弁護士ドットコム、TableauでSaaS成長のエンジンを構築
PLGからAIプロダクトのPMF検証まで、プロダクト成長を加速
利用ログにもとづく提案でカスタマーサクセスを高度化
イベント~商談まで、マーケティングの費用対効果を全体最適化
弁護士ドットコム株式会社(以下:弁護士ドットコム)は、Tableauを活用し、プロダクト・カスタマーサクセス・営業・マーケティングを横断してデータ活用を推進しています。プロダクト領域では、クラウドサインにおける無償から有償転換の分析 や、国内初のリーガル特化型AIエージェント「Legal Brain エージェント」のPMF(Product-Market Fit:製品が市場のニーズに適合している状態) 指標の可視化により、改善サイクルを高速化しています。カスタマーサクセスでは、利用ログにもとづく活用度の自動検知や、管理画面からワンクリックでTableau に遷移できる仕組み を整備し、顧客提案の質を向上しています。
営業・マーケティングでは、広告・イベント・Salesforce・プロダクトログを統合し、流入〜受注までのファネル全体を一元可視化することで、施策のROIを迅速に把握できるようになりました。弁護士ドットコムは、部門横断でデータを共有することで、意思決定の精度とスピードが高まり、SaaS事業の持続的な成長を支える基盤が確立されています。
弁護士ドットコムについて
弁護士ドットコム株式会社は、"「プロフェッショナル・テック」で、次の常識をつくる。"をミッションに、法律相談プラットフォーム「弁護士ドットコム」や契約マネジメントプラットフォーム「クラウドサイン」を提供するリーガルテック企業です。電子契約市場を牽引するクラウドサインに加え、AIを活用した法律分野向けサービス「Legal Brain エージェント」など複数のSaaSを展開し、法務業務のデジタル化と効率化を推進しています。
弁護士ドットコムの挑戦
弁護士ドットコムでは事業拡大に伴い、プロダクト・カスタマーサクセス・営業・マーケティングの各部門でデータ活用の重要性が高まっていました。しかし当時は、複数データソースからCSVを集め、スプレッドシートで結合する運用が中心で、データ量の増加により作業負荷と属人化が限界に達していました。
データ本部 本部長 CDO(最高データ責任者)の川端氏は入社した当時を次のように振り返ります。
「現場では、Redashでその都度クエリを書き、CSVをダウンロードしてスプレッドシートで結合していました。データが増えるほど処理が重くなり、限界を感じていました。」
スプレッドシートに依存した運用は、KPIの変動要因を深掘りできないという構造的な課題も生んでいました。また、データはBigQueryに存在していたものの、部門ごとにバラバラに使われていたため、“全社で同じデータを見る”という文化や仕組みが確立できていませんでした。
こうした状況を改善するため、同社はまずBigQueryを全社共通の設計に再整理し、集計処理の自動化を進めました。分断されていた分析環境を見直し、整合性の取れたデータ基盤を整備することで、データの標準化が進みました。しかし、基盤が整っても、全社が同じ指標を見て議論できる環境がなければ、部門横断の意思決定につながりません。
そこで大きな役割を果たしたのがTableauです。Tableau を導入したことで次のような変化が生まれました。
- スプレッドシートでは扱えない大量データの可視化が可能に
- Redashに依存した「毎回クエリを書く」運用からの脱却
- 表作成中心の作業から 原因を深掘りする分析へ転換
- 部門を越えて同じダッシュボードを参照できる共通理解の構築
川端氏は次のように語ります。
「他のツールでは、用途に応じてクエリを書き直したりダッシュボードを追加したりと、“都度、頑張らないと実現できない”場面が多くありました。Tableauなら一つの汎用的なダッシュボードを用意するだけで、誰でもそこから直感的に深掘りして活用できます。」
BigQueryとTableauを組み合わせたことで、弁護士ドットコムは “結果を確認するための分析” から “事業成長につながる分析” へと進化しました。正しく整えたデータを、正しく使い、正しく意思決定につなげるための全社的なデータ活用基盤が確立されつつあります。
他のツールでは、用途に応じてクエリを書き直したりダッシュボードを追加したりと、“都度、頑張らないと実現できない”場面が多くありました。Tableauなら一つの汎用的なダッシュボードを用意するだけで、誰でもそこから直感的に深掘りして活用できます。
Tableauが弁護士ドットコムをどのようにサポートしているか
無償から有償への転換と、AIプロダクトのPMF検証をデータで加速
プロダクト領域では、成熟プロダクトである「クラウドサイン」や 法律分野向けAIプロダクト「Legal Brain エージェント」などを含む、弁・税・BL など複数のサービスでTableauを活用し、改善の精度とスピードを高めています。
クラウドサインでは、無料利用から有料契約への転換プロセスにおける歩留まりを可視化し、契約締結体験やプロダクト改善につなげています。また、PLG(Product-Led Growth:利用行動にもとづき成長を促す手法)では、ユーザーの行動ログと転換率を横断的に分析することで、「どのような行動が有償転換率を押し上げるのか」という示唆を得られるようになり、施策の優先順位づけに活用しています。
クラウドサインでは、無料利用から有料契約までのファネル全体を可視化し、転換率のボトルネックを把握しています。そのうえでPLGの取り組みとして、ユーザーの行動ログと転換率を分析することで、「どの行動が有償転換率を押し上げているのか」を明らかにし、施策の優先順位づけに活用しています。

