現代のビジネス環境では、データの価値はますます高まっています。しかし、多くの企業が直面するのは、膨大なデータをどのように活用すればよいのかという悩みです。データの収集方法や分析手法、さらには得られた洞察をどのように具体的なアクションに結びつけるかなど、課題は多岐にわたります。
本記事では、データ活用の具体的な活用方法や手順などを詳しく解説します。現代のビジネス環境では、データの活用が企業の成功に不可欠な要素です。データ活用の事例も紹介するので、データをどのように収集と分析をし、活用するかを参考にしてみてください。
データ活用とは?
データ活用は、企業の競争力を高めるための重要な戦略です。適切なデータ活用により、意思決定の質が向上し、効率的な運営が可能になります。具体的にどのようなことをおこなうのか、データ活用について詳しく解説します。
データをビジネスに活用すること
データ活用とは、収集・蓄積したデータをビジネスに役立てることです。企業は日々の業務のなかで、顧客データや売上データなど多くのデータを蓄積します。その膨大なデータを取捨選択し、分析と加工をおこなって業務改善や事業の発展につなげる取り組みです。
総務省発表の「デジタルデータの経済的価値の計測と活用の現状に関する調査研究(2020)」によると、データ活用をしている企業は大企業で9割、中小企業でも半数以上が取り組んでいると報告されています。
近年はオンラインビジネスやSNS広告など、ビジネスで扱うデータも膨大になってきました。今後のデジタル社会においてデータをどのように使いこなすかが重要となり、データ活用がビジネスのスタンダードになっていくといえるでしょう。
データ活用とデータ分析の違い
データ活用とデータ分析の主な違いは概念です。データ分析は、収集したデータを整理し、分析するプロセスをさします。具体的には、データの傾向やパターンを見つけ出し、意味や仮説を発見することです。
一方でデータ活用とは、データ分析の結果をもとに意思決定や戦略の策定に役立てるプロセスをいいます。データ分析で得られた知見をビジネスや業務に反映させることです。
つまり、データ分析は「データから知見を得ること」であり、データ活用は「得られた知見をビジネスに生かすこと」となります。概念は異なりますが、データ活用の過程にデータ分析があり密接に関係しているといえるでしょう。
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データ活用をする3つのメリット
ビジネスにおいてデータ活用を取り入れる主なメリットは、以下の3つです。
- 業務の効率化
- 顧客満足度の向上
- マーケティング精度の向上
それぞれのメリットを把握して、データ活用の導入を検討しましょう。
業務の効率化
データ活用をおこなうことによって、業務効率化につながる施策を打てるようになります。たとえば、ベテラン社員が蓄積しているナレッジやリスク管理を分析し、現場で結果を共有することで従業員の生産性向上につながるでしょう。
ほかにも、リアルタイムでデータを可視化して迅速な意思決定につなげたり、業務の効率化を図ってコストを削減したりすることも可能です。業務フローや製造ラインにおいて、業務プロセスの最適化を図りたいときにもデータ活用が最適でしょう。
顧客満足度の向上
データ活用で収集した顧客データを利用して、ニーズにあったサービスや製品を提供することで、購買意欲や顧客満足度の向上が可能です。データ活用によってパーソナライズされたサービスを提案でき、新たな付加価値やビジネスを探索できるようになります。
ほかにも、リピート率の向上や新規顧客の獲得も可能です。企業の想定するターゲットに適したマーケティングができ、自社のブランド価値を高められるでしょう。
マーケティング精度の向上
データ活用で収集したデータを分析することで、期待値の高いターゲットの抽出や費用対効果の高い集客の施策など、マーケティングの精度と効率を上げられます。需要予測にもとづいたマーケティング戦略を立案することで、競争力の強化も可能です。
企業は市場や顧客のニーズを把握し、それに沿った製品やサービスを提供しています。こうしたニーズを正確に捉えるためには、データ活用が重要です。収集したデータを効果的に活用することで、マーケティング戦略の精緻化や顧客対応の強化が可能になるでしょう。
データ活用の基本的な5つの手順
データ活用の基本的な手順は、以下の5つです。
- 目的と課題の明確化
- データ収集
- データの可視化
- データ分析
- アクションプランの策定
ひとつずつ詳しく解説していきます。
