日本企業における人工知能の実装について

人工知能(AI)は、今後さらに注目されていくと考えられています。特に、少子高齢化社会への加速が進む日本では、企業は労働力不足を補うために生産性の向上を求めています。その背景もあり、現代の日本では企業におけるAIの実装によって生産力を高めていくことが注目されています。

AIは日常生活の至る場所で活用されるようになってきています。しかし、実際にAIを業務に導入している企業はまだ多くはありません。ここでは、日本企業がAIを実装している現状や課題、そして、AIの導入へ積極的に動いている日本企業を紹介していきます。

日本企業のAIの実装における現状

IDC Japanの調査では、2020年時点での日本国内における人工知能の市場は1,579億円、5年後の2025年には210%増の4,909億円になると予測されています。数字だけで見ると、人工知能は5年間で市場規模が3倍以上になる高成長が期待されている分野となります。

しかし、第一生命研究所の調査では、人工知能の国内実装規模は5%にも満たないという結果が出ています。また、実証実験(PoC)を行い、AIの実装を検討している企業の数も15%ほどにとどまっています。つまり、人工知能の実装は日本企業にまだ浸透していないという現状が見えてきます。

データだけを見ると、人工知能の市場自体は活発である反面、AIの導入においては多くの企業が未だ手探り状態ということがいえるでしょう。また、人工知能はまだ成長期にあるため、今後AIの研究や開発が進んでいくと同時に、日本企業のなかでもAIを導入していく企業が増えていくと見込まれています。

人工知能実装における課題

では、なぜ企業における人工知能の実装が滞っているのでしょうか。その背景には、人工知能の導入が抱える課題があります。まず一つ目に、コスト面の問題があがります。人工知能を実装するためには、企業が多大な開発コストを投資する必要性があります。その反面、即座に見えるリターンが得られないため、多くの企業が足踏みをしている状況となっています。

次に、AIを導入した後に起こるトラブルや、サイバー攻撃が起きた時のリスクや責任所在が不透明なため、AIを実装することに躊躇している企業が多いことがあげられます。情報漏洩のリスクやサイバーアタックという問題は、多大なデータを扱うAIのデメリットのひとつとして取り上げられることもあります。

また、人工知能を扱うことのできる人材が不足しているということも、企業がAIの実装に踏み切ることのできない理由となっています。人材育成やAI人材の新規雇用には更なるコストがかかります。よって、AI導入のメリットを理解していてもなかなか実装ができない企業が多いのです。

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人工知能の導入をしている日本の企業

日本国内では、あらゆる課題を乗り越えて人工知能の導入を積極的に実施している企業も存在します。ここでは、AIの実装に取り組んでいる日本の企業を3つ紹介していきます。

NTT

NTTグループでは、「corevo(コレボ)」というブランドネームを用いてAIを実装する取り組みを行なっています。ブランド名は「co-revolution(コラボレーションで革新を起こす)」というところからきており、AIが持つ新たな可能性を追求しています。

「corevo」では、NTTグループ全体におけるAI関連の研究開発で得たノウハウをパートナーや地域自治体とシェアし、コラボレーションを主にAIの導入が取り組まれています。コンタクトセンター、メンタルウェルネス向上支援、ヘルスケア、交通制御、高齢者支援、社会システム全体の向上化など、あらゆる分野でのAIの社会実装が推し進められています。

富士通

富士通は「FUJITSU Human Centric AI Zinrai(ジンライ)」という、企業がAIを導入するためのプラットフォームの提供を行なっています。このプラットフォームでは、AIの中枢となるビッグデータのディープラーニングや機械学習が用いられ、AIを業務に実装するサポートが行われます。そして、多くの企業や大学と共同研究も行い、AIのさらなる実装化を目指しています。

また、富士通では、1980年代からAI関連の研究開発が進められています。人工知能の開発は海外で行われることが多いなか、富士通は「日本語や日本の企業に強いAI」を開発することに力を入れています。よって、富士通のAIプラットフォームは複雑な日本語を理解することができる、日本の企業に特化した点が特徴となっています。

Toyota

トヨタ自動車は、カリフォリニア州シリコンバレーを拠点としたベンチャーキャピタル、「Toyota Ventures」を設立し、AI技術やロボティクスに特化するスタートアップ企業を資金面で援助しています。Toyota Venturesは、斬新なアイデアを持つスタートアップ企業に投資をすることにより、新しいAI技術をいち早く社会に広めることを目指しています。このように、自社で人工知能の開発を行うだけではなく、資金援助をすることにより社会全体におけるAIの導入・実装を進めようと取り組んでいるのです。

企業におけるAIの実装が必要不可欠に

生産年齢人口の減少が危ぶまれる日本では、従来人間が行っていた業務をAIで行うことにより業務の効率化をはかることが必要不可欠となってきます。つまり、これからの日本経済を発展させるためには、人工知能を企業で実装していくことが欠かせないといえるでしょう。そのためには、AIを実装するにあたって企業が直面する課題を解決していくことが重要となってくるはずです。