Groovenauts Japan (2021)

量子コンピュータとAIのプラットフォームにTableauを組み込んでデータを可視化


試行錯誤の質の向上

顧客とのシナジー創出

導入の背景

福岡発のテクノロジーカンパニーとして、量子コンピュータ×AIのクラウドプラットフォーム「MAGELLAN BLOCKS」を開発・提供しているグルーヴノーツ。このプラットフォームは、意思決定に必要なビッグデータの収集・統合から、AI による高精度な予測、さらには量子コンピュータの活用まで一気通貫で行うことができ、生産計画の高度化・自動化、物流における積載率・ルートの高効率化、シフト勤務の生産性向上など、多様な目的で活用されています。また最近では、これまで培った技術をもとに街にある課題を見える化するサービス「City as a Service」の開発も推進。社会課題の解決に寄与することを目指しています。

MAGELLAN BLOCKS は、高度な深層学習や量子コンピュータの専用モデルを標準搭載し、それらの処理プロセスをブロックの組み合わせで実現できるという特徴があります。「ブロックを使うように簡単に処理を定義できることで、お客様はシステム開発ではなく業務課題の解決に集中できるようになります」と語るのは、プロダクト本部長を務める山本 圭 氏です。例えば、量子コンピュータマシンを使う上で必要なイジングモデルも MAGELLAN BLOCKS が自動的に生成するため、業務で必要な情報を入力するだけで、量子コンピュータによる最適化の結果がすぐに使える業務表としてアウトプットされると説明します。

同時に、グルーヴノーツのコンサルタントが様々なデータを提示しながら、業務の本質的な課題を発見・解決できるよう、お客様と共に問題解決に取り組む体制も確立。ここで重要な役割を担うようになったのが、データ可視化ツールの存在でした。

「お客様の業務課題を洗い出し、共通認識を作り上げるには、初期段階からデータ分析・可視化を行うことは極めて重要です。また、データが大量にあっても、数字の羅列だけでは気づきを得られにくい。様々なビジュアル表現ができる Tableau を通じて、お客様の業務の暗黙知を引き出したり、弊社なりの仮説を提示して意見をすり合わせたりすることで、プロジェクトをより円滑に進めることができています」。

Tableau の導入・運用環境について

当初は MAGELLAN BLOCKS とは独立した形で活用されていた Tableauですが、2020 年夏頃には、組み込みに向けた具体的な検討に着手していたと山本氏は振り返ります。

その後、MAGELLAN BLOCKS の新機能として「ワークスペース」が開発され、ここに Tableau が組み込まれました。ワークスペースは、業務に必要な情報や操作系統を1つの画面に集約できるダッシュボード機能です。業務の運用・管理をシンプルに効率化し、実運用に必要なレポートデータが一目でわかるようになります。Tableau を通じたグラフ表示など、視覚的にわかりやすい形でのデータ可視化を、 MAGELLAN BLOCKS の中で行えるようになったのです。例えば、工場の生産管理業務として、製品の需要予測の実行から、予測値のグラフ表示、予測に基づく生産計画最適化の実行、計画表の表示など一連の流れを明確かつスムーズに行うことができます。

現在開発を進める City as a Service にもTableau が活用されています。多様な都市データを集めて都市が抱える課題を可視化する上で、Tableau の持つ表現力に大きな期待を寄せていると山本氏は語ります。

Tableau 選定の理由について

山本氏は Tableau を使う理由を次のように説明します。

優れた表現力とデータ操作

データ可視化の表現力に優れており、データ操作も簡単かつインタラクティブに行えます。そのため仮説立案などの試行錯誤が行いやすく、何が本当の課題なのか、その要因はどこにあるのかといった思考を、強力に支援できます。

組み込み機能の装備

用意されている API を利用することで、Tableau の各種機能をアプリケーションから簡単に呼び出せます。またマルチテナントで使うことができ、Tableau を組み込んだサービスを横展開しやすい点も、メリットの 1 つだと注目されています。

サポートや社員の熱意

サポート内容や営業担当者の熱意も高く評価。Tableau と共に取り組んでいくことで、シナジーが生まれる、という期待感も大きかったと言います。「きめ細かい支援を受けることで、組み込みの開発作業は実質的にわずか 1 週間程度で完了しています」。

データの可視化は以前からも行っていましたが、Tableau を組み込み効率的な業務運用が実現することで、お客様ともより活発な議論を進めることができています。経験値や感覚に頼って行われていた議論も、データという共通言語をもとに皆が同じ土俵で議論できるようになっています

Tableau の導入効果について

MAGELLAN BLOCKS に Tableau を組み込んだことで、次のような効果がもたらされています。

試行錯誤の質の向上

データの可視化は、量子コンピュータに用いる最適化の条件や AI に用いる予測因子を検討する際の業務分析、量子コンピュータ等による処理結果の検証時など、様々な場面で行われます。

データをもとにした試行錯誤が行いやすくなったことで、短時間で様々な仮説を立てて検証し、思考をより深掘りすることが可能になりました。このような試行錯誤の質の向上は、顧客の高い納得感にもつながっています。

顧客とのシナジー創出

初期分析で納得のいく仮説を提示することで、短期間で成果を得ることも容易になっています。AI や量子コンピュータを活用したプロジェクトにおいて、早くて 1 か月から 3 か月程度で初期の効果測定までこぎつけます。Tableau のダッシュボードは、顧客の暗黙知を顕在化するための共通言語としても役立っているのです。

今後の展開について

すでに MAGELLAN BLOCKS への組み込みで大きな効果をもたらしている Tableauですが、今後はCity as a Service への貢献も期待されています。

企業が保有するデータは断片的であり、極めて高精度の予測ができたとしても限界が生じてきます。それよりも、企業活動が織りなすストーリーとして社会の構造から自社を俯瞰し、関連する都市や特定のコミュニティといった社会にあるデータを活用して予測を行うことで、より客観的かつ的確に企業の課題を見える化できるのではないか。そう考え生まれたのが、City as a Serviceです

City as a Serviceへの具体的な取り組みとしては、2020年5月にJCBとクレジットカードの購買統計データ活用に関して提携。都市の状況を解析し、都市サービスの向上を支援する実証実験を開始しています。また、神戸市とは「STOP COVID-19 × #Technology」プロジェクトとして、ビッグデータから街の状況を可視化する実証実験を実施しています。

「本社のある福岡市でも、City as a Service に関する様々な取り組みを進めています。例えば、商業施設においてエリア分析や買いまわり分析などをもとに、顧客の購買習慣や施設全体の収益モデルを検証したり、効果的なテナントリーシングやキャンペーン企画の立案をサポートしたりしています。また、街のインフラ事業や離島の観光事業に関するご相談もいただいています。データをもとに試行錯誤を繰り返すことは、課題解決の大きなチカラになると確信しています。これからもTableau の表現力やデータ操作力を、積極的に活用していきたいと考えています」。