株式会社ポニーキャニオン

作品収支の可視化・分析で営業・マーケティング施策を最適化


収益構造の変革を加速させるツールとして高まる Tableau への期待

導入の背景
収益構造を変革させるため、作品収支の可視化・分析が急務に

株式会社ポニーキャニオンは、音楽・アニメ・映像等のコンテンツの企画・制作・販売を事業の柱とする総合エンターテインメント企業です。創業以来、同社は数多のヒットコンテン

ツを世に送り出し、業界大手として半世紀以上の歴史を刻んできました。しかし、そうした実績にあぐらをかくことなく、同社は近年、事業構造の変革と DX を積極的に推し進めてきました。その背景について、経営本部 経営企画部の檀原由樹氏はこう説明します。

「弊社は長年、CD や DVD などのパッケージ販売で収益を上げてきました。しかし、この十数年で商材がデジタルへと急激にシフトし、今まで通りの感覚や既存の取引先との関係だけではビジネスが立ち行かなくなりました。そうした状況を受けて、弊社は 2016 年、従来のようにパッケージの動向を見るだけでなく、デジタルを含めた作品ごとの収支の透明性と即時性を高め、収益構造の変革を目指す中期経営計画を策定したのです」(檀原氏)作品収支の管理は、同社だけでなく業界全体における積年の課題だった、と経営本部長の吉田周作氏は指摘します。

「この業界には、利益ではなく、売上枚数や再生回数でビジネス状況を判断する“ 文化” があります。売れるアーティストが 1 人いればほかはどういう状況でもカバーできる、ミリオンヒットが出たなら絶対に儲かっているはず、という感覚で、作品ごとに精緻な収支管理をしなくてもなんとなくビジネスが回ってしまっていたわけです。しかし、作品収支を正しく把握できなければ、経営判断の大きなミスにつながりかねない時代となり、正確な情報をリアルタイムに把握・分析できるようになりたい、と強く思うようになりました」(吉田氏)

 

 

Tableau の導入・運用環境について
全社員分のアカウント付与を即決し、迅速に本格稼働を開始

そこで同社はまず、社内で開発し、20 年以上使い続けていた基幹システムを刷新。社内にバラバラに存在していたデータを集約すると同時に、データ入力の徹底を図りました。経営本部 システム部の細川祐樹氏はいいます。

「パッケージにせよデジタルにせよ、散在してはいるものの各種のデータは社内にちゃんとあるので、まずはそれらを 1 箇所に集めて整理しました。ただ、それにアクセスして活用できるのはスキルとやる気のある一部の社員に限られていて、皆が有効に使える環境を整える必要がありました」(細川氏)

そのためのツールとして導入したのが Tableau です。導入プロジェクトを推進した経営本部 経理部の斎藤瞬氏はこう話します。「業界には、売上等の情報の秘匿性を非常に気にするという保守的な面があります。それは社内でも同様で、誰もがデータにアクセスし、作品収支等を正確に把握できるようにすることに対して強い抵抗感がありました。それでも、『実績などのデータを全社員が見られるのは当然です』と提案したところ、執行役員の吉田が全社員分のアカウント付与を即座に意思決定してくれました。そのおかげで、スピーディに全社公開までこぎつけることができました」(斎藤氏)

Tableau を本格稼働させた同社はまず、全社の収支の可視化に着手しました。

「財務会計と管理会計が入り組み、ソースによって見られるデータに微妙な差異があるため、データの統一に苦労しましたが、なんとか満足のいくダッシュボードを作ることができました」(斎藤氏)

各種のデータは社内にちゃんとあるので、まずはそれらを 1 箇所に集めて整理しました。ただそれを活用できるのはスキルとやる気のある一部の社員に限られていて、皆が有効に使える環境を整える必要がありました。

Tableau 選定の理由について
視認性と操作性のよさ、コストパフォーマンスの高さが決め手

斎藤氏は、BI ツールの導入を考える中、セールスフォス・ジャパンからのメールで Tableau の存在を知って「ひと目惚れした」と語ります。

「視認性の高いデザインと感覚的な操作性のよさに惹かれました。コストパフォーマンスも他の BI ツールと比べて圧倒的に高く、想定していた予算内に十分収まっていたので悩む必要がありませんでした。」(斎藤氏)

「斎藤が吉田を含む経営陣に対して熱量のあるプレゼンを実施して、即採用となりました」(檀原氏)