PLGを支える有料転換までの各歩留まりKPI

無償期間におけるユーザーの送信件数別のセルフ申込率
一方、Legal Brain エージェントでは、利用ユーザー数、質問数、参考文献のクリック状況、法分野別の回答精度などを可視化し、PMF(Product-Market Fit:製品が市場ニーズに適合している状態) を判断するための材料を整備しています。データ分析の結果、初回の利用体験が成約率に大きく影響することもわかってきており、最初の数回で適切な回答が提示されているかを重点的に確認する運用がなされています。
データ本部の冨田氏は次のように語ります。
「最初の数回の利用体験が継続の分岐点になります。回答の質や根拠の提示をTableauで確認しながら、顧客へのフォローアップやプロダクトの改善を進めています。」

リーガルブレインの利用状況とPMFを可視化
最初の数回の利用体験が継続の分岐点になります。回答の質や根拠の提示をTableauで確認しながら、顧客へのフォローアップやプロダクトの改善を進めています。
利用行動にもとづく提案で、カスタマーサクセスの提供価値を向上
プロダクト領域での可視化が進むなか、カスタマーサクセスでもTableauが重要な役割を果たしています。
従来、クラウドサイン事業のカスタマーサクセスでは、Redashから複数のCSVをダウンロードし、スプレッドシートで結合して利用状況を確認していました。しかし、データ量の増加に伴い処理が重くなり、属人化や分析精度の限界が課題となっていました。
現在はTableauを活用することで、ログイン頻度、送信数、契約締結までの所要時間、承認ステップのボトルネックなど、顧客の利用行動を多角的に把握できるようになっています。
特に、利用が増加しているチームや低下しているチームを自動で抽出するダッシュボードは、「どの顧客に、どのようなタイミングで、どのような提案を行うべきか」の判断を大きく支援しています。さらに、クラウドサインの管理画面からワンクリックでTableauに遷移できる仕組みにより、手軽に顧客の利用状況が把握できるようになり、本質的な顧客支援に集中できるようになりました。
このように、利用ログとTableauの可視化を組み合わせることで、顧客の状況に応じた最適な提案が可能となり、サービス価値の向上と継続利用の後押しにつながる体制が整備されています。

顧客ごとのクラウドサイン利用状況の把握

顧客全体のサービス利用頻度
イベント流入から商談化まで、ファネル全体の費用対効果を可視化
プロダクト・カスタマーサクセスに続き、営業・マーケティング領域でもTableauを活用した統合可視化が進んでいます。
従来は、広告媒体・イベントツール・Salesforce・プロダクトログなどのデータを個別にダウンロードし、スプレッドシートで結合していました。しかし、データ量の増加とともに処理負荷が高まり、分析が困難になっていました。
現在は、これらのデータをBigQueryに集約し、Tableauで一元的に可視化しています。チャネル別の獲得件数、架電後の商談化率、商談の内訳、売上貢献などを最新データにもとづき迅速に把握できるようになりました。
マーケティング施策全体において、流入チャネル別の投資額と商談・売上の関係を示すROASレポートを整備し、手作業の集計工数を大幅に削減しています。営業向けには、架電状況やフェーズ遷移を可視化するダッシュボードを提供し、どのリストにどのようにアプローチすべきかを判断する材料として活用されています。
これらの取り組みにより、施策効果の把握から改善サイクルまでのスピードが大幅に向上し、営業・マーケティング領域でもデータ起点の意思決定が定着しつつあります。