1. 目的と課題の明確化
まず、データ活用で実現したい目的や、解決したい課題を明確にしていきます。顧客満足度の向上や生産コストの削減など、具体的な目的に対してデータ活用がどのように貢献するのかを考え、設定した目的にあわせて分析課題を決めていきましょう。
たとえば、顧客満足度の向上を目的とする場合、満足度増減の要因を特定する課題が考えられます。生産コストの削減を目的とするならば、業務プロセスの見直しが必要です。目的を達成するためにはどのようなデータを分析するべきかも考えておきましょう。
2. データ収集
目的と課題が決定したら、必要なデータを収集して設定していきます。データの収集方法や必要なリソースは事前に確認しておき、各部門の企業データだけでなく外部やパートナー企業からも必要データを集めておきましょう。
収集したデータは統合し、全体像を把握しやすくします。これによって企業の課題や機会発見にもつながるので、ビジネス戦略への反映も可能でしょう。
3. データの可視化
収集したデータは数字や文字のままでは状況がわかりにくいため、ツールを用いてグラフや表にして可視化をします。データクレンジングとも呼ばれる工程で不備データや外れ値を除外することで、可視化作業の効率が上がります。また、可視化によって異常が一目でわかるため、上司や取引先など第三者にもわかりやすくデータが導き出す発見を伝えることが可能です。
4. データ分析
可視化したデータをもとに、目的や課題にあわせた分析をおこなっていきます。ここではデータ分析の専門知識やスキルを備えた人材が必要です。また、BIツールといったデータ分析ツールも活用して、可視化したデータの規則性や異常性の原因や要因を深堀って分析していきましょう。
一見関係なさそうに見えるデータ同士も、関連性や傾向など見逃さないようにすることが大切です。分析によって顧客の行動パターンやトレンドなど、ビジネスの新たな価値を生み出す情報を発見できるでしょう。
5. アクションプランの策定
分析した結果にもとづいて、具体的なアクションプランを策定していきます。たとえば、新しいマーケティング戦略の立案や業務プロセスの改善などです。
データ活用で得た情報は、実際の業務や戦略に反映させることによって価値を生み出せます。分析結果を反映させたあとは必ず効果検証もおこない、必要に応じてデータ活用のPDCAを回していきましょう。
データ活用の3つの課題
データ活用に取り組む際に課題となることが3つあります。
- 個人情報の取り扱いに注意する
- 手間とコストがかかる
- 最低限の知識とスキルを身につける必要がある
それぞれの注意点を把握してから、データ活用に取り組んでいきましょう。
個人情報の取り扱いに注意する
データ活用では多くの個人情報を取り扱うため、第三者への漏洩が起きないようセキュリティ面に注意が必要です。データの暗号化や閲覧制限をかけるなど、しっかりセキュリティ対策をおこないましょう。
万が一情報漏洩によってプライバシーを侵害してしまうことがあった場合、企業のイメージは大きく損なわれてしまいます。個人情報は名前や電話番号を一部非表示にしたり、ほかの文字列に置き換えたりと、個人を特定できない形式で保存することやデータ分析する前に属性データのみにするなど徹底しましょう。
手間とコストがかかる
データ活用にはある程度の手間とコストがかかります。手間としては、収集・分析したデータを施策に落とし込む工程が不可欠です。コスト面ではデータ収集のためのツールや処理システムの導入など、さまざまなものが必要になります。
また、データの質や分析の深さによってもコストは大きく変動します。まずはスモールスタートでおこない、手間とコストに見合った成果を得られるかどうかよく検討していきましょう。
最低限の知識とスキルを身につける必要がある
データ活用には最低限のデータ関連知識とスキルが必要です。ただし、専門的なスキルがなくても、データを視覚化して理解しやすくするツールを活用すれば、誰でもデータの分析や効果検証をおこなえます。
たとえば、データサイエンティスト協会では効果的なデータ活用に以下のようなスキルを推奨しています。
- 情報科学について理解し、実行する力
- ビジネス課題を解決する力
- データ活用にもとづく施策を運用する力
ただし、これらをすべて備えた専門人材がいなくても、BIツールを活用することでスキルの不足を補えます。また、必要に応じて外部サポートを活用するのもひとつの手段です。ツールの力を借りて、データ活用を身近なものにしましょう。
データ活用をスムーズにするBIツール「Tableau 」とは
