予測とは何か?

予測とは何かを理解するためには、何と対になるかを考える必要があります。ビジネスでは一般に、予測は確定値/過去値/実績値と対になります。

たとえば、2018 年 7 月 17 日朝の時点で 2018 年 7 月度の売上を考える場合、7 月 1 日から 7 月 16 日分まで (例、600 万円) が「確定した」「過去の」「実績」値となります。これに対して、7 月 17 日から 31 日分までが (例、750 万円) 「予測値」となります。ちなみに、確定値/過去値/実績値と予測値を合計した値 (例、600 + 750 = 1,350 万円) は、2018 年 7 月度売上「着地見通し」などと呼ばれます。

2 種類の予測

予測には大きく分けて、「近い予測」と「遠い予測」と 2 種類あります。

近い予測は、前項の「予測とは何か?」で説明した、直近の、「誰がどう考えてもこの当たりに落ち着くだろう」という現実的な見通しです。「今月の売上予測」などがこれに当たります。

では、来月 8 月の売上予測はどうでしょうか。まあまあ、予測が立つかもしれません。それなら、9 月は? 10 月は? ……と見ていくと、次第に現実性が薄れ、「そんなのやってみないとわかりません」と感じるかもしれません。

会社組織を離れてみても、気象庁の発する天気予報などは良い例です。「明日の天気」「1 ヶ月予報」「3 ヶ月予報」「長期予報」といったように、近い予測 (短期予測) と、遠い予測 (中長期予測) を意識して予報を行っています。

どのように行われるのか?

予測を行う際には、近い予測と遠い予測の違いは意識されます。現実的には、ほぼ別物と捉えて、下記のように予測活動は行われています。

  • 近い予測の場合

    売上の例に戻ります。

    2018 年 7 月 17 日朝の時点で、7 月 18 日から 31 日の売上予測を行う場合、まず予測に含まなければならないものは「受注済分」 (例、350 万円) でしょう (なお、ここでは単純に出荷によって売上が立つものとします)。 次に予測に含むべき要素は、受注には至っていないが引き合いが来ているものです。「引き合い済で未受注の分」 (例、240 万円) 。その次が、引き合いには至っていないが前月や前年同期の売上実績、傾向からして、おそらく引き合いが来るであろうである見込み分、「引き合い見込み分」 (例、160 万円) です。

    一般に、このようにして、売上予測であれば売上に至るプロセスをできるだけ細分化し、それらの要素値を合計したものが「近い予測」 (この例では 350 + 240 + 160 = 750 万円) となります。
  • 遠い予測の場合

    遠い予測は、近い予測と別の手法をとるのが一般的です。なぜなら、前項の例でいえば、たとえば 2018 年 9 月の売上を同じ手法で予測しようと思っても、予測すべき数字は「引き合いが来るかどうかもわかっていない」分が大多数を占めるでしょう。

    そこで、たとえば前年同期 2017 年 9 月度の売上実績 (例、1,660 万円) を基準に、昨年よりも今年は景況が若干よく、実際に 8 月度までの累計売上額が前年を 3.3% 上回っていることから、9 月度は 1,660 × 1.033 = 1,714 万円を予測としよう、といったものが遠い予測です。

    これがさらに「遠く」、たとえば 2020 年 9 月が対象になると、GDP や人口動態、市場調査会社のレポートやプレスリリースなど、マクロ値、統計処理、フェルミ推定といった、また別の予測手法も多用されます。

どのように予測は行われるのか?

これまでの部分で予測手法についても言及してきたので、前記に上げた予測の種別ごとに予測手法を表にまとめてみました。

予測の近さ/遠さ 予測手法 具体例
近い予測 ・要素を極力細かく分け、その要素ごとに積み上げを行い、合計する ・月中に行う、当月末の売上着地見通し
・上に加えて、昨年同月の売上に直近の景況を加味するなど ・月初に行う、当月末の売上予測
遠い予測 ・GDP
・人口動態
・市場調査会社のレポート
・統計処理
・フェルミ推定など
・来年 1 年間の売上
・5 年度の市場規模

上記以外にも特にビジネスでは、近年では高度な数理モデルを用いた予測なども普及しつつあります。

過去の売上などの実績 (3 年、5 年、10 年…) が企業に蓄積されていることを前提に、それらに数理モデルを適用して予測を行うものです。たとえば、自己回帰移動平均モデル (Autoregressive Moving Average Model: ARMA モデル) のように、夏場や気温の高い日はアイスクリームの売れ行きがいい、春秋に比べて夏冬はガスの消費量が多いなど、過去の値を統計的に処理して現在の未来の値を求めるという予測モデルです。これらの例に限らず、シンプルながら使い方によっては高い予測精度が得られることから、ビジネスで時系列分析を行う際の標準的な手法になりつつあります。

予測はどうして重要なのか?

ビジネスは競争であり、早いもの勝ちです。誰よりもいち早く先のことを把握できれば、それだけ競合他社に対し優位に立てます。

また、経営の健康状態を把握する意味でも重要です。すなわち、「今月の売上着地見通しはどれくらいなのか」は、経営層であれば当然知っておかなければなりません。株式会社なら究極的には株主への説明責任があります。株式会社でなくても、ビジネスは会社との約束ですから、自分が交わした約束がこれまでどれだけ守れていて (実績値)、これから先どれだけ守れそうなのか (予測値) を把握するのは当然のことでしょう。

どのように予測はビジネスに役に立つのか?

多くは「予測はどうして重要なのか?」の項に記した通りです。たとえば、もし予測を行った結果見通しがよくなければ経営判断として「対策」 (PDCA の A に当たる) をすぐに行わなくてはなりません。予測の結果に裏付けされた、ヒト/カネ/モノの何らかのリソースの配分の経営判断が重要になります。

その意味で、ビジネスは予測を下回っても、大きく上回っても好ましくありません。下振れ/上振れそれぞれに、なぜそうなったのかの要因分析とレポートは、どのような会社や組織でも常に求められることです。

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