広告費に対してどの程度売上が創出されたかを示すROAS分析

営業キャンペーンに対する架電・商談数・商談化率・受注数・受注率を一元的に可視化
他社にはないTableauの価値
自由度の高い深掘り分析と全社ガバナンスを両立できるBI基盤
弁護士ドットコムは複数のBIツールを比較した結果、高度な表現力と組織規模でのガバナンスを同時に実現できる点を高く評価し、Tableauを選定しました。
特に評価されたのは、ユーザーが直感的に深掘りできる操作性です。ユーザー名や日付をクリックするだけで絞り込みが進み、分析の流れを止めることなく思考をそのまま可視化できます。
こうした自由度は、フィルターアクション・セットアクションなどのアクション機能や、LOD(詳細レベル)計算による表現力によって支えられています。非エンジニアでも自然な操作で深掘りでき、複雑な分析もコードレスかつ透明性を保ちつつ実装できます。
さらに、少数精鋭のメンバーが汎用性の高いダッシュボードを開発し、それを迅速かつ効率的に全社へと展開する運用モデルが確立されています。
川端氏は次のように語ります。
「汎用的で質の高いダッシュボードを全社に展開していくことで、データを視ることが習慣化し、仮説に基づいたデータ・ドリブンな意思決定が各部門で可能となります。Tableauならそれが実現できると感じました」
APIを通じて運用基盤まで拡張できる、Tableauの開かれた設計思想
弁護士ドットコムは、Tableauの表現力や操作性だけでなく、公開APIを通じて運用基盤そのものを自社仕様に最適化できる“開かれた設計思想”を高く評価しています。REST API、Document API、JavaScript API、Tableau Server Client(TSC)など豊富なAPI群により、可視化だけでなく運用プロセス全体を柔軟に作り込める点が大きな強みだと、冨田氏は語ります。
同社はこれらのAPIを活用し、フォルダ構成の自動生成、ユーザー/グループの権限設定、開発環境から本番環境へのデプロイといった Tableau の一連の運用フローを改善するため、独自に「Tableau Tools」を開発しました。
開発時は開発環境のBigQueryを参照し、レビュー完了後にAPIによってデータソースを本番用に切り替え、自動デプロイが行われる仕組みを構築しています。さらにSlackを用いた権限申請フローなど、日々の運用改善も進めています。
川端氏は次のように語ります。
「TableauのAPIが公開されていることで、自社環境に合わせた運用設計を柔軟に作り込むことができました。運用が整理され、全社に安心して展開できる基盤になっています」
こうしたAPI活用によって、Tableauの運用は属人的にならず、“整理された状態でスケールできる運用体制”が実現しました。ダッシュボードやデータソース更新の統制、フォルダ構造の標準化、開発環境と本番環境の完全分離など、組織の成長に合わせて必要となるガバナンスを自社流に実装できている点は大きな成果です。
Tableauの公開API群は、可視化にとどまらない拡張性を提供します。
- 運用フローの自動化
- プロジェクト・パーミッション構成のコード化
- 開発環境・本番環境の二環境運用の効率化
- Slack との連携
高度な表現力と直感的な分析体験に、APIによる運用最適化と業務への組み込みやすさが加わることで、Tableauは弁護士ドットコムにとって“全社のデータ活用を支える重要な基盤”となっています。

REST API を活用したプロジェクト階層・権限設定の自動化

開発環境・本番環境間でのワークブック移行を自動化するTableauデプロイツール
全社に広がる“データを視る文化”をさらに強固に
BigQueryとTableauを組み合わせたデータ基盤が整備され、プロダクト・カスタマーサクセス・営業・マーケティングといった各部門でデータ活用が広がった今、弁護士ドットコムは次のステップとして、“全社でデータにもとづき議論できる環境づくりと、その文化の定着”を目指しています。
その第一歩となるのが、Tableauを使いこなせるViewerの裾野を広げることです。初めてTableauに触れる社員は「何ができるのか」を具体的に描けず、数字を見るだけで深掘りまで到達できないケースがあります。これを解消するため、同社ではビューワー向けのハンズオン研修や段階的な学習機会を提供し、自らデータにアクセスして深掘りできる社員を増やす取り組みを進めています。
加えて、どのダッシュボードがどれくらい使われているのか、事業部ごとに利用状況を継続的に把握しながら運用を改善している点も大きな特徴です。
高井氏は次のように語ります。
「事業部ごとに、どんなダッシュボードがよく使われているのかを把握しながら改善しています。」

Tableauのグループ別利用状況
事業部ごとに、どんなダッシュボードがよく使われているのかを把握しながら改善しています。
こうした“利用状況の可視化”と“継続的な学習の場”の両輪により、同社は、“ダッシュボードを見るだけ”から“自分で問いを立てて深掘る”文化へと着実に進化しています。
弁護士ドットコムはこれからも、“同じデータを見て議論し、改善アクションにつなぐ”というデータ文化を全社で育てながら、プロダクト・カスタマーサクセス・営業・マーケティングの全領域で、より高度なデータドリブンな意思決定を推進していくことを目指しています。