「Tableau」とは、誰もがデータの可視化と分析をかんたんにおこなえるBIツールです。ドラッグ&ドロップでかんたんにグラフやチャートを作成でき、専門知識がなくてもデータ分析がおこなえることをコンセプトにしています。
ほかにも、GoogleアナリティクスやSalesforceなどのアプリケーションと連携もできるので、データの一元管理も可能です。スムーズなデータ分析と直感的な操作性で、迅速な意思決定と業務の効率化を実現できるでしょう。
Tableau を使ったデータ活用の事例
ここでは、Tableauを使ったデータ活用の事例を紹介します。BIツールの導入を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
事例1.世界中から集めたデータを視覚化|日産自動車株式会社
日産自動車株式会社は、自動車の製品とサービスを提供するテクノロジー企業です。世界中にサプライチェーンやディーラーがあり「スプレッドシートの海」と称されるほど膨大なデータを抱えていました。
膨大なデータを活用すべくTableauを導入したところ、リーダシップによるデータ擁護やコラボレーション強化の促しに成功します。これにより、社員全員が同じデータ言語を話すようになり、現在では本社をはじめ世界中の関連会社の拠点までTableauを採用しています。
事例2.製造部門でのデータドリブン文化を確立|住友ゴム工業株式会社
グローバルに事業を展開する住友ゴム工業株式会社は、社内に乱立するITシステムで各種データをバラバラに管理していました。いざデータを活用するとなると時間と手間がかかる工程を必要としており、その状況を打破すべく導入されたのがTableauです。
Tableauを導入したことで現場の社員が自らデータを可視化できるようになり、分析環境の整備に成功しました。これによって毎朝30分ほどかかっていたデータ入力作業や、会議での数値報告が不要になるなど、さまざまな作業の効率化につながっています。
データ活用をするための3つのポイント
データ活用をおこなうために大切なポイントは以下の3つです。
- データ活用の目的と課題を明確にする
- データを活用できる業種や領域を把握する
- データ分析のリソースを確保する
ひとつずつ解説していくので、しっかりおさえておきましょう。
データ活用の目的と課題を明確にする
データ活用の目的と課題は必ず明確にしておきましょう。目的なくデータを収集しても課題の解決にはつながらず、集めるべきデータもはっきりしません。結果、無駄な手間とコストがかかるだけになってしまいます。
データを活用する目的が明確になれば、データ分析の焦点を絞ることが可能です。これによって具体的な問題解決に向けた分析ができ、効果的なインサイトを得られるようになるでしょう。
データを活用できる業種や領域を把握する
データ活用を検討している場合、まずはデータの活用ができる業種や領域を把握しておくことが大切です。データ活用に適した主な業種や領域は以下の通りです。
- 製品、サービス開発
- マーケティング
- 保守、サービス
- 製造業
- 小売業
- 金融業界
各業種や領域ごとにデータの特性や活用方法は異なります。たとえば、製造業では生産効率の向上や品質管理にデータ活用が最適です。適切なデータを収集するためには、業種や領域ごとの特性も理解しておきましょう。
データ分析のリソースを確保する
データ活用において、分析をおこなう人材の確保は必要不可欠です。ただ、日本ではデータ分析をおこなう人材が不足しており、リソースを確保できない企業も多くいます。
総務省が発表した「令和2年度版情報通信白書」によると、中小企業ではデータ分析をおこなう際に専門でない人が担当している割合が50.6%もいることがわかりました。また、外部に委託する場合もセキュリティ面などの課題から、全体で20%を下回っているのが現状です。
人材の確保やリソース不足が懸念されるときはBIツールの導入を検討してみましょう。企業に蓄積されたビックデータを抽出し、迅速な意思決定を支援します。
BIツールを使ってデータ活用を実現させよう
データ活用は、現代のビジネス環境において企業の競争力を高めるための重要な手段です。データの収集や分析など、さまざまな改善のプロセスを通じて、企業は迅速かつ効果的な経営判断ができるようになります。
顧客のニーズを分析することでマーケティング戦略を最適化できるほか、業務プロセスの効率化も可能です。データ活用を通して新たなビジネスチャンスを見つけ出し、持続可能な成長を実現できるでしょう。ぜひ、BIツールを使ってビジネスの成功へとつなげてみてください。