プレゼンの際に受けた Tableau の印象について、吉田氏はこう話します。

「収支管理をもっと見やすく、なじみやすいものにしたいとまさに考えていた最中、斎藤のプレゼンがありました。実際に使ってみたところ、弊社のビジネスに実にうまくはまりそうだと感じ、本当にいいツールを見つけてきてくれたと思いました」(吉田氏)

 

作品収支ダッシュボード

視認性の高いデザインと感覚的な操作性のよさに惹かれました。コストパフォーマンスも他の BI ツールと比べて圧倒的に高く、想定していた予算内に十分収まっていたので悩む必要がありませんでした。

Tableau の導入効果について
作品収支の可視化、各種データ分析で打つべき施策が一目瞭然に

続いて取り組んだのが、長年の懸案だった作品ごとの収支の可視化です。これが実現されたことは、同社のビジネスにとって大きな前進だ、と吉田氏はいいます。

「たとえば同じ売上枚数でも、弊社の持つ権利が 100% の場合と 20% の場合とでは、当然、利益はまったく違うわけですが、意外と現場はそういうことをわかっていませんでした。Tableau でそれが可視化されたことにより、利益を上げるためになにに力を入れ、どんな収支計画を立てるべきかが現場にも一目瞭然になりました。

同じ労力で従来の 5 倍の利益を出せるようなポイントが見えてくる。そういう可能性をTableau に感じています」(吉田氏)

また、作品収支だけでなく、自社に関連するアーティストの SNS のフォロワー数等が可視化され、関連する各種データと連携させて分析できるようになりました。その有用性について、檀原氏はこう語ります。

「たとえば、『アーティストの YouTube チャンネル登録者数を増やすにはどのドライバーを動かすべきかを分析したい』という要望があるとします。以前は『コンテンツのアップ頻度で決まる』という定説に従い、盲目的にそれを実行するというケースも存在しました。ところが、Tableau で分析した結果、実は音楽や声優などのジャンルでは、全然相関していない事例もあることがわかったのです。従来、さまざまな部署や担当者によってバラバラに管理されていた各種データが 1 箇所に集まったことで可能となったそうした分析は、今後のビジネスで確実に活きてくると期待しています」(檀原氏)

従来、さまざまな部署や担当者によってバラバラに管理されていた各種データが 1 箇所に集まったことで可能となったそうした分析は、今後のビジネスで確実に活きてくると期待しています。

今後の展開について
収益構造の変革を加速させるツールとして高まる Tableau への期待

同社では月 1 回のペースでユーザー会を開催し、参加者の希望を聞きながらその場で Viewを作成したり、機能を説明したりして、人材育成と利用定着化を図っています。また、「よろず屋」という相談窓口を設け、Tableau に関する社員の要望を積極的に吸い上げています。

「そうした取り組みが一助となって、データ活用に対する社員の意識は確実に高まっています。システム部にも、『こういう数字を可視化して分析したいけど実装できる?』という要望が多く寄せられています」(細川氏)

「もともとデータ活用に対する意識の高かった社員たちが自発的に集まって、『Tableauを活用して、もっとおもしろいことや利益につながるようなことをしようよ』と活発に議論しています。そのように、データを活用しようという雰囲気が社内に醸成されたこと自体が、Tableau による最大の変化ではないでしょうか」(檀原氏)

そうした状況を受けて、斎藤氏は今後の展開について次のように話します。

「最優先で取り組むべきは、外部の学習環境などを利用して、パワーユーザーを増やすこと。それから、スキルを身につけてデータ活用した社員を評価してもらえるような制度を作ることです」(斎藤氏)

吉田氏も同様の見解を示し、こう締めくくりました。

「評価制度が整い、Tableau を使って『私はこれだけ利益を出しています』とアピールできるようになれば、データ活用がいっそう進み、いずれ会社の新たな“文化”として根づいていくと思います。昨年度、弊社はコロナ禍にあっても増益を達成し、デジタルシフトの成功例といわれることもありますが、Tableau はそれをさらに加速させるツールとなり得る、と確信しています」(吉田氏)

 

本部別収支ダッシュボード

評価制度が整い、Tableau を使って『私はこれだけ利益を出しています』とアピールできるようになれば、データ活用がいっそう進み、いずれ会社の新たな“文化”として根づいていくと思います。