、顧客との購買接点が限られ、自社のデータだけでは生活者像を把握しにくい業界で特に活用されています。不動産や金融、保険などの企業でも、価値観データを掛け合わせることで顧客理解を深め、より精度の高いマーケティング施策の立案につなげられるようになりました。Tableauは、属性・行動・価値観を組み合わせた分析結果を、誰もが理解しやすい形で共有する役割を担っています。

図5:PERSONA+ダッシュボード。居住者の特徴を性年代と15に分類されたペルソナタイプから把握

図6:PERSONA+ダッシュボード。詳しい情報はリサーチデータで補完し、価値観に基づく顧客理解を支援(画像2枚目はリサーチデータに基づく)
Tableau Publicでの発信が、官公庁との新たな事業機会を創出
ロイヤリティマーケティングは、Tableauを社内外の分析だけでなく、Tableau Publicを活用した情報発信にも生かしています。法人向けサイトで公開していたPonta会員数やメール配信可能件数、リサーチによる生活者の意識・価値観データなどをダッシュボードとして公開し、自社が保有するファーストパーティデータの規模や分析力を、インタラクティブに体験できる形で発信しています。
こうした取り組みは、新たな事業機会にもつながりました。2024年に公開した「家計調査|消費支出ダッシュボード」を総務省統計局が閲覧したことをきっかけに、同局が提供するビジュアライゼーションコンテンツ「統計Viz」の制作業務に関する競争入札へ参加し、受託につながったのです。
現在では、同社が支援した「統計Viz」はTableau Public上で延べ約52,000回、同社が公開した「家計調査|消費支出ダッシュボード」は延べ約23,000回閲覧されるなど(いずれも2026年8月3日時点)、データ活用やビジュアライゼーションの実績を伝える営業・広報資産としても活用されています。Tableau Publicでの発信は、分析成果を広く届けるだけでなく、新たな事業機会の創出にもつながっています。

図7:家計調査ダッシュボード。地域別・カテゴリ別の消費支出を時系列で可視化し、オープンデータを活用した消費動向分析を実現
他製品にはないTableauの価値
COMBI.dやペルソナマーケティング、Tableau Publicを活用した情報発信など、同社の分析サービスを支えているのがTableauです。長年にわたり活用するなかで、同社が特に評価しているのは、「直感的な操作性」「思い描いたアウトプットを形にできる表現力」「大規模データでも快適に扱える処理性能」の三つです。
直感的な操作性が、分析サービス開発のスピードを高める
同社では、複数のBIツールを比較・検証してきました。そのうえで、BI推進担当者が最も高く評価するのが、Tableauの操作性です。
例えば、ダッシュボード上のテキストを修正したい場合、Tableauであれば対象を右クリックするだけで編集できます。他のBIツールでは、設定画面を何階層もたどる必要があるケースもあり、日々の小さな操作の積み重ねが、開発効率に大きく影響するといいます。
細かい点ではありますが、操作動線が非常によく設計されており、ストレスなく分析を進められます。その結果、作成スピードも自然と向上していきます。この使いやすさは、他のツールとの大きな違いだと感じています。
思い描いた分析を、そのまま形にできる表現力
ロイヤリティマーケティングが提供する分析サービスでは、店舗分析やカテゴリ分析、併買分析、価値観分析など、クライアントごとに求められる分析テーマや表現方法が異なります。そうした多様なニーズに応えられることも、同社がTableauを評価する理由の一つです。
基本的な棒グラフや折れ線グラフだけでなく、バタフライチャートやカスタムマップなど、目的に応じたビジュアライゼーションを柔軟に構築できるため、「どのように分析結果を見せたいか」というゴールから逆算してダッシュボードを設計できます。COMBI.dやペルソナマーケティングで提供しているダッシュボードも、こうした表現力を生かして構築されています。
また、Tableauは国内でも導入実績が豊富で、システムベンダーやSI企業にも知見が蓄積されています。クライアント向けポータルサイトの構築や他システムとの連携を進める際にも、実装イメージを共有しやすかったことが、Tableauを採用・活用し続ける後押しになったといいます。
億単位のレコードでも快適な分析を支える処理性能
ロイヤリティマーケティングが扱うデータは、商品ごとの日次購買履歴や位置情報など、億単位のレコードに及びます。そのため、分析基盤には高い処理性能が欠かせません。
同社では、目的に応じて中間テーブルを設計したうえでAmazon Redshiftへライブ接続、あるいはCSVによる抽出接続を使い分けています。さらに、Tableauのデータエンジン「Hyper」を活用することで、データ容量を最大約20分の1まで圧縮できるケースもあり、大規模データでも高速な描画を実現しています。
こうしたデータ設計の工夫とTableauの処理性能を組み合わせることで、膨大なデータを扱いながらも、クライアントとの対話を止めない分析体験を支えています。
BIとAIの両輪で、“誰もが同じデータで判断できる”基盤へ
ロイヤリティマーケティングが次に見据えるのは、これまで培ってきたデータ活用の力をAIと組み合わせ、より多くの人がデータを起点に意思決定できる環境を実現することです。目指すのは、一部のデータ分析の専門家だけではなく、ビジネスに関わる誰もがデータを使い、迅速に判断し、次のアクションへつなげられる世界です。
その実現に向けて、同社ではTableau MCPやTableau Agentなどの活用も視野に入れながら検証を進めています。一方で、森角氏は、AIを活用する時代だからこそ、その土台となるBIの重要性はさらに高まると考えています。誰もが同じデータを、同じ意味で理解できる基盤があって初めて、AIも正しく力を発揮できるという考え方です。
AIによってBIが不要になるのではなく、BIの使われ方が変わっていくと考えています。今後、データを活用するのは、アナリストなどの専門家だけではありません。営業や企画、経営など、誰もが日常的にデータを扱うようになります。だからこそ、信頼できるデータを分かりやすく見せるBIの役割は、むしろ重要になると思います。

図8:Tableau MCPを活用した「BI × AI」による施策立案のシーン(画面・数値はダミーデータ)
AIの活用が広がるこれからも、その根幹にあるのは、誰もが同じデータを基に議論し、判断できる環境です。ロイヤリティマーケティングは、BIとAIを両輪としたデータ活用を通じて、提携企業やクライアントとともに、より速く、より質の高い意思決定を支える取り組みを進めていきます。
※ 本事例は2026年9月時点の情報です