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Instagram 投稿をTableau で分析する「Pixial」、コロナ禍で変化した生活様式をデータから浮き彫りに

Pixial のサービス化に向け初期学習の敷居が低いTableau を採用

Instagram 投稿の分析で見えてくる「新たな生活様式」の真の姿

今後は可視化だけではなくインサイトの提供まで行うサービスに

株式会社ジャパン・カレントは、2015年に設立されたデジタルマーケティングサービスを提供する企業です。デジタルマーケティングに加えAIによる画像解析にも強みを持ち、SNS上に投稿された膨大な画像データから一般消費者の趣向やトレンドを分析し、マーケティングに活用するレポートサービスなどを展開しています。データ分析力やAIをはじめとする技術実装力を武器に、顧客のデジタルマーケティング活動を強力に支援しています。

2020年9月には、ソーシャル・ネットワーク分析サービス「Pixial(ピクシャル)」の提供も開始。Instagram上の膨大な公開データから、指定したキーワード(ハッシュタグ)に関するデータを、利用者自ら分析できるクラウドサービスを提供しています。このPixialにおけるデータ分析・可視化に、Tableau Embedded Analytics が活用されています。

Pixialのサービス化に向け初期学習の敷居が低いTableauを採用

Pixialの開発に着手したのは2019年春。当初はユーザー企業から寄せられた「Instagramのユーザーのことをより深く知りたい」という要望に対し、個別対応するために行われた取り組みだったと、ジャパン・カレント 代表取締役社長の北原 信之 氏は振り返ります。

「Instagramの情報は画像がメインですが、これらの画像からインサイトを得たいというご要望をいただきました。その翌月にはPixialの前身となるサービスを作り上げ、このお客様への提供を開始しています。当初は同様のニーズがどれだけあるかわからなかったので、このお客様専用のサービスとさせていただきました」。

その後、同様のニーズを複数の顧客から受けることになり、Pixialのサービス化を決定。ここで1つの課題になったのが、顧客ごとに異なる分析内容へのニーズに、どのように応えるかでした。

「個別提供の段階では、独自の分析・可視化ツールをPythonで作成していました」と言うのは、ジャパン・カレントで取締役 CTOを務める志田 暁 氏。しかし多数の顧客に対して正式にサービス提供するには、開発者の負担が大きくなりすぎることを懸念したと語ります。そこで2020年5月頃からBIプラットフォームの検討に着手。最終的にTableauの採用が決定されました。

「Tableauはプログラミングに詳しくない人でも、比較的簡単にダッシュボードが作れます。初期学習の敷居が低いのです。またお客様に提供するものなので、ダッシュボードの見栄えや表現力も重視しました。Tableau Publicのサンプルを複数見た上で、デザイン的にも十分美しいものが作れると評価しました」(志田氏)。

前述のように2020年9月には、Pixialを正式にリリース。ジャパン・カレントがTableauを使うのは今回が初めてですが、導入決定からわずか3か月で提供にこぎつけています。

Tableauはプログラミングに詳しくない人でも、比較的簡単にダッシュボードが作れます。またお客様に提供するものなので、ダッシュボードの見栄えや表現力も重視しました。

このPixialには大きく3つの特長があります。

第1の特長は、投稿者数や「いいね」数などの時系列データが表示可能なことです。これによってハッシュタグのトレンドやイベントを、簡単に把握できるようになります。なお分析の時間軸はTableauの機能を活用することで、「月」「週」「日」「時間」など自由に変更することが可能です。

第2は、ハッシュタグを、自由に指定できることです。特定の言語に依存しないため、外国語のハッシュタグを指定し、海外での動向分析や、「海外からみた日本」といった切り口で分析することも可能です。また同じハッシュタグの投稿の中から、分析対象を絞り込んだ分析も行えます。

そして第3が、ハッシュタグで抽出したInstagram上の公開画像の特徴を独自のAIで解析し、画像の特徴に応じて分類表示できることです。この機能は2021年3月に提供が開始されています。

Instagram投稿の分析で見えてくる「新たな生活様式」の真の姿

ジャパン・カレントではPixialの提供と並行して、Pixialを活用した分析レポートの公開も積極的に行っています。これによって新型コロナウイルス感染症拡大前後の変化が、データにもとづいた形で可視化されています。

「2020年10月19日には『北海道旅行』というテーマでの分析レポートを公開していますが、個々の投稿からだけでは見えなかったことや、感覚的にしか把握できていなかったことが、より鮮明に見える結果となりました」と言うのは、ジャパン・カレントで取締役 CFOを務める洞野 卓宏 氏。その一例として挙げるのが、時系列での投稿数の変化です。

「2020年4月に緊急事態宣言が出された後は、投稿そのものが大幅に減っているのはもちろんですが、投稿時間にも大きな変化がみられました。それ以前は夜の時間帯に一日を振り返った投稿が多かったのに対し、緊急事態宣言後は投稿時間がばらつくようになったのです。その後8月~9月には、緊急事態宣言前と同じような傾向が見られるようになりました。これによって人々の行動様式が、平常時に戻りつつあったことが見て取れます」。

また今年は雪の画像を使った投稿が少ないことも、注目すべきポイントだと洞野氏。その最大の理由はアジア系の旅行者がいなくなったからだと指摘します。「日本人は色とりどりの花畑など、夏の風景を投稿する傾向が見られるのに対し、アジア系旅行者は雪が珍しいこともあり、冬の投稿が多い傾向にあるのです」。

10月27日には、ハッシュタグ「ハロウィン」で分析した消費活動の考察レポートも公開。ここでも生活様式の変化が見られると言います。

「『#ハロウィン』と一緒に付加されたハッシュタグの上位は、2019年は東西有名テーマパーク関連のものでしたが、2020年にはこれがほとんど見られませんでした。その代わりに増えているのが『#犬』などのペット関連のハッシュタグです。自宅でペットに仮装させるという、新たな楽しみ方が広がっていることが伺えます」(洞野氏)。

Pixialによる分析で、個々の投稿からだけでは見えなかったことや、感覚的にしか把握できていなかったことが、より鮮明に見えるようになりました。このような知見を得ることで、より適切なマーケティングが可能になるはずです

今後は可視化だけではなくインサイトの提供まで行うサービスに

この他にも洞野氏は「在宅期間中の状況が時間の経過と共にどのように変化しているのかもわかります」と指摘。緊急事態宣言直後は自宅で調理した料理写真の投稿が多くなりましたが、その数か月後にはスーパーのお惣菜などできあいのものが増えているのだと言います。「多くのマーケティング担当者は、外出自粛で自炊など家庭内の生活を充実させる消費者が継続的に増えると想定したと思いますが、実際には必ずしもそうではなく、料理に関しては数か月で在宅疲れが出ていることがわかります。このような知見を得ることで、より適切なマーケティングが可能になるはずです」。

また北原氏も次のように指摘します。

「これまで消費者の情報を得るには、インタビューやアンケートに頼るしかありませんでした。しかしこれらの方法では、質問する側の恣意的な予測が少なからず含まれてしまい、消費者の正しい姿を知るには限界があります。これに対してInstagramの投稿は消費者の視点をそのまま切り取ったものであり、そこには恣意性が入り込む余地がありません。これを数多く集めて分析することで、消費者の『素の姿』を浮き彫りにすることが可能になります」。

また実際にPixialで分析することで、消費者の多様性も改めて認識できると北原氏。これまで発見できなかったセグメントを見つけ出すことも容易になると語ります。

「もちろんここで最も重要なのは、可視化したデータからどのようなインサイトを抽出するかです。現在のPixialはまだ可視化を実現した段階に過ぎませんが、今後はインサイトまで提供できるサービスに成長させたいと考えています。Tableauの柔軟性はこの領域でも、大きな貢献を果たすはずだと期待しています」。

Instagramの投稿は消費者の視点をそのまま切り取ったものであり、そこには恣意性が入り込む余地がありません。これを数多く集めて分析することで、消費者の『素の姿』を浮き彫りにできます。